馬鹿が引くとかなんとかっていう



修学旅行序盤にして怪奇現象に襲われたが、なんとかみんなと合流することができた。サラダには「何してたの?」と言われてしまったものの適当にごまかした。あの少年が誰だったのかはもうどうでもいい。とりあえず私のいない間に誰も問題起こしてない?よし、みんな嘘ついてないね、信じるからな。ボルトに確認を取ると斜め上を見ながら「何もなかったぜ」と言ってくれたので私はほっと一息ついた。

「ナマエさんも迷わなかった?」
「へーきへーき。霧が出ても見えるから」
「白眼…木の葉の血継限界だね。すごいな」
「いやぁ〜それほどでも」

普通に褒められるのは慣れてないのでやめてくれ照れる。すると相変わらずポテチを貪っているチョウチョウが「はーい、ナマエさ、次の予定なんなの?」と手を挙げて質問してきた。私も聞いていない。案内を見ると向こうの人の指示に従えとだけ書いてあった。この予定表アバウトかよ。枸橘君はご存知で?と彼を見上げると「次は、君たちにあってもらいたい人がいるからついてきて」と言って私たちを先導してくれた。道中皆が買ったお土産の袋の中身を見せてもらうと、男子は水の国限定仕様のシノビバウトやよくわからん模造刀やら、女子はお揃いで何か買うとかなんか楽しくやっていたみたいだった。模造刀ってお前ら本物持ってるだろ。そして話は突然立ち込めた霧に移る。やっぱりみんな困惑していたようだ。

「途中霧が出てびっくりしたわよ」
「霧隠れの里は霧が多発する地帯にあるんだ。そのおかげで昔は他里から隠れることができて…でも今となっては少し不便だね」
「なるほどね〜」
「私もね、話してた少年が急に消えてビビったよ」
「え…?それは、ちょっとわからないな。幽霊の話なんて聞いたことないけど…」
「まじ?」

やっぱり彼は人間なのだろうか。そういう術があると言われても別に驚かないので、もしかしたら霧隠れの里の忍だったのかもしれない。逆にそうであってくれ。冷たい汗が私の背中に流れた頃、前方からぬっと姿を現した女の人が行く手を遮った。それはなんともグラマラスなボディで、つやつやとした白い手を口元にあてて「かわいいお客さんね」と笑みを浮かべている。「先代水影メイ様、第四次忍界大戦の終結に尽力なされたお方です」なーんだただの水影か。会わせたい人とはこのお方なのであろうか。いや、そうではないらしい。今度はメイ様を先頭にして薄暗い廊下を歩いて行くと突き当たったところに大きな扉が見えた。「連れてきたわよ〜」と呑気な声で押し開けた先にいたのは、つい最近ニュースでその顔を見た現霧隠れの里の長、長十郎様だった。なるほど、友好関係とはこういうことか。下世話な話だがうちのクラスにボルトやシカダイがいるのも関係してるんじゃないかな、多分。
長十郎様の「ようこそ」から始まった長々としたご高説にボルトは一番にあくびを漏らしていた。お、サラダに殴られた。
長十郎様の話す霧隠れの里の凄惨な歴史は、忍者を目指している者なら必ず一度は耳に入れたことがあるはずだ。血霧の里…くわばらくわばら。その時代に生まれなくて心底良かったと思う私である。いや…そもそもその時代だと私の父さんや母さんは結婚できなかったのだから、私ではない誰かが生まれるということか。うわあ戦争ってくそだわ…。

「君たちならボクたちの不幸な歴史なんて軽々と飛び越えて、新しい未来を描いていけると信じています。そして今回はたくさん遊んで、楽しんでいってください」

なんか陰気臭い感じ。いや、紛れもなく本心ではあるのだろうが、ここ最近で得た忍者のイメージ的には、そんなお綺麗事ばかりで成り立つとも思えないのだった。アカデミー生に言うことにまじになってもしゃーないが腑に落ちないといえば落ちない。委員長の事件は?うちはサスケが里へ帰ってこれないのは?たまに起きる過激派のクーデターや私の一族にしたって、腐る程問題は山積みだ。

「なんだかな」
「いくわよー」
「ほいほい」

日向のことは私には直接的には関係がない。ないはずである。親の問題は子の問題でもあるのか?なんだか最近の例を見ているとそんな気にもなってくる。私は呪印回避成功してるし、別にヒアシさん恨むとかそんなことは全然ないけどな。
待ちに待った豪華なホテルについたが、妙に靄がかった胸中は晴れなかった。ちくしょう、まさかこんなところでナイーブになるとは思わなかったゾ。一方でみんなは枸橘君についての話題で持ちきりだった。チョウチョウのお眼鏡にまで叶うとは中々やるな。ミツキ君の謎の情報網によると忍刀七人衆の筆頭候補であるらしい。雷門君はその知識量に素直に感嘆していた。

「詳しいね」
「音隠れにいた頃にちょっとね」
「忍刀七人衆って言ったら、7人揃えば一国を落とせるっていう、あの?」

枸橘君がものすごく強い忍であることはわかった。長十郎様からヒラメカレイの後継者に任命されている…なんだただの凄い奴か。霧隠れといえば昔から血継限界に排他的だったはず。そういう背景もあって刀術が栄えたと聞くが、その刀さばきを滞在中に一度は拝みたいものである。

「ナマエもああいうのには夢中になるんだね」
「は?」
「なんかぼーっとしてるじゃん。さっきから。何?それとも屋台でお腹でも壊したの?」
「いや…」

すぐ近くにターコイズ色の瞳があってはっとした。相変わらずなぜか目ざといいのじんに対する返答でまごついているとちょうどよく枸橘君が戻ってきて会話は中断される。ほんとなんでよくバレるんですかねぇ…。

「お待たせ。次は霧隠れのアカデミーに案内するよ」
「おーっと時間だ、行こう」
「あ、ちょっと」

これ幸いとばかりにいのじんを押しのけたわけだが、背後からものすごく深いため息が聞こえた。別に、過去となんの確執も持っていない人が羨ましくなんてない。ていうかそうじゃない人なんていないはず、だ。
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