嘘みたいな本当の話。

仕事帰りに仕事道具と重い荷物を背負って、疲れた足をひぃひぃ言わせながら家に向かって帰っていた満月の夜。トラックのライトの光に包まれて交通事故にあったと思ったら山の中に投げ出されていた。いや、これ本当の話だから。まさか車に跳ね飛ばされて山まで飛んだのかとも一瞬思ったけど、生憎私の家は都会中の都会。見渡したって山なんてないし、天気がいい時に遠くの方でうっすらと見えているぐらい。ははぁん、これはもしかして別世界にトリップしたというやつですな、と一瞬で状況を判断できるぐらいにはあの日は疲れていたんだと思う。モデルの目を大きく見せて、女優の毛穴を隠して、時には髪型のセットだってしていた。今日はいつも以上に仕事が多くて、割と本当に死ぬかと思ったぐらいだった。今回のスタジオと家が近かったのが唯一の救いだったのに、気が付いたら、周りは山。もういい、寝られるんだったらどこでもいい。

そう思って山を突き進んでいると、

「あら、あなた大丈夫?どこからきたの?」

びっっっっっっくりするぐらい美人に肩を叩かれた。着物美人だ。化粧とかしている気配がない。すっぴんとは、まさにこの事。肌綺麗。目も大きい。おっぱいもでかいし、背も高い。も、モデルか?いやモデルがなんでこんな山の中に。出没してきた美人すぎるお姉さんの衝撃で、私は一旦気を失った。目が覚めてから美人なお姉さんではなく優しそうなお婆さんが私を介抱してくれていて、此処はどこだとか一体なんなのかとか、現状を把握することに必死だった。時は室町末期。場は忍者を育てる忍術学園。スマホを開いても電池はMAXだが電波は圏外。外に出て解る映画のセットとは比にならないほどのクオリティの高い日本家屋。私を見つめる着物美人の女の子たち。あ、これガチだと、私は再び気を失った。



あの日から、今日で丁度一週間。



「いやだもう本当に可愛いいいいいいいい!!なんなの此処の子信じられないぐらい可愛いいいいいいいいいいいいいい!!」



私の天国は、此処だと解った。



「うわぁ!こんなお化粧初めて!名前さんありがとうございます!」
「ううんお礼なんていらないの!むしろこっちがお礼言いたいぐらいだからぁ!ありがとう!本当にありがとう!!」

「ユキちゃんいつもよりお顔が華やかにみえるわ!素敵!」
「そうよトモミちゃん!ユキちゃんは髪色明るいから真っ赤な紅よりもう少し色を押さえた口紅がいいの!」

「これ、何色っていうんですか?」
「バーミリオン。和名は朱色かな?」
「ばーみりおん。わぁ、カッコイイ!」


「はいお次は誰!!?どっからでもかかってきて!!!」


「名前ねえしゃま、鼻息荒いでしゅ」
「しょうがないでしょうおシゲたそ!こんなに可愛い女の子に囲まれたこと今まで一度だってないんだもの!!」

はいはい!と手を上げる女の子たちに、私はだらしなく鼻の下を伸ばしてメイクボックスを開いた。だってしょうがないじゃない!こんなに化粧し甲斐のある女の子たちに囲まれているんだから!
不思議な事にメイクの量は減らない。液体だって、固形の物だって、使っても使って減らない。メイク落としだって減らないし、洗顔だって全く減る気配がない。こんな可愛い子達に囲まれるんだったら家においてきたあれもあれもあれも持っているべきだったと思ってボックスを開くと、いつの間にかそれはボックスの隅にいる。不思議な事もあるもんだ。っていうか、過去に来ている時点でおかしいことだらけ。ぶっちゃけ、これ以上変なことが起きたところで驚くことはもうないと思う。目の前の可愛い女の子たちを着せ替え人形のごとく自由にしていいだなんて、名前ってばなんて素敵なところに来たんだろう!こんな幸せってないわ!

だけど、一つだけ問題点がある。

ヘムヘムが遠くで鐘を突くと、忍たま長屋の方が騒がしくなった。

「えー!もう終わりですかー!?」
「ユキちゃんの次にやってもらおうと思ったのにぃ!」
「名前ねえしゃまもう少しいてくだしゃい!」

「私もそうしたいのは山々なんだけどねぇー、向こうの馬鹿面に睨まれる前に戻るわ。それじゃぁまた明日ね!」

私の服の裾をひっぱるこの子達の可愛さったらない。眉毛を下げて残念そうに私を見送ってくれるその顔でご飯三合は食えるだろう。メイク道具をしまってボックスに鍵をかけ、脱ぎ捨てていたスーツに袖を通して私はくのいち長屋をあとにした。

「なんだ戻って来たのか。今から迎えに行こうと」
「やかましい。私の対象性別は女だけだ私の前に立ちふさがるんじゃない」

「おい!苗字!」
「お前いい加減に私が年上だということを覚えろ!礼儀のなってないクソガキは大っ嫌いだ!コンシーラー原液頭からぶっかけてやろうか!」

そう、問題は此処だ。忍たま長屋に向かう私の前に立ちふさがったのは深緑色の身長高めの忍者の卵。隈のできた男は樹の上から降り私の姿を確認すると、喧嘩腰で私にものを言うのだ。これだから男は嫌なんだ。自分の方が強いからだの自分の方が偉いからだのと礼儀をわきまえず年上であるにも関わらず私の名を呼び捨てにする。誰が好き好んで男の園で生活していると思ってんだ。できることならくのたま長屋にあのままとどまりたいぐらいだ。

「苗字さん、食堂のおばちゃんが呼んでましたよ」
「うるさい私に話しかけるな。素顔も出さない厚化粧野郎はもっと嫌いだ」

私は女の子が好きだ。別にレズってわけじゃないしバイってわけでもない。ただ可愛い女の子を愛でるのが大好きなだけ。化粧して可愛い服を着せて笑っている女の子の可愛さったらない。性別が女の子なら何歳だってかまわない。幼女?問題ない。小学生?問題ない。JK?余裕。女子大生はストライク。これより先の年齢は私の腕の見せ所。女の子は輝いていてなんぼだ。

それにくらべて男はどうだ。汗まみれ。泥だらけ。野蛮で下品。口を開けば下ネタばっかり。たまに男優に化粧をするのは本当に精神が崩壊するぐらいの嫌な仕事だ。私はとにかく女の子を相手にしたいのだ。私の手で綺麗にしてそれで喜んでもらえる女の子がいるんだったら私はどこへだって駆けつけよう。

それだというのに、なんなのこの男だらけの全寮制学園は。

くのたま長屋とは正反対。10歳から15歳までの男がわんさかいるかとおもいきや教師もみんな男。私は不審者であり部外者であるからして、放課後の身柄は男だらけの忍たま長屋で拘束されることになっている。昼はくのたま長屋で化粧を教えて、夜は忍たま長屋で一晩過ごす。くのいちたちを取り入れたら恐ろしいからという理由で私は夜はこっちにいることになってしまった。しょうがないことといえばしょうがないことだ。そりゃぁ私はこの世界の人間ではないわけだし、怪しいと思われても仕方がない。だけど、なんで男だらけの場所で夜を過ごさなきゃいけないんだ。全く持って理解不能だ。此の身体を狙われるようなことはないだろうが、女の園があるのなら女の園で一晩を過ごしたい。ぶっちゃけ彼女たちの寝間着姿がみたいだけだけど。

「おばちゃん、ごちそうさまでした!」
「はいよ、そんじゃ、悪いんだけど…」
「えぇわかってますとも!おまかせくださいな!」

忍たまたちより一足早く食事をし終え食器を流しにぶち込んだ。それと同時に食堂には男たちが次から次へと入ってくる。おばちゃんが食事を配膳している間、私は食事を作るときに使われた道具の洗い物に取り掛かった。食事を手伝っていて「何をいれるつもりだ」と六年生に言われたときは本気で包丁を投げた。お前らを殺したところでなんの得もしないんだよ!と叫んで。あの一件で上級生の私への警戒心はさらに深まり夜の間、私が部屋にいる時は天井裏、床下、縁側にと見張りが付くようになってしまった。夜中までご苦労なこった。私はお前らなんかに興味がない。興味があるのは、可愛い女の子だけだというのに…。

ざぶざぶと道具を洗っていると、ごちそうさまでしたと別の子が食器を持ってカウンターに置いて行った。

「名前さん、僕らも手伝います!」
「へーへー、ありがとさんでもいいから帰れ」

「名前さんこれタダ働きッスか?」
「そうだよ。泊めてもらってるだけありがたいからね」

「おシゲちゃんが今日はありがとうございましたって伝えてくださいって!」
「おシゲたそ〜」

この三人のいる水色学年は可愛い。礼儀が解ってる。その一つ上の青色学年は素直じゃないけど私に興味を持っていることは解る。そして礼儀もわきまえている。さらにその一つ上は警戒はしているだろうが私の服にも仕事道具にも興味津々だったのを見た。うっかり長屋の廊下に手入れをするため広げていたのを近くで見てもいいですかと手に取っていた。正座してたし。私の事さん付けだったし。それ以上はなんの詮索もしてこなかった。ただし、礼儀正しい学年は此処まで。此処から先は私からすれば金魚の糞だ。やれ下級生に近寄るなやれ目の届かないところに行くな。なんだってあんなむさくるしい男どもに命令されにゃならんのだ。それも年下も年下。私より何個も年が下だというのに。深緑の学年に至っては敬語すら使えないとはいったいどういう事か。私はお前らより年上だぞと睨み付ければここは俺たちの土地だとガンを飛ばす。怪しい者だし、そう思われるのは仕方がないが、それはそれ。今は礼儀の話をしている。それが目上の者への態度かと履きなれたピンヒールで蹴る飛ばしてやろうかとも思った。群青色は警戒心を出しながら積極的に私の監視についているが、私と接する時の嘘くさい笑顔が吐き気がするほど嫌いだ。深緑の一部も同じく。

だが私が一番嫌いなのは

「御馳走様でした!苗字さん!お願いいたします!」
「御皿洗いお願いしま〜す」
「すいません、宜しくお願い致します」
「それじゃぁね、名前ちゃん。後よろしくね」

「うるせぇ!!!私に話しかけるな!!!」

この紫色のキラキラした学年だ。男のくせに、化粧もしてないくせに、カラコンもしてないくせに、この美しさは一体なんだってんだ。クソ!男でこんな美形なんて許さねえぞ!ふわふわ髪もさわらさら髪もより取り見取りしやがって!!私のような職種の人間にお前らの様な人間は天敵だ!!仕事のし甲斐がない!!

「くそっ…!くそっ…!男のくせにふざけやがって…!!」

荒んだ心を落ち着けせるためざぶざぶと食器の汚れを水で落とした。気付くと食堂には誰もいなくて、後は私が皿を拭いて棚に戻すだけ。手を拭き水を流し切り、食堂の灯りを消して、私は食堂を後にした。さっぱり帰る方法が解らない今、私はこうして大人しく過ごすしかあるまい。過去にトリップだなんて馬鹿みたいな考えだったけど、群雄割拠する戦国時代は忍者はいたと信じてる。その忍者が育つ場所があったっておかしくない。だけどこんな場所、平成の世には絶対にない。だとしたらそう考えるのが妥当なのだけれど…。さぁてどうしたもんかなぁ。

足袋で長屋を歩いていたから長屋も土足OKみたいだけど、私のヒールはあまりにも足音が大きすぎる。木造建築には痛手かもしれないと思い、床が板の廊下を歩く時は脱いで靴下で歩くことにしている。靴を手に、与えられた部屋に戻ろうとすると、


「こんばんは」

「うわっ、」


月明かりを背負った黒ずくめの人が、私の前に降り立った。で、デカ。何センチあるんだこの人。っていうか人でいいのかな。

「えーっと、どちら様?」
「曲者だよ」
「曲者?であえであえとか言った方がいいんですか?」
「あはは、いや、大丈夫。用事があるのは君だから」
「はぁ」

全く顔が見えないけど背丈と声の低さ的に、男で年上な気がする。でもここの先生じゃなさそうだなぁ。一体誰だろう。小松田セコムは一体どうしたんだ。

「君が最近此処に来たっていう化粧師?」
「けわいし?化粧のことですか?」
「そう、化粧。くのいちの子に化粧してあげてるって、伏木蔵くんから聞いたんだけど」
「伏木蔵……。あぁ、鶴町」

くのいち教室に上級生っぽい子はいないから、夜はこっちで上級生の見張りの下生活をしなきゃいけない。何度でも言う。ツラい。

「あなた男ですか?私年上の男性に化粧する気はないですよ」
「君の腕は一流かい?」
「プロですから。これで飯食ってますもの」
「そう。君はこの顔、なんとかできる腕を持ってるの?」

ぐいと腕を引かれて、外。靴下のまま土の上に降ろされてしまい、なんなんだこの人と思ったが、逆光だった姿に月の光が当たり、私は目を丸くした。黒い頭巾を外したその人の顔は包帯だらけで、火傷の痕がはみ出て見える。包帯で覆われていない方の目は爛れているし、頭巾を外した口元も、なんとも言えない赤黒い皮膚になっていた。

「あ、……そ、その…」
「驚かせるつもりはなかったんだ。やっぱりプロの化粧師でも無理だよね」
「特殊メイクならまだしも…私は普通の方ですから…」
「特殊メイクがなんなのかは解らないけど、ごめんね、驚かせちゃったね」
「いえいえ、お大事になさってください」
「はい、ありがとう」

「……いやそうじゃなくて、私に何のご用ですか?」


あぁ、と曲者さんは手を叩いた。


「化粧師さんに、ちょっとお手を貸してもらいたいんだけど」
「いやあなた誰ですか?」
「雑渡昆奈門。タソガレドキ城の忍だよ」
「此処の味方ですか?敵ですか?」
「まぁ味方っちゃ味方かな」
「そうですか…、じゃぁまぁとりあえずお話ぐらいは聞きますが」

縁側に腰掛けた雑渡さんなる御方は、あのねぇと口を開いた。

雑渡さんの部下さんの化粧を見てもらいたいのだと、そう言うのだ。新人もだけど、長年仕えている部下も、化粧の腕が完璧とは中々言えないレベルの物らしい。善法寺のもとにたまに包帯を取り替えてもらいにくるらしいのだが、ある日此処に来たとき善法寺はおらず、鶴町に未来から来た化粧師さんがいるという話を聞いたらしい。くのいち長屋に忍び込み、くのいち達に楽しそうに化粧をしている黒ずくめの女を見て、この子かと目を付けてきたのだという。スーツだからピンクの中じゃ目立っちゃったか。

「君名前は?」
「苗字です。苗字名前」
「名前ちゃんでいい?」
「お好きにどうぞ」

「それでね、君の化粧の腕をちょっと借りれないかと思って。給料弾むけどどう?うちの城に来ない?」
「それは…スカウトですか?それとも誘拐ですか?」
「この時間に忍び込んでるから、どっちかっていうと後者かな」
「ううん」

給料が弾むという言葉に少々心惹かれるが、誘拐となると話は別だ。なんとも呑気な誘拐犯だが、学園長先生はこの人の事を知っているのかな。着ている服を見る限りこの時代で作れるものではないと判断して、私が未来から来たという事は8割ほど信じてるらしい。残りの2割はなんなのだと問いたいぐらいだが。それよりも問題は

「可愛い子いますか?」

「え?」
「可愛い子、いますか?」
「可愛い子?」
「はい、顔が可愛い子です。美人でもいいですけど」

城仕えというからにはそれはそれは大勢のくのいちがいるはずだ。可愛い子がいるのなら監視されている学園よりもそっちの方が随分と住みやすいに違いない。給料も出る。くノ一もいる。最高じゃないか。

「うーん、私の判断じゃ解らないけど、可愛いに分類する顔の子はいるね。美麗な顔もヤツもいるとは思うけど」
「よっしゃ!!!!じゃぁ行きます!!!!!」
「おっ、本当?今すぐ行ける?」
「行けますとも!」

仕事道具は部屋にある。こっち来てくださいと私の部屋の前まで雑渡さんを連れていき、私は仕事道具をバッグに詰めた。メイクボックスは持った。その他もろもろの荷物も持った。無断で出て言ってごめんね学園長先生!でも私の輝く未来はこっちにありそう!

「こっからどれぐらいかかるんですか?私足遅いですけど大丈夫ですか?」
「なんか殺傷能力高そうな靴履いてるね。大丈夫、こっから先は私が抱っこしていくよ」
「ぐぇっ、重いとか言わないでくださいね」
「おじさんこれでも力ある方だからね」

半分ぐらい信じてなかったけど、雑渡さんは軽々と私の身を持ち上げた。すげぇ、この歳でお姫様抱っこされる日が来るとは思わなかった。だがしかし、


「あぁっ!!!曲者貴様ァアア!!」

「げっ、ヤバイ、名前ちゃん行くよ」
「えっ、えっ、あ、はい」


「ま、待て!そいつをどうする気だ!!」


最期に聞こえた声は確か潮江の声。あいつ私の部屋に見張りに来るつもりだったな。見張るつもりが曲者に攫われているところを見ちゃうだなんて、あーあ、これ潮江の責任になって先生に怒られるパターンだ。私知ーらない。だって私は同意の上とはいえ誘拐されてる身。見張りをしっかりしてればこんなことにはならなかったのにね!私に敬語を使わなかった罰だ!思いしれ!

月明かりの下雑渡さんは大人一人を抱えて軽々と木の上を伝っていくが、本当にこの人は何者なのだろう。忍者というのはこんなに凄い生き物だったのか。今の日本人にもこの力強さがあったらなぁ。

「はい到着」
「うほっ、大きなお城ですね」
「殿に挨拶は夜が明けてからでいいや。とりあえずうちの連中見てもらえる?」
「喜んで!!!」

どんなに麗しいくのいちが待っているのかワクワクする。私の腕の見せ所だ。真っ赤な紅を付ける子とかいるかな!オレンジのシャドウ使ってもいいかな!ウヒョー!ドキがムネムネ!!

だけど、私の希望は一瞬にして打ち砕かれた。


「はい、こいつらね」


「おかえりなさい組頭!」
「一体何処に行っておられたのですか!」
「小頭が探しておりましたよ」
「…組頭、その女子は一体?」




う、


う、



うわああああああああああああああああああああああああああああ騙されたあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!





「男だあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

「えっ」
「騙しやがったな大男畜生!男ばっかじゃねえか!」

「…私女がいるなんて一言も言ってないけど」
「何が楽しくて男の化粧みなきゃなんないんだよ!」
「忍務で女装が必要なんだけどね」
「可愛い子なんか一人もいないじゃないか!なにが可愛い子がいるだ何が美麗な子いるだ!全員!男じゃないか!!」

この辺は可愛い分類に入らない?と指さす先は目がくりっとした男性。違う。私が求めているのはこういう可愛いじゃない!女!女がいいの!

畜生最悪だ!扉の向こうでどんな可愛いくのいちちゃんたちがいるのかと期待してたのに全員男!しかも恐らく年上から年下までいる!最悪だ!本当に最悪だ!女の匂いが微塵もしない!男!男だらけ!しかも化粧の目的は女装!ありえない!こんなむさくるしいやつらが化粧!?何のために!?なんで女装!?馬鹿なの!?死ぬの!?

「無理!帰る!帰して!こんなとこ居られない!」
「ちょいと、君は誘拐された身なんだから、大人しくいう事聞いてよ」
「こんな男たちの面倒見るのなんて御免よ!今すぐ忍術学園に帰して!!」
「駄目、こいつらの腕を上げてくれるまでは一歩も出さない」
「詐欺だ!訴えてやる!クソが!これだから男は嫌いなんだよ!!」


投げつけたメイクボックスは見事にキャッチされてしまい部下の皆様方は不審な目で私を見ていた。得体のしれない女が城で暴れている。しかもそこそこ偉いであろう雑渡さんにぶちギレている。止めに入る人は一人もいないし、その前に皆さんはこの状況を理解することに必死そうな顔をされていた。


「ま、そういうわけだから。しばらくよろしくね」
「くそがぁああああああああ!!私を花園に戻せえぇぇええええええええ!!」


こうして、私の薔薇色ライフは幕を閉じた。









色素沈着待った無し

もうこんなとこ出てってやる!




……と、思うなよ!!!







「目を開けろ!アイライン如きにビビッてちゃ話になんねえぞ!」
「うわぁああああああああ筆!目に筆!墨!やめてください!!」

「なんで下地如きで梃子摺ってんだ!やる気あんのか!」
「ごめんなさい…!」

「真っ赤な紅は使うなと何度言えば解るんだよぉおお!その妙な緑の頭に似合うと思うな!」
「すいません!!!!」

「貴方は目つきが悪い!やり直し!」
「なっ…!?」


「組頭、ほとんどの人間があの子を送り返してくれと言ってますが…!」
「尊奈門、私もそんな気がしてきた。名前ちゃんもう帰ってくれて良いよ!」


「馬鹿め!こんな頓珍漢野郎共を最後まで育てずして引っ込む化粧師がいるもんか!基礎の基礎もできてないヤツらが女装なんかできると思うなよ!!!」


「帰ってぇ!」
「攫ったのはそっちです!今更後悔してももう遅い!」




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