ここが痛いのわかるかな



「八卦空掌!」

いや〜、乱世乱世。二人に飛んでくる鎖鎌を弾き返すと、すぐに状況を理解したサラダが苦無を投げた。それをかわした襲撃者の少年が、無表情のままで追撃をしようとする。その背後から部分倍化をしたチョウチョウが殴りかかったが、ひらりと軽やかな動きで避けられてしまった。距離をとって苦無を持ち、体を低く構えたサラダが少年の目を見て狼狽えたように叫んだ。
私たちは弁当を七代目に届けるために、道なりに走っていた。そこはかとなく嫌な予感を感じつつも見ないふりをしていたのだが、緊急事態、突然現れて襲いかかってきたその少年を観察する。赤い瞳、写輪眼に、ほとんど真っ白な風貌。先ほどの動きはある程度洗練されており、訓練された者に違いない。このご時世に?やだー。戦い方的に一番前が私なのは仕方ないとしても、凄く、嫌な気持ちです…。結論から言うと、私の相変わらず嫌な方向ばかり当たる勘が見事に冴え渡ってしまう形となった。あらかじめ予見していただけに心の準備だけはできていて、比較的冷静に対処できたのは行幸だ。先日の壁登り特訓の成果が効いたらしい。お互いに警戒を保ちながら、力を入れている足がじり、地面を擦る。
不可解なのは、この少年が本当に「突然」現れたことだった。私は七代目の捜索のため比較的広範囲に索敵を広げていたのだが、まるで空間の真ん中に飛び込んできたかのように、いきなり視界に少年は現れたのだ。白眼の抜け道があるなんて知らなかったヒアシふざけんなまじ許さん。とりあえず見ときゃいいだろ、みたいな適当戦法でいいはずではなかったのか。

「その眼…あなた誰?」
「うちはシン」
「は〜?」

思わずため息交じりの反応を返してしまったが、写輪眼だけならまだしも、その姓には流石にびっくりした。うちは一族がほぼ全滅しているのは有名な話。いやでも写輪眼が開眼しているのなら、信じようと信じまいと、そういうことには違いないのか。ええ…、実はうちはサスケの隠し子とかいう衝撃展開か?まさかの兄弟再会とか何そのドキュメンタリー。いやごめん、現実逃避だ許して。うちはシン、と名乗った少年はサラダを見据えた。なんだかよくわからないレベルマックスだが狙いはサラダか。少年が巻物から口寄せした武器を大きく薙いだ。柔拳の構えのまま私は半歩ほど下がって、今度は踏みしめた足を蹴り上げる。チャクラを放出した衝撃波で、武器が威力を失って相手方に戻っていく。意外にいけるゾ!さんきゅーヒアシ師匠!

「お前をさらう」
「あちしをさらって何しようっての!?」
「おっと、チョウチョウはちょっと空気読もう」

私ですら比較的かっこよく術を放ったというのにおま。おまけに誰一人笑ってないよ大スベりだよどうしてくれんのこの空気…。ほら少年もなんか心なしかイラっとした表情をしている気がする。気を取り直して続き、どうぞ。 ただ、うちのサラダと話したいなら事務所通してくれないと困りますよお。周囲に他の仲間はいないか確認してはみたものの、また突然現れてしまったら対処はできない。狙いが「サラダ」なのか、「うちは」なのかはわからないが、これは非常にまずい。何がまずいって、相手絶対殺しにきてるぜこれ。ほらなんか武器ギュインギュイン言わせてるよ〜。おまけに二回も邪魔をした私やチョウチョウは、完全に排除の対象だと認識されたようだった。私は写輪眼対策として、眼を見ないよう少年のチャクラの経路だけに集中することにした。アイヤー、もう一度振るわれた鎖が今度は少年の向いている方角とは反対側にいたチョウチョウを捉えた。不意を突かれて弾き飛ばされたチョウチョウの体が地面に叩きつけられる。白眼で動きが読めても、流石に瞬間移動はできない。その動けないところに、少年が飛びかかっていく。

「お前ら、いらない」

「まず、お前」と鎖の先についた巨大な手裏剣を振りかぶる少年。ちょ、チョウチョウー!動けるデブじゃなかったのか!?チョウチョウの目が焦りで見開かれた、その時だった。

「子供のケンカにしちゃあ、ちっとやりすぎだな」
羽織がはためいて、黄色い頭が視界の端を横切っていった。

「うちの里の子供たちは、しつけはいい方だと思うんだけどよ」


目にも留まらぬ速さで七代目が爽快と現れ、あのチョウチョウをまるで重さなどないかのように担いで、助けだす。少年の攻撃など容易く防ぎ、瞬きのうちに私たちの隣まで戻ってくる。私の右側に、ぽかんとした表情のチョウチョウが地面にへたり込んでいた。圧倒的目にも留まらぬ救出劇、私でなきゃ見逃しちゃうね…。なんとか視界に収めることのできたその一連の流れに、私は自然とスタンディングオベーションをしていた。ぶらぼー。こんなん惚れるわ。七代目火影、と書かれた文字、隣に現れた七代目にサラダは目を見開いて驚いている。私も驚いた。チョウチョウも…と思ったら「このあちしを軽々と…」と、あっ…、頭をやられている…。
三度邪魔をされ、その相手が現最強の忍者七代目であることを視認した少年が、怒りからか大きく表情を歪ませた。
そして、その瞳の中の文様が崩れたかと思うと、奇妙な形に変わっていく。少年の体に流れる多くのチャクラが写輪眼に集中していくのがわかった。

「万華鏡写輪眼まで…」

七代目がそう呟くと同時に、周囲から少年の口寄せしたと思われる武器の数々が、まるで何かに操られているかのようにそれぞれが一斉に七代目に向かっていく。操るといえば砂隠れに傀儡と呼ばれる技術があるが、それとはまた違う。チャクラ糸は見えず、むしろもっと太い管のようなものが少年と武器とをつなげている。「武器の遠隔操作…それがお前の力か」と仁王立ちした七代目が言う。何それかっこいいな。
七代目の体を炎が包み込んでいく。不思議と熱くはない。これが噂の尾獣化か、九尾と呼ばれる化け物を身に宿す人中力の技。羽織が生き物のように光を纏いながら九つに分かれ、蝿でも払うかのような仕草でもって、全ての武器が叩き落される。まさに人外としか言いようのないその戦いっぷりに言葉も出ない。忍者っていうかこれはもうなんなんだ。てかさ〜もっと忍ぼうぜ〜。

「すげぇ…七代目がめちゃ強いのは知ってたけど、実際戦うとこんなすげぇの!?」

尊敬の眼差しを隠しきれない様子のチョウチョウ。だがやはり今日のチョウチョウのヤバさはひと味違った。「あのシュっとした立ち姿…もしかして」と意味不明な言葉を口走り始める。まてよく考えろ、億が一チョウチョウが七代目の娘だとして、あのボルトと双子だぞそれでもいいのか。あ、ということは私とも遠縁の親戚ということに…?うわきつ…。
少年は早々に勝てないことを悟ったのか、軽やか動きで退いた。
どうやら逃げる気のようで、少年の傍にはあの奇妙なマスコットが現れる。一つしかない目玉は写輪眼。つまり…うちはくん!?

「これが当代最強と謳われた、七代目火影の九尾の力…」キェエエエシャベッタアアアア!

「この眼で見ることができたのは思わぬ収穫だったな。いったん退くぞ、シン」

空間が歪む。きゅいん、と吸い込まれていったマスコットと少年は、跡形もなく消えていった。
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