会いたいと言えば、抱きしめてくれる。
そんな君が大好きだ



昔から、どうやら女子には嫌われる性格らしい。
だから今もこうやって化粧のキツイ先輩方に呼び出しをくらっている。
何をされるかと分かっていながらも、それに従う私も私だろう。
けれども無視をすると余計と反感を買ってしまうのは目に見えている。
だから私は今日も――


「あんたさ、本当っ懲りないよね」


大丈夫。直ぐ終わる。唇を噛み締め顔を俯かせる。
私が憎いか。そうだろう。私もあんたらが憎いんだから。


「人の男とってそんなに楽しいわけ!?」


また、だよ。
こんなのもう慣れっこだ。見に覚えのないことを言われることにはもう、慣れた。


「知らない。私先輩の男なんて知りませんよ?」

「はぁ?!ここまで来てとぼけんなよッ!!!それとも。
 心当たりがありすぎて分かんないの?」


違う。そうじゃない。大体あんたの男が何を言ったのか知らないけど
そもそも他人に興味の無い私がわざわざ人の男取るかよ。
つまらない。こいつもこの世界も。理不尽な言いがかりを言われるために
私は生まれてきたんじゃない。違う。そうじゃない。
…なら、どうして私はいつもいつもこんなことばっかり。正直うんざりよ。


「ッ、ムカツクのよ!!人の男とって平気な顔してるあんたが!!!」


ばしん。頬にこうやって痛みがあるのはもう慣れた。私はどれだけ慣れればいいのだろう。
どれだけこの痛みに耐えればいいのだろう。いっそのこと、痛みさえ感じないほど壊してほしい。

――――殺してほしい。



終わった。今日はもう終わりだろう。
あの女は私を殴って気が済んだらしい。ぞろぞろと仲間を連れて帰っていった。
それでいい。殴って気が済むならいくらでも殴って構わない。

私はポケットからケータイを取り出してあの人にかける。

プルルル…

「…会いたい、よ」


電話の向こうは無言で切れた。はぁ、ため息は減らないなぁ。
しばらくぼーっと座っていると背後からふわりと暖かさを感じた。
あぁ、この温もりさえあればどんなに辛いことがあっても構わない。
この人さえ居れば私の人生はそれだけでいい。もう、これが最上級の幸せなんだ。


「無理すんなつったろ――ッ」

「ごめん。朔(さく)」

「バカ。謝るくらいなら心配かけんなッ」

「うん。朔、好き」

「………杏(きょう)。」


その声で、名前を呼ばれると心の底から涙が湧き上がってくる。
心臓が震える。どうしようもなく、君が愛しい。


「朔…っ、朔っ」

「大丈夫だ。俺はずっと杏の隣にいるから、だから泣くなよ」

「…っ、うん……朔っ」

「お前が傷ついた分、俺を傷つけてもいい。
 だからもう、これ以上泣かないでくれ。じゃないと俺は――」


"お前を壊したくなる。誰かに壊されるくらいなら、俺の手で"
その狂ったセリフさえにも愛情を感じてしまう。愛されている、そう思ってしまう。
だってそれでいいんだよ、私は朔になら、何をされたっていい。
大好きだから、愛しているから。朔が私を愛してくれるなら、私も朔を愛してあげる。



「――朔、私を殺して」



そうやってお互いを傷つけあう。
それはどこまでも愛し合っているから。

これが私たちの愛情表現。







(どこまでも)
(共に堕ちていきましょう)



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