へー。そうなの。なるほど。おれ帰る。



ホテルに着き消灯時間近くで外に向かう雷門君を見かけて「こんな時間にどこへ?」と聞くとなにやらコンピュータの部品を買いに行きたいらしい。昼間に不良も出たわけだし、霧隠れの里の治安にそこそこ不安を覚えていた私は誰かと一緒に行くことを勧めてみたが「へーきへーき!ボクだってアカデミーでちょっとは強くなったから!」といい笑顔で返されてなんだかとても嫌な予感がしましたとさ。

「なんで、なんで!どいつもこいつも問題を起こすんだっ!私はただ、楽しく修学旅行を…」
「お、落ち着いてナマエさん」
「そーだぜ。デンキがさらわれたとあっちゃ黙ってられるかってんだ」
「うっせーお前らが発端だろーが!」

まじでブチギレ3秒前。いやもうキレてる。明日の連絡をしなくてはいけないのに時間になっても中々ボルトが来ないから、部屋に確認にきたらこれだよ。ボルトたちの部屋の窓ガラスには赤い文字で何やら番地の指定がされていた。蜂谷釣糸という先刻イワベエに絡んだ不良が、ボルトたちを誘い出すため雷門君を攫ったのだという。雷門君くぅん!だから誰かと一緒に行けってあれほど。それに攫われたのがサラダとかチョウチョウとか委員長とか、女子じゃないところに切なさを感じるゾ…。でも私が不良でも雷門君を狙うから大正解です。
しかし、見回りに来た枸橘君にもバレたし、流石にここまで大事になってしまっては隠し通すのも無理があると思うのだが。シノ先生を呼ぶべきだろう。とにかく、この件は報告させてもらうからな、とずんずん出口に向かう私の襟を素早くイワベエが掴んだ。続けざまにシカダイの影縛りをかけられ捕獲される。その絶妙なコンビネーションは演習の時に発揮してもらいたいものである。にやにやした顔のボルトが「いいのかな〜?」なんて態とらしく口を開いた。

「ここで騒ぎが大きくなったら修学旅行が中止になっちまう。ナマエちゃんもそれは嫌だろ?な?」
「この私を脅す気かボルト」
「なぁ〜頼むってばさ、大事にならないようにうまくやるからさ」
「でもよ、デンキを攫った連中ってのはどんな奴らなんだ?」
「蜂谷釣糸たちは…あいつらはアカデミーでオレの同期だった下忍だ」
「下忍…あれで?嘘でしょ?」
「かぐらも力を貸してくれよ。オレたちの手でデンキを取り戻してえんだ」

枸橘君絶対頷くなよ〜という念を眼力で送ったのだが、何を血迷ったのか「わかった」などと宣いやがった。ダメだ、これは完全にボルトのペースだ、まずい…まずい…。正直さっきの連中だけなら大して強くないとは思うが、それでも人質を取られている以上迂闊な真似は控えるべきという私の意見は完全にスルーされたようだった。さてここで雷門君救出メンバーを紹介しよう。ボルト、ミツキ君、イワベエ、シカダイ、いのじんに枸橘君。いってらっしゃ〜い。

「さ、便利なナマエちゃんの索敵のお時間だぜ」
「やっぱこうなるんだよなぁ…」
「ボクが敵の数を見てきてもいいけど、そっちの方が早いし確実だからね」

…とはいかず、夜中の霧隠れの里へ久々に索敵係として駆り出されることになった私は、だるすぎて半端ないが瞳術を発動させた。大蛇丸さんに使いすぎるなよ、と言われたので控えめに、と言っても十メートルくらいなら別に大した問題ではない。視界を路地裏に切り替えて現場を確認してみると、縄で胴体と腕をぐるぐる巻きにされた雷門君が不良と何やら言い合っている様子が見えた。勇猛果敢に雷門君なりに奮闘しているご様子。かっこいいけどその前に夜中の外出そのものを控えて欲しかったわ。白眼の透視能力で不良の配置や人数は大方把握し終えたところで、流石に声まではわからないからここまでだとボルトたちに伝えると「よしよし、変なことも起きなさそうだし、正面突破でいいってばさ!」と先頭から張り切って路地裏に突っ込んでいく。ど真ん中ど直球なそのスタイルは嫌いじゃないぜ。ただし常識の範疇に収まる場合に限る。枸橘君はそんなボルトたちを困惑した目で見ていた。「ボルトはいつもこんな感じなの?」うん。
ボルトが「お前ら!デンキを返すってばさ!」と突入すると不良が一斉に私たちを見た。先ほどと同じように下卑た笑いが響く。その後もごちゃごちゃ何か言っていたが多分くだらないものしかなかったので割愛。蜂谷釣糸による紅霧結界術が発動し辺りには霧が立ち込めた。どうやら外部から視認されないようにするための忍術らしいが、こうなるとかなり近くまでいかないければ誰がどこにいるかもわからない。そして相手はこの霧の街で生活することに慣れた霧隠れの忍。なるほど、さすが忍者汚い。分断されて各々が戦い始めると中には視界の狭さに苦戦しているような声も聞こえたが、いや私に限っては平時の戦いと何も変わんないわ。背後から棒で殴りかかってきた不良の鳩尾に掌底を入れた。ところが紛いなりにも下忍ということなのか、反り返った背中を持ち直して追撃してくる。 避けて頭に踵落とししておいた。ワザマエ!流石に肉弾戦で負けたら立つ瀬がない。

「いいことを教えてやるよぉ。こいつはアカデミーで、同期を血の海に沈めたんだぜ」

倒した不良を適当に縛り上げていると突然そんな声が聞こえた。なんの話だ。蜂谷釣糸の方を見ると枸橘君は刀も抜かずに突っ立っていた。あ?

「刀を持つと人が変わっちまう」

どうやら枸橘君の話をしているのはわかったが、次のセリフで目が裏返った。「なんせ、四代目水影やぐらの孫だからなあ!」な、なんだって〜!?あの極悪非道の圧政者、四代目水影の孫が、枸橘君だって〜!?その言葉を聞いた枸橘君の顔は引きつって、頬からは汗が伝っている。あ、何、今大切な場面か。

「オレは…やぐらとは違う」
「ま、そうだな。人を切るのが怖くて刀が使えないなんて…てめえはただのボンクラだ!」

蜂谷釣糸の刀が枸橘君に振り下ろされた。同じ霧隠れの忍で見えていないわけでもあるまいに、微動だにしない。ただ肩で大きく呼吸を繰り返している。つい咄嗟に、さっきの不良が持っていた棒を投げたが自分のコントロールが悪いことをすっかり失念していた。投げた棒は蜂谷釣糸じゃなくて枸橘君に当たった。まじですまん。しかしそれで刀の軌道から枸橘君が逸れたから結果的に良かったということにしてほしい。
棒で頭打ってスッキリしたのかその後のボルトの呼びかけで鼓舞されたのかは知らないが、はっとして正気に戻った枸橘君は、腰に差していた刀を抜かないままで、鞘だけを横に凪いだ。「あ」瞬間ポロリする蜂谷釣糸。アーッ!何が悲しくて野郎のパンツ見なくちゃいけないんだよ。こうして視界テロをされたところで最後に「ギャーギャー喚くんじゃねえ!」とイワベエによって顔面をぶん殴られて蜂谷釣糸は気絶した。私は枸橘君に駆け寄って「頭にたんこぶできてるじゃないか!誰だこんな酷いことをしたのは!?」といの一番に声をかけた。霧が晴れて近寄ってきたみんなも「かぐら大丈夫か?」と心配する。ちょいちょい、と服を引っ張られた。お、なんだミツキ君。

「ナマエってさっき」
「しーっ、しーっ。ミツキ君、こういう時は友人を思って黙っているのが正解だゾ」

「へえ、そうなんだ」とミツキ君との友情を確認していると、戦っているうちに自力で縄抜けした雷門君が「みんな、ありがとう…!ごめんね」と謝っていた。いいってことよ…何せ私は自分で助けにくる気があんまなかったからな。
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