黒バス 短編 | ナノ


▼ See you

「私、海常には行けない。」

夕暮れの帰り道、繋いでいた手をほどいて君は言った


「そっか…頑張って、ね。」

夢を叶えるために俺と見る未来を拒んだ君。

真っ直ぐに見つめる君を見たら、俺はそういうしかなかった。


これから先の未来を2人で見れると思ってた。

喜びも怒りも悲しみさえもすぐに伝わる距離で

君と過ごしている中で時折見せる寂しそうな顔に気づいたあの日

いつかこんな日がくるかも、なんて思ったりもしたけれど

君の背中を押せるような言葉は声にならなかった。


「最後に、抱き締めていいっスか?」

「…うん。」

遠慮がちに身体を引き寄せると君は俺の背中に手を回してきつく抱き締めた。

首筋に顔をうずめると、君のくすぐったそうな声と俺の大好きな香りが鼻孔に広がる。


「っ…名前…」

大好きなのに、大切なのに

誰よりも傍にいたいのに

それは叶わない願い


抱き締めなければよかった。

君のぬくもりと同じくらい、いやそれ以上の悲しみが俺の心を揺さぶる


「元気でね、バスケ…応援してるから。」

「大会、見に来てくれる?」

身体を離して顔を見ると君は困ったように笑った。


「全国大会の決勝戦なら考えておこうかな。」

「それは厳しいっスね〜」

「…涼太ならできるよ、信じてる。」


あぁ、またそうやって君は、

戻る気なんかないくせに期待させる


「…絶対に勝つから、名前も夢、叶えてね。」

「…うん。」


これは優しくなるためのサヨナラ

俺だけの幸せを与えてくれた君

いつかまた会えるまで

夢を叶えて、

“俺の彼女”じゃない本当の君が見つかるまで

笑顔を忘れないで。


俺は君の笑顔が大好きだったから

いや、大好きだから。

いつか君の夢が叶って、その時に巡り会えたら

俺の大好きな最高の笑顔を見せて


さようなら、俺の名前。


いつか会える日まで…


End

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