冷たい水を湛えた井戸の底。特にすることもないので僕は視線を上へ、上へと向けた。

 丸く切り取られた空に星が散りばめられている。手をどれだけ伸ばしても届かないあの世界には、童話とはまた違う物語が展開されているのだろう。だが、広い空の一部だけでは、あの星々が何を描いているのかは解らない。ただ、意味を忍ばせた星が瞬くだけだった。

 あの世界には一体どんな物語があるのだろうか。母に捨てられた少女の物語か、又は運命の相手を待ちながら眠る少女の物語か。いずれにせよ自分が干渉出来る世界ではない。そう分かっているから思いを馳せずにはいられないのだ。

 そこには僕が手を差し延べるべき復讐劇はないかもしれない。でも、たまには僕だってただ物語の傍観者になりたいのだ。

 「…世界を巡る翼が欲しいな」

 エリーザベト。いつか僕にも翼は生えるのかな?君は力強い翼を手に入れた。世界を見るための素晴らしい翼が僕には見えるよ。その羽を分けてください、なんて言わないけれど。やっぱり君がちょっと羨ましいんだよ。だって僕は欲張りだからね。

 「新しい命を貰ったっていうのに。神様、もし存在しているならもう1つだけお願いをさせてください」

 夜空を閉じ込めるように僕は目を閉じた。

 ここから飛び立つ翼を手に入れたら・・・

 まず1番に君と話がしたいな






TitleByAコース

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