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その眼差しに射抜かれる/及川

女の子に人気があるのは自分でも自覚している。
優しい笑顔と甘い言葉で落ちない女の子はいないと思っていたけれど、どうやら俺の勘違いのようだ。
現に彼女は岩ちゃんや他のチームメイトを見るのと同じ目で俺を見る。それが堪らなくムカツク。

「やっほ〜今日もかわいいね」

「及川君はお世辞が上手だよね。そういうとこ、影山君も少し見習ったら?」

「…ウス」

トビオちゃんは嫌そうな返事をして俺を見た。短い返事の割りに瞳は正直で、試しに彼女に話しかければちらちらとこちらに視線を向ける。
なんてわかりやすい後輩だろう、でもお前の思い通りにはしてあげないよ。


………


「影山君おつかれ」

そんな決意をした矢先だからか、いつもの事なのになぜか気になった。誰にでも同じ目を向ける彼女の瞳が少し違って見えた。
トビオちゃんの赤くなった耳も、俺が聞いた事のない優しい声色も、気に入らない。

俺を好いてくれる女の子はたくさんいるし、彼女が特別かわいいわけでもない。
それなのにざわつく心も、二人を邪魔する言葉も出てこない口も、俺じゃないみたいで気持ちが悪い。

ふいに彼女と目があって、こちらに駆け寄ってきた。トビオは不服そうな顔で、反比例するように俺の頬は緩んだ。こんな気持ち、納得がいかないのに

「及川君」

彼女に名前を呼ばれる度にうるさくなる心臓は、つまりはそういう事で。事務的な用件を伝えて背を向ける彼女の腕を掴んで、その頬にキスをした。途端に真っ赤になる彼女をかわいいな、なんて思ってしまうんだからこの気持ちは確定。目を見開いたトビオちゃんも、頬を押さえて睨む彼女も嫌いじゃない。


「ねぇ、俺のものになりなよ。」

普段はひらりと躱される言葉も今日は違う。少しは俺の事を意識してくれたのかな?やっと同じスタート位置に立てた。少し出遅れたけれど、トビオちゃんには渡さない。最後に勝つのは俺だよ。


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