だってさあだってさあ、うんうん



「で、結局その眼の正体はわからずじまいかよ」

「なんだ、ナマエにも迷惑かけたな」と後日ボルトに謝られた。案の定ボルトの目は白眼でもなんでもなかったらしいが、本人は随分とすっきりした様子だった。別に私のアイデンティティとられなくてホッとしてるとか思ってないよ?よ?どうやら七代目を見返してやりたいという気持ちが根底にあったらしく、結局は自分でやれるってところを見せないとどうにもならないと悟ったようだ。どこかで聞いたようなセリフだったが、あいにくと思い出せなかった。シカダイはそんなボルトに呆れつつも「なら、オレたちでやるしかねえな」と案外この謎の影事件の解決に乗り気である。ミツキ君もボルトがいるなら、と当然のように参加するらしく、よく見ると今日集まったこの面子あれじゃん、いつかのシノ先生騒動の時のやつ!うわぁ、嫌な予感。私は不参加で…と抜き足差し足去ろうとしたところ、シカダイが私の腕を掴んで締め上げた。おいおいどいつもこいつもよー、女子にする仕打ちじゃねえんだよお。

「ナマエの白眼はあの影を操る人間を見つけ出すための大きな力になる。一旦敵を捉えちまえば、索敵範囲を超えない限りどこにいようと見つけられるわけだしな」
「そうだぜ。ここまできたら、一蓮托生だってばさ!」
「あっはい」

こちとら肋骨が治ったばかりだってのに、 しくしく。
そういう訳で、私たちは謎の影事件を解決すべく四人で行動することになったのだった。

「で、こうして高台から里を見てて、意味ありますかあああ」
「オレの瞳はぜってーゴーストを見逃したりなんかしないってばさ!」
「そのゴーストってなんだよ」

「俺が考えたあのおかしな影のネーミングだってばさ」目を凝らして下界を見下ろしながら、影、基ゴーストについて私たちは議論しあっていた。ゴースト。ボルトにしては中々のネーミングセンスだと思ったので、私も今後は今回のことはゴースト事件と呼ばせてもらおう。最初はブツクサ言っていたシカダイも結局はゴースト事件と言っていた。ちょろい奴め。今週に入ってすでに7件起こったゴースト事件、いまだに犯人はおろか、実際の現場すら遭遇できていない。そもそも捜索がボルトの根拠のない見える!の時点で不安要素しかなかった。もしかして私、時間をドブに捨ててる……?いかん、また気づかなくてもいいことに。終いにはボルトが目が疲れたなどと言い出す始末。こうなると別の作戦を考える必要がある。というか鼻からこの方法には無理があった。
そういう訳で私たちは、今度はアカデミーが主催する職業体験を利用することにした。郵便配達という里中を回る仕事を体験することによって、里で起きるゴースト事件に先回りし犯人を見つけるという作戦だ。ただ闇雲に探すよりかはルート指定もあるし、悪くはないと思う。だが、そうは言っても成功する気はしなかった。第一、里といっても広く四人いてもカバーできる面積ではない上、万が一対マンを張ることになった時私は間違いなく一目散に逃げる。勝手に動いておまけに大怪我なんて、この間のシノ先生事件の時以上にワロエナイ。

「ゴースト事件を解決するまでだから、そこんとこ忘れんなよ」
「ナマエは何だかんだいって手を貸してくれるよね」
「押せばこいつは基本ヨユーなんだよ」
「わーってるってばさ。サラダも面倒だしな」

私は授業でもなければ任務でもない場面で命を張れるほど正義感に溢れてない。白眼で犯人を追うくらいはしてやってもいいが、後はボルトたちで頑張ってくれ。
このあいだのサボりがバレて全員こっぴどく叱られた時には、父さんが珍しく末恐ろしいと感じたのだ。これ以上は手を貸してやれねえ。おまけに今回の職業体験、三〜四人までで班を組んで選べと言われた時、サラダとチョウチョウの誘いを断ってしまったがために凄い目で見られたのだ。この三人と組むと言えば、二人だけでなくクラス中から村八分のような憂き目にあった。あの時のことを思い出してぶる、と震えた。

「ボクが君たちを担当するクロヤギタヨリです。よろしくね」
「よろしくお願いしまーす」

親に郵便局員になることを宿命づけられたような名前の職員さんに、四人揃って挨拶をする。礼儀は大切だ。何より問題を起こして配達業務に回らなければそれこそ本末転倒である。

「って、ボルト何してんだ!」
「あ?これを配達すりゃいいんだろ?」

ボルトが配達する荷物を指先でくるくると回していた。器用だ、器用だが、今それはアウトだよおめー。シカダイが注意するも時すでに遅し。クロヤギさんに「いけないよ!」と叱られた挙句、後から出てきたコマメさんとか言う上司には爪が汚いだのお客様の荷物を粗末に扱うなと早くも注意の嵐である。どう考えても、前途多難だ。
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