ずきずきずきずき



「ヤマト隊長!久しぶりだってばよ!」

七代目の呼びかけに振り返った男性はヤマトさんというらしい。荒野の真ん中にそびえ立つ大きな山の内部に目的地である大蛇丸のアジトとやらがあるらしく、そこの警備を担当しているのだという。隊長という呼称には首を傾げたが、七代目の所属していた班の隊長になったことがあるらしかった。なるほど、さぞかし優秀な忍者に違いない。

「話は先代からだいたい聞いてるよ。悪いがボクは任務でここを離れられない」
「大丈夫だ。案内はサスケに頼むからよ」
「すまないね」
「ついでにナマエの目のことも聞いてみるか」
「む」
「大蛇丸はそういうことに関しちゃ詳しいからなぁ。まあ何もなければ一番だってばよ」

大蛇丸といえば人体実験を繰り返すマッドサイエンティストという触れ込みだが、そんな人に目を診せて生きて帰れるのかが不安だ。しかし七代目は私の目の異変を聞くと大蛇丸に聞くのが一番だと太鼓判を押した。これ大したことなかったら恥ずかしいやつだわ。ともかく、一番の目的はサクラさんの攫われた先を知ることである。写輪眼を持つサラダは狙われる危険性があるということで七代目とうちはサスケと一緒にいる必要があるし、私たち二人で帰るのも危険だ。私たちはうちはサスケの案内で、大蛇丸のアジトへと足を踏み入れたのだった。

アジトの内部は薄暗く閑散としていた。ジメジメとした岩肌が丸見えで、所々に松明が飾られている。最新施設にしては時代錯誤も甚だしいが、アジトと言われれば納得の趣だ。サラダはいいとして私とチョウチョウの場違い感半端なくね?ザ・無関係で笑けてくるゾ。
迷路のような内部をうちはサスケは迷わず突き進んでいく。もうちょっと警戒しろとは七代目の意見。それに賛成だ!そういえば、自分無断外泊だ、とふと思い出した。成り行きや七代目がいるとはいえ、今頃家で父親や母親が血相を変えていないといいが。ヒアシさんの日向塾は正直どーでもいいわ。のちの修行がきついとかそんなんあるわけないない。
さらに進んだあたりで道は一本になった。そしてその奥から人影がやってくる。うちはサスケの反応から察するに知り合いのようだった。一人は水色がかった白髪の、もう一人は橙色の髪でガタイのいい、どちらも男である。「ちょっと、ここは子供とくるようなとこじゃないんだけど?」白髪の方が皮肉げに笑っている。

「ちょうどいいな、あいつのところへ案内しろ」
「はあ?命令しないでよね」
「オレが案内しようか」

もう一人の方は冷静な様子でうちはサスケに返答してくれた。しかし、その案内はすぐに必要なくなったのだった。もう一人の男…男?がぬっと暗闇から姿を現した。つり上がった目と青白い肌が不気味で…絶対これが大蛇丸だわ、なんか蛇っぽい見た目してるし…。チョウチョウのポテチを賭けてもいい。サラダとチョウチョウはなんだかイメージと違ったらしいが、名前の漢字を考えたらど直球すぎて凄いなと私は思う。七代目によると昔より若返っているらしいが深く突っ込んではいけないらしい。案の定、その男女が大蛇丸本人の様子で、大蛇丸に促され通路を案内されることになった。どうやら一連の犯人の心当たりがあり情報を提供してくれるという。ありがてぇ。なんだ、大蛇丸っていい奴じゃん!大蛇丸の研究室の中に入ると、中央に置かれた筒状の巨大な水槽の中には、人の形をした何かが入っていた。ふぁっ!?

「うちはシンは私のかつての実験体、懐かしいわね」

話をまとめるとこうだ。うちはシンは実験によって全身に複製写輪眼を埋め込まれた元、大蛇丸の実験体で、自分をうちはだと思い込んでる精神異常者である。紛い物のうちはの名に強く執着しているらしく、それでうちはサスケやサラダの目を狙っている可能性が高い。うちは一族復興したいです!お願いだから目をください!こういうことか。おっけー完璧に理解した。そして七代目に借りがあるとかどうとかで、うちはシンの居場所も教えてくれると。

「あの子は元気かしら?」
「ああ、うまくやってるみたいだぜ」
「そう、ならよかった」
「それで、もう一つ別のことなんだが…」
「何かしら」

七代目が振り返って目があった。手招きされて近づくとぽん、と頭に手を置かれる。

「こいつは名字ナマエ。親が日向で白眼が使えるんだが…どうも様子がおかしいみたいなんだってばよ。軽く診てやってくれねぇか?」
「構わないわよ。とはいえ時間もあまりないから、簡易的にだけど」
「とりあえず直ぐに危険がないかだけ頼む」
「ええ」
「変なことはしないでくれってばよ」
「私がそんなことをするように見える?」
「見えるから言ってんだろ…」
「あらあら。…少し席を外してもらえるかしら。人がいると気が散るわ」

七代目とうちはサスケは陰気臭いとばかりに目を細めていたが、結局サラダやチョウチョウを連れて部屋から出ていった。元極悪犯罪者と二人きりかあ。短い人生だったぜ…。指示されるがままに上を向いて目を見開く。ピカピカライトを当てられたら、何やら機械でぱしゃっと写真を撮られ、モニターに様々な数値が映し出される様子をぼけっと見つめていた。

「これは…チャクラの出し過ぎね」
「チャクラの出し過ぎとは…?」
「貴女、ひょっとしなくても元ど素人でしょ」
「まぁ…」
「ただポテンシャル自体はそこそこなくもない。だから今まで体を使ってこなかった分、白眼の使いすぎで身体が悲鳴を上げてるってとこかしらね。自分の白眼の出力を考えたことはある?」

そう言われて思い返せば、今まで数キロ先を見たり里の三分の一を覗いたりと酷使しまくってることに気がついた。チャクラを出せるは出せるが、体がついてきていない、という大蛇丸…いや、大蛇丸さんの見立ては思いの外すんなりと理解できた。なーる、そういや私チャクラコントロール下手だったわ。壁登りもチャクラの出し過ぎで弾いていたし。

「よく見ると充血してるわよ」
「まじでか。それじゃあ、私はもう白眼は使えないんですか?」

それは困る。何が困るってキャラ的に白眼使いの名字ナマエからただの名字ナマエになってしまうところとか。そも私の体術の修行は全て白眼ありきなので、それがなくなるとちょっと鍛えてるだけの一般人である。そうなると忍者とかはまじで無理。

「そんなことはないわ。成長期に入れば必然的にチャクラの膨大な放出にも耐えられるようになってくるでしょうし、それまででも使いすぎなければさほど問題にはならないはず」
「それはつまり」
「暫く、使うなら今の7割くらいのチャクラで使用すること」
「あの、そういう細かいコントロール無理なんすけど…」
「なら半分で」
「あいあいさ」
「ちなみに貴女に白眼の使い方を教えたのは誰かしら?」
「日向ヒアシさんです」
「あら…期待されてるのね」
「いやあれはただのくそじ…ではなく、期待というよりは他にいないからかと」
「そういえばナルト君のところの息子には、白眼が発現していないのだったわね」
「え?ボルト?」

大蛇丸さんはボルトのことをよく知っているらしい。まあ七代目と交流があるから当たり前…なのか?少し違和感を覚えるが、追求するほどではない。「貴女もなかなか興味深いわね」

「ひぇ」
「別に何もしないわよ」
「信用できるわけないやん…」
「まあそうね」
「でもありがとうございました…大蛇丸さん」
「ふふ。貴女はどうかしら。忍者を目指しているの?」
「まだ、未定です」
「ぜひ忍になることをお勧めするわ。これは単純に、貴女の白眼を見てみての感想だけれど。木の葉の里にとっては貴女は有益だと思うわよ」
「へ」
「ほんとはね、貴女の目破裂するか血涙を流してもおかしくなかったわよ」

ぴしりと背筋が固まって冷や汗が流れた。「嘘ですよね…?」そうであってほしい。

「さあ?」

おい!
どっちだかわからない不敵な笑みを浮かべて「さあ、ナルト君たちが待ってるわよ」と扉を開く大蛇丸さんの後を慌てて追いかけながら「いや、そこははっきりしてくださいよ、なあ、ふざけんな!」と背中をバシバシ叩く。命知らずとかもう関係ないし、ひょっとしたら失明してたかもってまじ…?え?この話ってこんなシリアス寄りなの?作風的にそういう展開はないかと…とごほっごほっ!急に喉がむせてしまった。これは陰謀だ。大蛇丸さんのいうことがどこまで本当かはわからないが、絶対これから白眼は半分の力で使おうと思います。てかヒアシさんは一切そんなこと言ってなかったぞ!あいつまさか…いや、そんなことはないと信じよう。一応師匠やしな。
第一、症状が現れたのはつい昨日で、疲労はつもりにつもっていたのかもしれないが、それでも気がつかなかったのは仕方がない。寧ろ自分の力を過大評価しすぎていた自身を省みるべきか。所詮私は一般家庭出身で、小さい頃から修行をしているサラダやチョウチョウたちとは同じ土俵でものを考えてはいけなかったのだ。これは自虐ではなくまじなやつな。無理は良くないわ。

「心配しなくてもたかだか数年の差なんてあっという間に追いつくわ。もしも、貴女が努力をやめなければね」
「…大蛇丸さんって犯罪者っすよね?」
「元よ、今はほら、木の葉の味方でしょう?それに今は子供が里にいるからね」
「ふぁ!?」

全てが吹っ飛ぶレベルの衝撃的な事実に白目を剥くかと思った。あ、元からほぼ白目だったわ。話の流れ的に大蛇丸さんの子供のことなんだろうが、え…産んだの?産んでもらったの?そこは聞いてはいけないような気がしたので口を噤んだが、正直な話、どっちでもやべえよ、とだけ言っておく。人類の神秘って、すっげー!
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