調子にのるなよ



大蛇丸さんの衝撃カミングアウトのあと放心しきっていた私は一切の警戒心も抱くことなく歩いていたのだが廊下の角を曲がると誰かにぶつかった。見上げると確か…水月さんとかいうあのうちはサスケの知り合いの白髪だった。ずいぶん焦っている様子で「どうしたのかしら」と大蛇丸さんが尋ねると水月さんは「いやあ〜あはは…あ」と私をちらっと見てから申し訳なさそうな表情で頬をかいていた。明らかに後ろめたさ100パーセントの仕草でありつまるところ一体何だよ。

「あー、その、さ」
「なんですか」
「この先に君の友達いるんだけど…サスケの娘のさ。ボクは悪くないから、よろしく」
「は?」

そのまま逃げるように立ち去っていく水月さんはまじで意味がわからなかった。捨て台詞のように「サスケがクズなだけだからー!」と言っていた。どういうことだよ。はあ?と腕を組んだ私に大蛇丸さんは「いかないの?」と聞く。いくとはどこへ?
これは単なる勘なのだが、嫌な予感をひしひしと感じる。例えば今まで信じていた母親と血が繋がってなくて父親がクズだったとかそんな感じの昼ドラ的な。冴え渡っているというかそのまんまだった。これが無限月読…?何にせよサラダに何かあったのは間違いないだろう。心配しているふりをしておいて今こそチョウチョウが空気を読まないのを期待する私がいた。そういやあいつらどこ行ったんだ。部屋の前で待っているようにと言われたはずなのだが誰一人守っちゃいねえ。それから一ミリも気は進まなかったが、結局私は大蛇丸さんに断ってサラダのいるという方向へ歩いていくことにした。というか大蛇丸さんにサラダを読んでくるように言われた。お、もしかして大蛇丸さんは忍者なのに空気が読めるのか?嘘だろおい。しかし今はまだその時ではなかったと思うゾ。明かりが漏れている部屋が少し先に見えた。多分あそこだろう。私が部屋を覗き込むより前に中から「私を騙してた人たちのことなんか知らない!なんでママでもない人のことを助けなくちゃいけないの!?」とサラダの金切り声が響いてきた。扉のすぐ近くに七代目がいて、咄嗟に扉の影に隠れる。
サラダは泣いていた。目が、赤い。写輪眼だ。
サラダの泣いてるところなど初めて見た気がするが、いかんせんこんな気まずい雰囲気の中に放り投げられた私は顔を覆って俯いた。嘘だと言ってくれバーニー。

「ボルトにもよく言って聞かせている。火影ってのは里のすべての人が家族みてえなもんだってな」
「それがなんですか!?ただの方便でしょう!?」

「パパは娘の顔も覚えてなかった…。信じてたママは私と血が繋がってなかった…。私には本当の家族なんていないんだって、よくわかりました」
なんだって?うちはサスケが他の女と乳繰り合って生まれたのがサラダだって?サクラさんとサラダはよく似ているので俄かには信じがたいが、話を聞く限り遺伝子照合とやらを試した結果、サラダはサクラさんの娘ではなかったという。だから、水月さんはあんな顔をしていたわけだ。現代科学で証明されちゃどうしようもない。その遺伝子照合とやらの精度は知らないが、私を数分で診察したあの様子を見る限りではやばいに違いないだろう。つまりどうあがいてもうちはサスケがクズ野郎、把握したぜ。とはいえサクラさんを悪くいうのはそれはそれで違う気もするのだが、七代目も思いがどーたらとか気持ちを大切にしろとかサラダに言っている。せやな。いい話すぎて泣いた。私も実は養子だったとかわかっても家族は大事にするわ…。両親とのそっくり具合から見て絶対ないがな!
しかし、七代目カウンセラーの手腕によって私の出る幕はなさそうだと思った。人を慰めるとかそういうのはマジ勘弁なタイプなので、それならそれでありがたく道を引き返せるというものだ。見つかるのも嫌で、私は抜き足差し足、その場を去ることにした。

外に続く扉にたどり着くとなぜか七代目もサラダも先にいた。あっれれ〜おっかしいな〜?私の方が先に出口に向かったはずなんだけど〜?感知能力を使わないとここまでポンコツになるのか、体の震えが止まらないぜ。ともあれ全員が揃ったことでうちはサスケが「さて、場所はわかった。オレが連れて行こう」と言った。私がアジトの中で一人かくれんぼをしていたことは皆にバレてないらしい。ん"ん"?この感じ本拠地には私やチョウチョウやサラダもついて行くのだろうか?木の葉の忍者もいることだしここで待っていた方がよくね?ところが二人はサクラさんを助け出すために乗り込む気満々の様子であった。特にサラダは決意が固いらしく、両拳を握りしめている。あかん…これ言い出せないパターンのやつや…。うちはサスケの呼び出した落ち武者のような形をした何かに包まれる。紫の炎は手で触れても熱さを一切感じず、寧ろ守られているような感覚さえ覚えた。

「すでにシンに殺されているかもしれないわね」
「オレの妻はそんなにヤワじゃない」

クズ野郎が何か言ってる…。真実を知ってしまっただけにドン引いている私の横で、唯一何も知らないチョウチョウだけが、「かっこいい…」とポテチの袋を握りしめていた。
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