幼馴染は転校生
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昔から変な子だとは思っていたが、まさかここまでとは思わなかった。「櫻木静(サクラギ セイ)です、よっしく!」
壇上で微笑むイケメン。160ちょっとぐらいと低めだが、微笑むその姿は爽やかなイケメンの名にふさわしい。ウルフカットが施された金髪を揺らし、カラコンらしい青目を細める。ちょっと崩した制服が、見事にマッチしていて、やっぱりどこから見てもイケメンだ。
「櫻木の席は、あー、桜井の 後ろだな」
「了解ー」
ざわめく教室の中を堂々と歩いて、僕の隣を通り過ぎる。
「これからセイって呼んでね、京ちゃん」
囁かれた言葉に驚いて、後ろを振り返ればにっこりと笑うイケメン。それが、親しい アイツの憎たらしい笑顔と重なって…。
「ちょ、おま…っ、し「前向こうか、桜井」…はい、すみません」
目が笑ってなかった…。
事情を聞こうと思って、転校生を連れてきたのは、人気のない空き教室。二人で入っ て鍵をかける。しっかり閉じられたことを確認して、転校生に向き直る。
「しずか……だよな」
「あったりー。さっすが京ちゃんっ、私の幼なじみだけあるねっ!」
イケメンがお姉言葉話して、しなを作るのは、なかなかに痛い。まぁ、彼は、男ではないから大丈夫か。櫻木静(サクラギ シズカ)。僕の幼なじみで、れっきとした女子だ。そんな彼女がなぜ 男子校などに転校してきたのか、理由はよく分かる。分かりたくないけど。
「ハァ…」
「ねぇねぇ、なんで来たかって聞かないの?」
「……聞くとろくなことにならない」
今まで散々な目にあってきた僕の勘が言っている。関わるなって。
「えー、そんなの変わんないから、聞いてよー」
変わんないのかよ、巻き込む気かよ。挨拶したときとは変わって綺麗なソプラノで言って笑う静。悪魔の微笑みにしか見えないな…。
「……何しに来たんだよ」
「幼なじみの桜井京介(サクライ キョウスケ)を、脇役平凡総受けにするためでっす」
幼なじみは、茶目っ気たっぷりに某アニメの歌手のポーズをしてみせる。というより、聞き捨てならないセリフが。
「平凡なのは、否定しないけど…なんで、僕がホモにならなきゃなんないんだよ!」
「私のために決まってるでしょ!」
堂々と理不尽な理由を宣言したヤツは、俗に言う腐女子だ。ホモを見るのが好きという謎の属性を持つ女性。残念なことを言ってるはずなのに、キリッとした表情が、女子の視線を集めるようなイケメンということが口惜しい。
「というわけで、よろしく」
光り輝くような笑顔で、しずか…改めセイが言った。
その笑顔を殴り倒したい。