十月三十一日、ハロウィン。
日本でのその日のもっぱらの過ごし方は大人も子供もお化けの仮装をして面白おかしく過ごす日である。
仮装をしたなまえがいつもより三割強の顰めっ面で俺を睨みつける。
頭に尖った角に尻尾と…悪魔か。とにかく凄い格好だな、それ。
「…とりっくおあとりぃと」
胸の上で腕を組み仁王立ちでやけくそ感満載にぶっきらぼうに言う。
「酷い発音」
「うっさい!英語の発音が悪くたって相手に伝わればいいのよッ」
俺の一言に「ムキィイイイ!」と地団駄を踏み、ぷんすかぷんすかしている。
「ほら、飴やるから喚くなよ」
なまえは無言で飴を受け取り、すぐ包みから出して口の中に放り込む。
「それでは悪魔さん。trick or treat」
俺が言うとこくんとなまえの喉が鳴る。飴丸呑みする程驚くか。
「え、あの、ちょちょ、ちょっとっ!」
「自分では言っといて、他人から言われると思ってなかったのか」
図星を突かれたと慌ててじりじりと後退りするなまえ。
俺がこんなイベントに積極的に参加しないと思ったんだろう。まあ、その通りなのだが、仮装したお前を見て気が変わった。
「う、それは……ってあんた仮装してないじゃない!」
仮装してない奴がトリックオアトリートって言っても無効よ!
「それはどうかな」
ハロウィンなんて楽しめればそれでいいイベントなんだから。
不機嫌な悪魔
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