ばっかじゃねえのお



まさかあそこでカゲマサがあんなことになるなんて…感動したわ忍者目指そう。ぐず、と鼻をすすりながら劇場から出てきた私は保存用パンフレットを丁寧に折りたたんでポーチにしまった。いや、ボルトたちが見ろ見ろと煩かったので興味本位で映画館に足を運んだのだが、なかなかどうして名作だった。なぜ私は今まで彼を知らなかったんだ…。帰り際に購入したカゲマサTシャツとタオルは自室に飾る予定である。
今度サイン会行こう、とハンカチで目元を拭った私の目の前を、サラダとチョウチョウが横切っていった。今日はお互い個人的に過ごす予定だったのだが、どうしたのだろう。切羽詰まった様子のサラダが私を視界に入れた途端に「ちょうどいいところに!」と腕を引っ張った。いきなり何だ。さてはこのカゲマサのポスターを狙っているな。やばい、隠さないと。

「九時の方向、森、白眼!」
「はい?」
「早く!」
「いいからちょっと手を貸してくんない?」
「ええ…」

言われるがままに白眼を発動させる。九時の方向の森というと、大きな川がある辺りだろうか。覗いてみると、何人かが集まって川に物を流している。不法投棄いくない。しかしそういう話ではないらしく、その様子をサラダとチョウチョウに伝えると「場所は間違いないみたいね〜」「時間がない…!」と叫んですぐに去って行ってしまった。何が一体どういうことなのか。…ま、面倒臭いしどうでもいいか。私はすぐに気を取り直して歩き出す。なにより、これから私はカゲマサ映画第一部を借りたのち鑑賞会を行わなければならない。これの重要度はS級任務に相当する。るんるん気分でスキップでもしてしまおうかと考えながら歩き始めると、今度は「あー!ナマエさんじゃないですか!」とはるか向こうからメタルと…同じような顔をした濃ゆい誰かが走ってくるのが見えた。え、もしかして私の方に向かっているのかこれ。

「こんなところで奇遇ですね!ボクはパパと修行中なのですが貴女は何を?」
「映画見て帰るところ…だけど、え?おまえの父さん、それ…?」
「自慢のパパです!」
「はっはっは、メタル、照れるじゃないか!やあ、いつもメタルから話は聞いてるぞ!君も日々青春を謳歌しているそうだね!ボクはロック・リー!」
「うっわ、親子共々濃すぎかよ」

ちなみに二人は立ち止まってもその場ですごい勢いで足踏みをしている。砂埃がすごい勢いで口に入ってくる。

「君は日向の出なんだってね?ボクのかつてのチームメイトも日向家の人間…ライバルだった。是非君もメタルの良き好敵手となって切磋琢磨しあってくれると嬉しい!!」
「うごっ、はい、げほっ、それはどうも、ごほっ」
「そしてそんな君にはこれをあげよう!」
「ナマエさんもこれを着て一緒に修行しましょう!」
「いや私はこれからDVDを借りに行きたいので」
「遠慮するな!全く正反対の技術を学ぶのもお互いのためになる!すなわち青春!うおおお!」

じりじりと距離を詰めてくるリー親子に私はグッズの入った紙袋を両手で抱えながらいやな予感がした。「え、…え?」メタルにがし、と右手を取られて、体が宙に浮く。走り出した二人に引きずられているのだと気がついた。

「いきましょうナマエさん!」
「やだ、いやだ、いやだいやだあああ」

このタイプの巻き込まれは初めてでどう対処していいか全くわからなかった。カゲマサ助けて。ずるずる、とメタルとリーさんの尋常ならざる力でもって引きずられていく私。多分一部始終を見ていたらしい通行人たちに、生暖かい視線で見送られたのだった。
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