「きゃーーー!!」




我が家に悲鳴が響いた。







そのすぐ後、玄関が開き「大丈夫かっ!?」

と、焦った様子で湊が家に入ってきた。
不法侵入だ、なんて言う暇もないほど焦っている私。


酷く危険だ。


「ふぇ、湊ーっ。」


だから何振り構わず助けを求める。
ぎゅ、っと湊に抱きつけば一瞬「へっ?」と
マヌケな声を上げた湊だが、すぐに大丈夫か、と心配してくれた。



「ま、真っ暗…、こわい…」



そう。何を隠そう、只今停電中なのだ。

大雨が降ってたので今日は大人しく家にいたのが間違いだった。



暗闇が苦手な私。
それに両親は仕事で不在となればそれはもうイジメとしか思えない。



ピシャッ…!


「きゃー!」


大きな雷が鳴ると、私はさらに湊を抱きしめている手を強くした。

もうやだ…っ。雷嫌い。暗いのはもっと嫌いだ。


「うぅ〜〜っ。湊ぉ…」

「究極の生殺し…っ」


ぼそっと湊が何か言ったけど正直今はそれどころじゃない。
この状況がたまらなく恐ろしい。

よりによって、なんで停電なんか…。


「ふっ…、ぅ。みな、と…。こわいっ」

「あー。うんうん、大丈夫だ。落ち着け」


とりあえず懐中電灯どこ?

やけに冷静な湊の声を聞いてようやく
この状態にも慣れてきた。


「…、わかんない」

「……はい?」

「懐中電灯なんて、使わないからどこにあるのか分かんない」


ずずっと鼻をすすって湊を見上げる。


「!ちょ、見んなばかっ」

そしてどういうわけか目隠しされた。
お陰でもっと真っ暗。

だから不安になって湊の腕をきゅっと握る。


というかほぼ抱きつく。


「…って!くっつくなっ。襲うぞコラ」

「だってぇ…。怖いもん」

「あーくそ。……(俺、男なんですけど)」


とりあえず、と湊の声がやけに近くで聞こえた。


「…んっ、」

「(やべ。ちゅーしちゃった)」

「ん、ちょっ…。ふぁっ…、や」

「(そしてどうやら止まれそうにありません)」


湿った感触が唇全体に広がる。
湊の大きな手のひらは私の目を隠したまんまなので
この唇にあたってるのが何かなんて分からない。

けども。


これって…、キス?


「…っ、…はぁ、何やったの湊!!」

「(やべーよ。俺キスしちゃった)」



手、どかしてよ!と湊の手を叩くと
意外と簡単に離れて行った。





「ね、もう一回していい?」


真っ暗闇の中、やけに大人びた湊の表情だけが
はっきりと見えた。



暗闇ミッドナイト


(目の前にいる)
(男の人は誰ですか?)

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