あたまの悪い犬が2ひき



「苦手なのよね、こういう重苦しい雰囲気」
「それな〜わかるわ〜」

サラダが膝を抱えて蹲っている様子を、岩陰から私とチョウチョウは覗いていた。そこへやってきた七代目が励ますようにサラダの肩を叩くが効果はなく、完全に不貞腐れている。
私たちは七代目とともに、うちはサスケの待つという古風な塔までやってきた。そこでまあ色々あって、なんと、うちはサスケはサラダに対して刃を向けたのだ。敵と誤解したとはいえ娘に刀負けるとかまじなんなん…。おまけにその後サラダが取り出した写真には、見知らぬ眼鏡の女とうちはサスケが隣り合わせで写っていたのだ。なーる、それでサラダはうちはサスケに会いに行くなんていったわけだ。
サラダが持っていたうちはサスケの写真はまあ、たしかに、何も知らないならそう考えても仕方がないくらいには、疑わしい要素が詰まっていたのも事実だ。もし何でもないのならうちはサスケも別に隠す必要なくね?と思うのは私がお気楽な思考の持ち主だからだろうか。膝に肘を立て頬杖をつき、てかそろそろ帰りたいわー、なんて考えているとチョウチョウが隣で立ち上がる。見上げて私がどうしたのかと尋ねると、チョウチョウが大量のポテチの中からコンソメ味を取り出し「しゃーない、ここはあちしらが一肌脱ぐしかないわね」と塔の方に歩きだす。慌ててその後を追いながら私は「いやいやー、やめておいた方が」と止めるよう説得したものの、「いいから」と一刀両断されてしまった。

「ナマエだって、なんかムカつくっしょ。そりゃ言えないことはあるかもしんないけどさー、もっと言い方があるってもんよ」
「チョウチョウがここにきてすごく真面目に見える」
「できる女は、場をわきまえて動くもん」
「……。うん、それで、どうやって説得するつもり?」
「ポテチ」
「参考までに。どうしてそうなった」
「美味しいもの食べて機嫌が悪くなるわけないっしょ」
「場をわきまえろ!」

十年以上会っていない娘を殺しかけて気まずくなったパッパとポテチ食べて仲直りする話なんか聞いたことねえよ。ぱん、とポテチを掃き落としたら「何すんのよ!」と言われたがこっちの台詞である。初対面の人間にそんなことできるなんてチョウチョウは度胸がある。それでさらにこじれたらどうするつもりだ。

「こういうの、気持ちが大事でしょ」
「うん…そうだった、チョウチョウのコミュニケーションは食だったね……私が悪かったごめん」
「なんか腹立つな」

まあまあまあ。とりあえず、チョウチョウの意見が正しいことも認めよう。けれどサラダはずっと父さんの影を気にしながら過ごしてきた。ようやく会えたその父さんに刃を向けられたショックは計り知れない。だからこそ、ここで余計な手を出してさらにサラダのハートがブロークンしたらあれだなという、私なりの気遣いも汲み取って欲しい。決してサスケさんにビビってるわけではない、いいね?
ぐいぐい押されるがままに塔の前まで戻ってきてしまった。こうなったら腹をくくるしかない。しゃらくせー、待ってろうちは。ラップ勝負なら負けねー。
塔の中は未だ薄暗い。

「あのー…」
「なんだ」

うちはサスケはいまだに一人で突っ立っていた。影になった顔と鋭い眼光に、目があった私はチョウチョウの後ろに隠れた。自分の身が可愛いので彼女を捧げておく。

「まあまあ、これあげるから仲直りしてきなって」
「それは」
「いやーやっぱチョウチョウそれは無理が…」

私がチョウチョウを制止しようと手を伸ばした時。背後からものすごい轟音が響き渡り砂埃が塔の中まで侵入してきた。なんだ?敵襲かな?白眼を使って確認しようとしたところ眼球の奥に激痛が走って這い蹲る。なんや、どうしたんや。あいだだだだ。「ナマエ??」とチョウチョウが顔を覗き込んでいるが、うちはサスケは「ここにいろ」とだけいって一瞬のうちに見えなくなってしまった。やはり敵襲か。十中八九、さっきのおかしな連中に違いない。できればそのまま近くで守って欲しかったな…。カキンとかズバッとか物騒な音が聞こえるが、そんなことより自分のことで精一杯である。白眼に異常があったことなどなかったので、対処の仕方もわからずとりあえずチョウチョウの肩を借りながら塔の入り口まで歩いていく。肉眼で直接確認すると、やはりあの連中がいた。よく考えたら今ここに木の葉最強の忍がいるわけだよな?これは勝ったわ。ていうか負けたら私たちどころか里が終わるので頑張ってください。暫くすると眼球の痛みも引いていく。さっきは霞む程度だったのが症状が進むの早すぎとかそんなことは置いておいて、「あちしのパパもあんくらい眼力強ければ…きゅん」とか言っているチョウチョウの肩を叩く。

「私の目どう?」
「いつも通り白目全開だから安心しな。あんたって瞳孔ないわよね〜」
「うっ」

人が割と気にしていることを。そんな呑気な会話を交わしつつ、その間もうちはサスケと謎の敵との戦いは続いていた。武器を操るという敵の眼力によって、不意をつかれたうちはサスケの体にたくさんの刃が突き刺さる。

「パパ!」
「平和は人としての進化を止める。まさに今のお前らだ」

「貴様らの写輪眼はいただいていく」
どうやら、敵の狙いは写輪眼らしい。腕にボコボコと目が付いていて気持ち悪い。

「進化なき種はいずれ滅ぶ」

進化なきとか言っちゃったよこの人。それでも、変なことを言っていても敵は敵である。刃が突き刺さったことで体の反応が一瞬遅れてしまったうちはサスケに対して、敵は逃すわけもないとばかりに間合いを詰め一気に仕留めにかかってきた。私個人の視力では到底捉えられない素早さであり、瞬きのうちに敵の刀がうちはサスケの肉体を切りさいた…かに思えた。いつのまにか敵の側にいたピンク色の髪。え。「しゃーなんなろぉがぁあ!」吹っ飛ばされたのは敵の方だった。ぐにゃりと曲がった肉体は地面に叩きつけられて、体から血を出して完全に伸びてしまっている。出来上がった小さなクレーターは、その拳の威力を如実に表していた。

「えー…」

ふん、と拳と鼻を鳴らしたのは、サラダの母親であるサクラさんだった。なぜここに。うちの旦那様と愛娘に何すんだっておま怖。先日サクラさんが家を拳で壊したとか風の噂で聞いたが、これを見る限りマジらしい。流石は三忍綱手様の弟子である。七代目の出番とかいらんかった。近くで見ていたサラダは私たち以上に呆然としていて、完全に畏怖の眼差しである。お前のかーちゃんやぞ。七代目は七代目で腹に刺さった刀を見てもう直ぐ治るわーとか言っちゃってるし、やっぱ私忍者向いてないのかな…。再生能力とか岩を砕くとかできないし…。あいや、岩はいけるのかもしかして…。あれ?私も意外に人外…?私が自分の力量を測りかねている間に事は進んでいた。そういえば見当たらなかったクソマスコットうちはくんが、サラダの足元でじっとしているのを見つけたサクラさんが咄嗟にサラダを庇ったのだ。そしてまたあの視界がぐにゃりと揺れるような術で、敵の体とサクラさんが吸い込まれていく。

後には何も残らなかった。






「カカシ先生も言っていたんだが、今回の敵は大蛇丸の関係者の可能性がある」
「…って、誰?」

伝説の三忍の一人だバーロー。私たちはどうやら、その大蛇丸に会いにいくことになるらしい。あー帰りてええええ。
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