ハロウィンプチシリーズ
10月31日。つまりハロウィンだ。異形のものに仮装し、菓子か悪戯かを要求するトリック・オア・トリートだ。
楽しいことが第一な私は今でもこのトリック・オア・トリートを素晴らしいものと見なしている。この日は対価無しに菓子を貰えるか、悪戯が出来るのだ。甘いものはあまり好まないが対価無しというものはいいものだ。
本来ハロウィンは子供が仮装するものである。そうではあるが、大人が仮装してはいけないという決まりはない。つまり私が仮装して菓子か悪戯かを問うてはいけない訳ではない。そして私はルールに縛られない海の男だ。船の進む道を決める航海士。イコール、ルールを決めるのは私だから菓子か悪戯か?ではなく両方要求してもよいことになる。
ハロウィン、素晴らしいじゃないか。
「それは極論というものじゃないのか、イド?」
「私に意見しないでくれたまえ、この低能が。大体君には関係ないではないか」
「なんだ、俺は端から標的になってないのか。害を被る前に、と思ったが杞憂だったようだな」
自分が的にされない、と解ったからかコルテスは相当な落ち着きっぷりだ。その油断はどこからやってきたのか。私が面白いものを前にして、それに手を伸ばさないはずがない。それを誰よりも解っているのは貴様ではないのか?
頭の中には菓子と悪戯の文字。目の前にはコルテス。何故巨乳美女ではなくてコルテスなのか。せっかくのハロウィンだというのに。溜息をつかざるをえない。
「よし、コルテス。トリックアンドトリートだ。」
「は?」
「聞こえなかったのか?トリックアンドトリート、菓子を持ってるはずもないだろうから代わりに最高の葡萄酒を。それからむかつくから殴らせろ、5発くらい」
ハロウィンは始まったばかりだ。ここでこの男にだけ構っていられるほど私も暇ではない。何せ今日は仮装した美女たちで溢れ返るのだから。
文句を言うコルテスを軽く殴って、その隙に彼の財布を奪う。色気の欠片もない折り畳みの財布を開き、中身を確認する。流石の節約家、相当溜め込んでいる。
「おい、待て!それは俺の金だろう!」
「君は溜め込むだけで使わないではないか。金は使うものだ。経済を回さねば破綻するだけ、それは君でも解るだろう?」
彼に必要と思われる分だけを机の上に取り出し、残りは懐に収める。ぎゃんぎゃん叫ぶコルテスを完全に無視して、私は船から降りる。もう一発殴っておけばよかっただろうか。
「私はこの素晴らしき一日を満喫してくる。帰るまでに上物の葡萄酒を調達しておいてくれたまえ」
対価無しが許される。もう一度言おう。なんと素晴らしいのだ、ハロウィン!
「さて、どこから回って行くものか…面白くなりそうだ」
童話編に続く
イドさんが横暴にも程がある
それからコルテス将軍に土下座したい