学ミラ



太陽が照りつけ始める朝8時。ここ、学園ミラもいつも通りの朝を迎えていた。校門付近に生徒会、風紀委員が立つ。両委員の仕事の1つ『挨拶運動』である。

 その中に一際目立つ人物がいた。茶色の髪に雷を思わせる一筋の金メッシュ。そしてその身に纏うは太陽光に眩しい純白の学ランである。更にその学ランには様々な装飾が施され、古代の軍事式典の正装にも見えた。その者こそがこの学園の生徒会長、レオンティウスである。

「会長、おはようございます」

「うん、おはよう。どうした?顔色があまりよくないぞ」

「実は今日は悪夢の100単語テストでして。昨日は徹夜なんです」

「それは大変だったな。テスト頑張れよ。きっと良い点が取れる」

「会長に言われると本当にそうなる気がしますよ。それではもう少し足掻いてみます」

学業優秀。加えて運動神経抜群であり他人への気遣いもある。当然周囲の評価も高い。ただ一部の生徒を除いて。

「今日もまた校門に居ますね。あの派手な格好をした馬鹿が」

「まあ仮にも生徒会長だからな」

「全くあんなのが生徒会長とは。人間的にはこの上なく馬鹿なんですが、頭は切れるのが厄介です。私のトラップに掛かっても5分もあれば抜け出しますし。やはり奴は難関ですね」

寮から登校して来たオルフはシリウス相手に話す。彼の眉間には皺がより、如何にも不機嫌そうである。

シリウスはこっそりと溜め息を付く。何せ彼の周りには『妹命のエレフセウス』、『単細胞のオリオン』、『意味不明の生徒会長レオンティウス』、『今まで類を見ない程腹黒いオルフェウス』…と個性が強すぎる生徒しかいない。しかも今隣にいるオルフは気をつけなければ何をするか分からない。

(俺の周り…というよりこの学園が変なのか?)

嫌悪の表情を隠そうともしないオルフを余所にシリウスは思う。そしてすぐに考えても無駄という結論にたどり着いた。大体この学園の名前自体が可笑しいのだ。

そうして歩いていれば当たり前だが校門へ辿り着く。シリウスはいつもこの時心臓の鼓動が早まるのであった。いつオルフがレオンティウスに仕掛けるか知れない。そのためシリウスはこの瞬間感覚が最大に研ぎ澄まされる。

「おはようございます」

目も合わせず感情の感じられない声でオルフは言った。その態度に会長が黙っている筈がない。

「こちらを向こうともしないんだね。上級生に対してその態度かい?オルフ君」

「私はあなたをただ邪魔な物としか見ていませんからね」

今にも火花が飛びそうな空気にシリウスはまた深く溜め息を付くしかない。流血沙汰にさえならなければ、と思い事件の集結を待つ。

「大体あなた生徒会長でしょう。無駄に派手なその服を何とかしたらどうですか。見ているこっちが痛いんですよ」

「これはこの学園の生徒会長の証のような物だ。こっちだって好きで着ている訳ではない」

「そうですか?私には上機嫌で着ているように見えますけどね」

だんだんと白熱して行く2人に生徒は足を止める。それもその筈で2人は校門の真正面で火花を散らしているのだ。

「邪魔だ。時間の無駄だからどこか他の場所でやれ」

怒りを含んだその言葉に2人は向き直る。そこに居たのは2人の生徒、不良の長エレフセウスと才色兼備のアルテミシアだった。

 「おはよう。レオン兄さん、オルフ、それにシリウス。みんな揃ってるのね」

 ミーシャはエレフと反対ににこやかに言う。

「エレフ、ミーシャ。おはよう」

「閣下にミーシャではないですか。おはようございます」

「朝からすいません。この2人を止めるのは少し無理でして。オルフ、閣下の邪魔でもあるし始業も近い。その辺にしておいたらどうだ」

宥めるようにシリウスは言う。軽くオルフは睨むが、そのままレオンティウスを残し立ち去ろうとする。事件終わったかのように思われた。だがまた別の嵐はやってくるものである。

「エレフ!ミーシャ!おっはよー!」

駆けてきたのはオリオンだった。その目には冷戦状態の空気など見えていない。

「こんな朝早くからミーシャになんのようだ?オリオン」

「え、エレフ、俺はミーシャを狙ってないって知ってるだろ?なんでそんなに機嫌悪いの」

「おや、ミカヅキモのオリオン。朝からなんと間の抜けた顔をしているんです」

「私の弟達にまた絡んでいるのか・・・2人に馬鹿が移ったらどうするんだい」

 「誰がお前の兄弟だ。それにお前にその台詞を言う資格はない」

「そうです。閣下、ちょうどいいのでこの単細胞と生徒会長、一気に片付けませんか?」

「名案だな。オルフは右から回れ。挟撃すれば崩すのは容易い」

始業15分前、後に校門の争いと呼ばれる戦いが始まってしまった。

「4人共朝から元気ね。私はどうすればいいのかしら」

 ミーシャの前には臨戦態勢の4人。それぞれ自らの武器を手にしている。

「弓がしなりはじけt…」

「相変わらずの馬鹿ですね」

「お前ら2人とにかくミーシャに近づくな!!」

「私はお前たちの兄じゃないか!!」

「誰が兄だ。俺は認めないぞ!!」

全生徒の前で輪ゴムや箒がぶつかり合う。その中を画鋲やチョークが飛び交うという何とも危険な状態である。

「ミーシャ、始業までそうたいして時間はない。4人は放っておいて教室へ行かないか?」

「…まぁそうね。じゃあ行きましょう」

2人は昇降口へ向かって歩く。あの4人の戦いは集結するのだろうか、とシリウスは憂う。彼に平穏無事な日々が訪れるわけもなかった。



















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