もじもじ | ナノ

(ミスタがでしゃばる)


「うるせぇぞクソアマ!!」


そう言っていつものようにブチ切れたフーゴは更に私に罵倒を浴びせて、大股で部屋を出て行ってしまった。バタン!と大きな音を立てて扉を閉めて行くものだから、それに驚いたミスタが飛び起きてなんだなんだとつぶらな目を白黒させている。

「あぁ、ごめんなさいミスタ、いつものだから……」

扉を指さして肩を竦めてみると、ミスタはあぁ、と声を漏らした。
そう、いつものことだ。毎日、ではないが四日あれば一日はフーゴは私を怒鳴り散らしてどこかへ行ってしまう。放っておけば三時間後くらいには申し訳なさそうに俯き気味に私にさっきは悪かった、言い過ぎたと謝りに来るのだから、大したことはない(にしても最初のころは私もフーゴの言葉に一々頭を鐘突きで突かれたくらいの衝撃を受けていた)。どうせ今日もそのパターンだ。もう慣れたものだ。そして、

「でぇ?」
「何よミスタ」
「今日は何で怒鳴られてたワケ?」

ミスタは何に関しても首を突っ込みたがる。それこそ毎回の如く私がなぜフーゴにキレられたかを聞く。どこに居たってそれを聞きつけると、すっとんで私のとこに聞きに来る。とくにアドバイスをしてくれるわけでもなく、聞いてへぇ〜だとかほぉ〜だとか声をあげてニヤニヤとするだけだ。これがジョルノならばフーゴはきっとこう思ったんじゃあないですか?と私に対するフーゴの行動を分析解析してくれるのに。

「前は香水変えたことだっただろォ?そんでその前は髪バッサリ切ったことだったろォ?その前はァ……」
「なんであんたはそんなに覚えてんのよ」

指折り数えるミスタの指を掴んで数えるのを無理やり止める。

「そりゃあ面白れぇからな」
「何よ、あんた私がフーゴに怒鳴られるのがそんなに面白いわけ。お生憎、今回はあなたも巻き込まれたわよ、グイード・ミスタ?」

フン、と鼻を鳴らして言ってやるとミスタはニヤついた顔を歪ませ、ハァ!?と声を上げた。ざまぁみろ、だ。

「何でオレが巻き込まれる羽目になってんだよ!!」
「知らないわよ」

フーゴ曰く、最近私とミスタが仲のいいことが気になっていたらしい。それを先ほど言われたわけだ、まったく訳が分からない。当然私はそんなことないと言葉を返したがフーゴはまったく聞き入れず、だって僕のいないところでよく一緒にいるじゃあないですかと今にもキレ始めそうな声で私に返した。そりゃそうだろう。自分がいないところって、あなたがキレて出で行くのが原因で、ミスタはそれをからかいに来てるんだから。当然そんな言葉はフーゴをさらにキレさせるだけなので口に出しはしなかったが。

「フーゴってホントわけわかんない」
「それってよォ、所謂 ヤキモチ ってやつなんじゃねぇの?」
「…はぁ?誰に、必要ないじゃない」

私が眉間にしわを寄せてみるとミスタは小声でマジかよ…と呟いてため息を吐いた。

「あのな、フーゴはお前が好きなんだよ」

思わず目を白黒させたのは今度は私の番だった。

「…何それ、それマジで言ってんの?」
「マジマジ、大マジよ。お前が香水変えたのも髪切ったのも、あいつから見りゃ自分じゃねぇ男の趣味に変えてるように見えるんだよ」

言葉が出ないとはまさにこのことだ。香水を変えたのは単に今まで使っていたものを使い切ってしまっただし、髪を切ったといってもホンの5?ほどでヘアメンテナンスのためだ。
しかし、言われてみると確かにそう取ることも出来る。ミスタなんかに指摘されるだなんて正直癪ではあるが可能性として、いや、1度そう思うとそうだとしか思えなくなってきた。

「……そうなのかしら」

ひとりごちるとミスタはお前も大概鈍いよなぁと溜息と一緒に吐いてソファへどかりと倒れ込んだ。

「そんで?」
「え?」

想定外の展開にうまく思考が回らない。
それで、と続きを促すミスタへ目をやると、まるで少女漫画のラストシーンを捲るような期待に満ちた笑みを浮かべていた。

「…フーゴが何処に行ったか分かる?」
「数時間経てば戻ってくるんじゃねぇの?」
「今でなきゃダメなの!」

後ろでケケケと愉快そうに笑う声を聞きながら私は部屋を飛び出した。
今すぐあの癇癪玉を抱き締めてやりたかった。

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