学ミラ
1日の唯一のオアシス、昼休み。校庭の隅にある樹の下でエレフ、オリオンの2人は午後の光に浸っていた。あまり動きたがらないエレフをオリオンが無理矢理に引っ張ってきたここは学園で彼が珍しく気に入っている場所である。
エレフが憂鬱気に首を起こすと校舎の方から1人こちらに向かってくるのが見えた。太陽光に輝く銀髪。それだけで誰かが分かった。
「あっ、いたいた。エレフ、オリオン、さっき調理実習だったの。オレンジタルト作ったんだけど食べる?」
エレフの双子の妹、ミーシャは小さな籠に入ったタルトを見せる。つやつやしたオレンジが食欲をそそる。
「美味そうだな、これ貰っていいの?」
「もちろんよ。エレフもいる?」
「ああ。ありがとう、ミーシャ」
「どういたしまして。あら、もう1時ね。2人共授業さぼったら駄目だよ。じゃあまた後でね」
上機嫌でミーシャは去っていく。その姿を2人は見つめていた。そしてエレフはオリオンの頬が緩むのを見逃さない。
「…で、オリオン。そのタルト食べる気か?」
「当たり前だろ。折角ミーシャに貰ったの…」
「ミーシャに貰ったものを食べるだと!?いい身分だな、オリオン」
ミーシャといたときに浮かんでいた笑顔はもう無かった。地獄の番犬でさえ竦むような殺気を放ちエレフは立ち上がり、オリオンを見下ろす。ただならない殺気に圧倒され後ろへ下がろうとするが、背後には幹。逃げられる筈もない。
「そんな理不尽な!!ちょ、エレフストップタンマタンマ!」
叫び終わると同時にオリオンの脳天に強い衝撃が走った。
「…俺って報われない可哀想な奴だな…。エレフもどんだけ強く殴ったんだよ」
オリオンが目を開けば時は黄昏。空は朱色に染まっていたのであった。