わたしはわりと幸せなんだけど



人間関係って難しいぜ、そんなことを考える今日この頃。アカデミーに戻って私はボルトに委員長のことを相談しようと思った。ホウレンソウ、これ基本。しかしことごとく阻まれたのは主にミツキ君のせいである。私自身もいのじんから追われている上に、あやつボルトをがっちりガードしてきやがった。おかげで一切話せないまま放課後になってしまった。尻の辺りの布がボロボロなのは超獣偽画のハシビロコウに休み時間ごとにつつかれ続けたからで、いのじんはどうやら話し合いではなく武力行使をすることにしたらしい。陰湿な奴め。だかしかしめげないゾ。へへ、誰も助けてはくれないのがうちのクラスらしいや。いやでも委員長なら助けてくれていたか。あっ……。くそ、考えるな。委員長はもういない!助けられるのは多分ボルトだけと予想する!

「ボルト、話が」
「ねえ、ボルト、今夜君の家に遊びに行ってもいい?」
「なんだってばさいきなり。別にいいけど」

くそ、仲良しかよ。私を振り返ってニコニコしているミツキ君に流石にそろそろ激おこカムチャッカファイアー。ボルトも耳に何か詰まってんのかというレベルで私の話を無視してくる。恐ろしいまでに味方がいない。ふいにずぶす、と鈍い音が響いて私は地面に突っ伏した。おまハシビロコウ…尻に直接刺すときは事前に言ってってあれほど。私がハシビロコウに乗られているうちに、二人は喋りながら歩いて行ってしまった。取り残された私はというといい笑顔で柱の影から寄ってきたいのじんが「そろそろ話す気になった?」と言ったのを半分白目で見上げる。これがアカデミー生のやることだろうか。間違いなく忍者の素質はあると思うが、人としての優しさを忘れてはダメだと思うゾ私は。

「別にそこまで隠す意味もないんでしょ?」
「だって、絶対信用しないじゃん君ら」
「内容によるよ」
「あ、じゃあダメだ」
「言ってもみないで何がダメなのさ」
「…」

あの、いい加減ハシビロコウどけてくんないかな。委員長の見舞いに行くと言った以上今日も顔を出さなくてはいけないというのに、油を売っている暇はない。全力でふんじばって格闘していると今まさに学校から出てきた様子の、ポケットに手を突っ込んで欠伸を漏らしたシカダイが私達を見て「何してんだお前ら…」と引き気味で立ち止まった。別に踏まれて喜ぶタイプの変態じゃないんで誤解しないように。いのじんから「シカダイからも言ってやってよ。ナマエ絶対ゴースト事件について何か隠してるから」とげしげし足蹴にされて、いよいよ私の人権が疑わしくなってくる。お前だけが頼りだシカダイ頼む。「めんどくせーことになってんな、ったく」と頭をガシガシ掻きむしって、シカダイはとりあえず私を助け起こしてくれた。時間切れのためか、超獣偽画は音を立てて消えた。

「ボルトの奴もまだ諦めてないみたいだし…ナマエももう付き合わなくていいんだぜ。親父たちが本格的に動き出してるってことは、それだけやべーことに首突っ込んでたんだよオレらは」
「でも委員長が」
「委員長?」
「い…委員長がやられて黙ってられるわけないだろおめー!」
「そんな熱いキャラだったか?」
「ほらね。変だ」
「……まあそれでもよ。いのじんも言いたくないことを無理矢理引き出さなくても他にやりようはあっただろ」
「うーん、どうだろう。ナマエはやっぱり直接的に聞き出す以外吐かない気がして」
「私のクラスメイト怖すぎかよ…」

今何時代?第四次忍界大戦を終え、急速な発展を遂げたこの平和な木の葉の里に生まれた人間の思考回路とは思えない。見つけしだいやるぞ!うっ、頭が。
シカダイは相変わらず気だるげな表情のままで、別に私をいのじんと一緒に問い詰めてやろうとかいう雰囲気はもっていなかった。こういう風に話したくないなら聞かないスタンスのシカダイは、私としては現状これ以上ないほどの味方である。いのじんも流石に参謀役に言われてはううーん、とどう返そうか思案している様子だった。

「それにナマエに関しちゃ巻き込んじまったオレたち側にも非はあるからな。あんまいじめてやんなよ」
「それシカダイが言う?」
「それな」
「へーへー、ま、そういうことだから今日は解放してやれって」
「……わかったよ。ナマエはシカダイに感謝しなよね」

反省した様子は一切見られなかったが、今日はひとまず私を帰してくれるようだ。ありがとうシカダイ、ありがとう。これで一緒に病室に行くと言われてはたまったものではないので、私は一旦家に帰るために二人とは逆方向に足を向けた。
きっと委員長は早くしないとまたゴースト事件を起こすだろう。そうなった時今度こそ上忍たちに見つかったら、それこそ捕まってどうなるかわかったもんじゃない。ボルトが無理なら…私か?私なの?まじ?だから、そういう役回りはサラダやボルトだと何度も言っているのに。しばらく全力疾走で走り続けていたのだが、二人が背後から見えなくなったあたりで小走りに切り替えた。次第に足取りは重くなっていって、橋の上で立ち止まって木の葉病院のある方向を見つめる。ヒナタさんから言われた「ナマエちゃんは、友達思いね」という言葉が脳裏によぎった。いやいや、そんな、ねぇ。私ごときが委員長の悩みに共感して、受け入れることができるだなんて、自惚れることはできないよ。でも、なら何故私は、さっきのシカダイやいのじんには頑なに話さなかったのだろう。馬鹿だが、必ず友人のために動くだろうという確信の持てるボルトにしか、相談しようと思わなかったのだろう。
委員長はまじの犯罪者だぞ?ならなんで私は上忍に連絡の一つもしていないのだろう。
気づくとずっしりと肩に何かがのしかかってくるような感覚がして、私は目眩にふらついた。

「……うわ、めっちゃ重い」
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