吸ったって吐いたって酸素には変わらないのさ



「はっ」

失神して起きるパターン多すぎ問題。そんなホイホイ気絶落ち使っていいと思ってるんですか!とはいえ流石にボロボロな衣服と、身体は目が覚めた瞬間バキバキと嫌な音がした。痛みが走ってゴロゴロと悶絶しているとそれがさらに傷を痛めつける。辛い。私が起きたことに気がついたサラダが「ナマエ…ほんと、あんたって奴は…」となんともいえない微妙な表情でぐいっと何かを手渡してきた。それは血で真っ赤になったタオルで、反省しろということらしい。え?これ責められるの私なのか?屍澄真と絡んだことそのものを責められるのもぶっちゃけ理不尽では?てか枸橘君……。思い出すと、はあ〜っと大きなため息が溢れた。次いで辺りを見渡す。演習場の隣にある倉庫らしい。服はすでに乾いていて、それなりの時間が経ったのだろう。

「あんたたちって、ほんと、なんでそんなのばっかりなの……」
「あるぇ?私も?」
「当然」
「あいたた」
「じっとしてて」
「くそっ……あっ!お前!」
「あいつがあんたたちのこと教えてくれたのよ」

倉庫の入り口には…誰だっけ。「お前はあの時の!あの屍澄真ってやつの手下だったんだな!」とボルトが叫んで思い出す。ああ〜はち、はちなんとかさん。又の名をチンピラA。彼がサラダにここのことを伝えたらしいが、本人自身も全身ボロボロである。なるほど?ここにサラダが突然現れたのはそういうわけだったのか。危ねえ…普通に死んでるとこだったからほぼ命の恩人のようなものである。とはいえ雷門君の一件といい屑には間違いない。これが劇場版でいじめっこがやけに綺麗に見える現象。
ボルトの叫びに違うんだよお!といいたげに眉を下げてずずいっと詰め寄られ、事のあらましを聞くと、いかに屍澄真がやばいかが浮き彫りになってきた。とはいえお前もかっこいいからとかチャラチャラした理由で他里の生徒襲ってんじゃねぇ!

「すまねえ!知らなかったんだよ。屍澄真さんが本気で戦争なんかおっ始めるつもりだなんて」
「それ知らなかったで済むこと?」
「ほんまそれな」
「そんなこと今どうでもいいってばさ、とにかくかぐらを助けに行くのが先だ。…おい!あいつと屍澄真の間に何があったんだ?」

ボルトが詰め寄ると、ぼそぼそとした声で「か…かぐらは絶対に屍澄真さんに逆らえないんだよ。あいつ屍澄真さんを斬ったことがあって…」とアカデミー時のことを語り始める。

「かぐらは確かに最強の剣士なんだよ。屍澄真さんたちが束になったって勝てっこない。でも感情を自制できなかったトラウマがあって」
「なるほど。それで枸橘君はまんまと罠にハマったわけだ」

屍澄真は意図して枸橘君に傷をつけさせたのだろう。それは私と対峙した時の屍澄真の反応からして明らかだ。下手をしたら死んでいたかもしれないのによーやるわ。そしてリスクに見合うだけの枸橘君という力を手に入れたと。真意のほどは本人でもないのでわからないが…とりあえず頭痛くなってきたぞう!

「どうする?いや、一発屍澄真をぶん殴るのは確定なんだけども」
「ナマエがそこまで言うなんて、中々穏やかじゃないわね。とはいえ…まずは先生に報告しないと」
「いや。だめだ」

ここでシノ先生に報告すればすぐに片付くこと請け合いだ。里間の外交問題に発展するおまけ付きだが。しかしボルトはそれを言ってるんじゃなく、枸橘君の立場を考えてその発言をしたのだろう事は想像に難くない。なんか既視感あると思ったらこれ委員長の時のやつだ!知ってる私これからまた大怪我するんだよな!偉い人が言ってた!サラダもボルトの行動は止められないのをよく理解しているから、大きなため息を吐いた後で頷いた。ただし、自分もついてくという。ボロボロの私とボルト、チンピラA。仮にも忍刀七人衆を名乗る奴らと対峙するにはあまりに雑魚すぎる戦力に泣きそうだったのでありがたい話だ。

立ち上がったボルトは何やら意味深ににやりと笑って、拳を突き出した。

「これは戦争なんかじゃねえ。ただのオレたちの喧嘩だ」
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