形すらないんだけれども
「銀八の野郎と付き合ってんのか」
屋上で煙草を吹かしていると、そんなふうに後ろから呼ばれた。振り返るとここらでは知らない奴はいないであろう、有名な不良くんが立っていた。高杉とかいって、片目に眼帯に三日月形の笑みのコラボはかなり物騒に見える。
「アハハ、何をいいゆう」
「昨日のコト、バラしてもいいんだぜ」
「見ちょったのはおんしじゃったか」
「分かってたのかァ?」
「まぁの」
地面に煙草を落とし踏みつけながら答える。高杉は少しこちらに近付いて、じっとわしを見つめた。なんとなく目を放せない。
「バラされたくなかったらーゆうやつかのう?成績くらいなら変えられるけんど、今更じゃと思うろー」
「そんなんじゃねェよ。まぁ、最初のはあってるがな」
「なら何じゃ?しがない数学教師が出来ることにしちょくれ」
「何がしがないだよ、金持ちのくせに」
「なら金がか?」
高杉はふっと笑ったままこちらまで歩いてくる。かなりの至近距離まできたところで、サングラスを外された。視界が明るくなったかと思ったら、唇に柔らかい感触。キス、された。身長差があるためやりにくいらしく、胸ぐらを掴まれ、ぐいと引っ張られた。頭が少しおりた体勢になり、舌を絡めた深い口付けになる。面白かったのでこっちも絡めてやれば、高杉のほうが離れてしまった。
「どういうことかのぅ」
「俺のモンになれ。坂本」
「告白がか?脅迫がか?」
「どっちもだ」
自分よりいくつも歳の離れた子供、それも生徒にこんなことを言われる日がくるとは。人生捨てたもんじゃないかもと、自嘲気味に笑う。
「わしは別にええよ。そうにしても随分ともの好きじゃなあ」
「うるせー。つうか、そんなあっさりといいのかよ」
「抵抗でもしてほしかったがか?いやだ高杉くん意外とまぞ?」
「ぶっ殺すぞ」
不良らしい答えが返ってきたので更に笑うと、高杉に睨み付けられた。あーこわいこわい。
「あぁ、そうじゃ」
「なんだよ」
「おまん最初に銀八と付き合っちょるんじゃろって聞きよったのー」
「それが?」
「付き合ってもなんでもないぜよ。キスしちょったの見よっただけなら勘違いもするじゃろうけど」
「じゃあ…」
「銀八とは身体だけじゃよ」
わしが言い切ると高杉は黙り込んでしまった。やはりわしと銀八が付き合っていると思っていたようで。違うと分かって何か考えこんでいるようだった。
「高杉くんはどうしたいがじゃ。身体だけでもええけんど。付き合いたいゆうんなら、好きになっちゃるよ」
高杉の腰に手を回し、背中までをいやらしく指で辿る。すると高杉の腕が腰に絡んだ。
「言ったろ。俺のモンになれってよ…心ごと全部だ」
高杉の回答に口角が上がるのが分かった。
「愛しゆうよ、晋助」
これは銀八への挑戦状。
くだらない争いへの招待状。
せいぜい楽しめればそれでいいのだ。
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高→→→‖心の壁‖→辰→←銀です。あれ、高杉ふびんww
もう続かない。いろいろすみませんでした。