きみへの不純も友情の日々も



次の日、学校に行くとシノ先生がハッピーボーイみたくなっていた。イミガワカラナイヨ。ミツキ君の歓迎会だというが、明らかにシノ先生のキャラに合っていない。無理をしている。いっそ痛々しいその姿にあちゃーと掌で目を覆ったが伝わることはなく、そのまま歓迎会はスタートした。正直授業潰れてラッキーとか思った。

「でも人形動かすのに蟲って。蟲って……」
「ぎゃー!取ってナマエ!」
「ほい」
「あちしのおやつにたかんないでよ!」

まさに阿鼻叫喚。最後のプレゼントにとシノ先生が用意したらしい動く人形の中身は、シノ先生の忍術である蟲たちだったのだ。布の中にぎっしりと埋め込まれていた蟲が宙を飛び回って、何だかんだそこそこ楽しかったはずのパーティは、一気に地獄と化した。泣き叫ぶ女子。吹き飛ぶ机や食べ物。しまいにはミツキ君の風遁によってあらゆるものが吹き飛んで、修理しかけの校舎が再び大きな損害を受けた。
私は蟲を払いながら、白眼を使って自分の体に降り注ぐ瓦礫やケーキなどを当たらないよう避けていった。洗濯物が増えるのはごめんだし、シミがついて母さんに怒られるのは私なのだ。しっかり落ち着いたのは一時間も経ってからで、生徒達からやれ無能だのキモいだの言われたシノ先生はすっかり落ち込んでしまっていた。私はみんなに対し、仮にも教師相手にお前ら勇気あるな、と思った。シノ先生がよく空回りしているのは事実だが、これほど生徒に親身になってくれる先生も中々いないだろうに。私はしゃがみこんで先生の肩を叩いた。元気出せよ、な。

「私は先生のこと嫌いじゃないですよ」
「ナマエだけいいカッコしようとかずるいぞ!」
「そうだってばさ!お前この間先生の髪型馬鹿にしてたくせに!」
「あれは髪型であって内面はイケメンだと思ってるから!いやまじで!先生!私はあいつらと違うんで勘違いしないでください!」
「この卑怯者ー!」

うるせえ。私はこんなことでアカデミー退学なんて真っ平御免だ。売れる媚は売っておくもの。人でなしとかいう言葉は聞こえないふりをしてシノ先生を慰めていると、いよいよ泣き出してしまった。慌てふためきながらも何とか冷静な委員長によって場が収められ、フラフラと覚束ない足取りでシノ先生は校舎に戻っていった。残された私たちはシラーっとした雰囲気のまま、これ、どうすんの?と散らばった会場を見渡したのだった。

「やっぱ後であやまりにいったほうがいいと思うぜ、めんどくせー」
「シノ先生は転校生の歓迎会をしようとしてくれただけだしね」

シカダイとサラダの言い分は最もで、当の本人がよくわかっていない顔をしていたが、私たちは仕方ないと頷きあった。
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