「グルルル…」
「はいはいどこかにお店あったらねー」
「ウガァ」
「仕方ないじゃん私だってここがどこだかわかんないんだから」
「…」
「はいはい聞いてみますよー。食満さん、」
「はい!?」
「このへんに饅頭屋とかあります?」
「え、えぇ、ありますが」
「あるって!よかったねー!じゃぁあとでねー。」
「♪」
一体二人は何を話しているのだろうか。
もんじろうが饅頭が好物で、その店を探している、でいいんだろうか。
ポケモンとやらも人間の食べ物食べるんだな。そんなくだらないことをしみじみ思い始める辺り、俺はもう完全に翔子さんとこの不思議な生き物を受け入れてきてるのかもしれない。
おかしな話だ。何もかもを疑わないといけないと言っても過言ではない六年生という最上級生が、出会ってまだ間もない人間を受け入れているだなんて。
異世界から来た人。
きっと行くあてもないだろう。学園長に相談してみようか。恩人を此所で事務としてでも雇ってはもらえないかと。
「?」
「ん?…あ、建物!食満さんあそこですか?」
ハッ、と、声をかけられ意識が浮上する。
俺は今何を考えていたんだ。他人を学園に招き入れるだなんて。
「あ、学園…」
「もんじろ、あそこであってるみたい。あ、あそこに門があるじゃない。あそこ向かって?」
山道を下り忍術学園まで一気に走り始める。
嗚呼、やっと帰ってこられたのか。
「はい、到着ですよ。歩けますか?」
「えぇ、ずいぶんよくなりました」
もんじろうから降りて感謝を伝えて首もとを撫でる。
気持ち良さそうに目を細めると、 翔子さんはもんじろうをボールにしまった。
正式名称はモンスターボールというらしい。
もんじろうが消え、二人きりになってしまった。
「それでは、私はこれで」
「あ、」
「お身体お大事に」
背を向け歩き始める彼女。
そして、翔子さん、と、とっさに呼び止めてしまった。
「はい?」
呼び止めたからといって、何かできるわけでもないのに。
「あの、」
「逢い引き中悪いが、貴様、忍術学園のものだったのか」
翔子さんの背後に現れたのは、黒ずくめの男。
こんなときに追手か!
「我が城から奪った巻物を返してもらおうか!」
「は?」
「翔子さん、逃げてくれ!」
「え、ちょ、なんなのあんた!ぐえっ!苦しい!」
油断した。まさか翔子さんを盾にとられるとは最悪だ。
「や、やめろ!俺は囮だ!巻物なんて持っていない!」
「嘘を申せ」
「うそじゃない!本当だ!……俺の仲間が、持って帰った…」
「ほう、ならばこの娘はこのまま預かろう」
「こらー!この人は怪我人なんだから早く休ませてやりなsぐえ!苦しい苦しい!」
「待ってくれ!本当にその人は関係ないんだ!」
「ならばここでまつ。今すぐに巻物を取ってこい!」
まずいな。翔子さんを人質に巻物を持ってこいと言うのか。
今此所を離れれば翔子さんは殺されるかもしれない。
だが、巻物を持ってこなければ、殺される。
落ち着け、しっかり考えろ。
「食満さんだめ!なんかよくわかんないけど私を餌になんかされそうだったら無視していいから!」
「黙れ小娘!」
「うるせー!これでもDカップあるわい!」
「しかし!そうしないと貴女が!」
「せんぞーー!!」
またも聞き覚えのある名前。
またあいつらかと思ったら翔子さんの腰が光り、俺の横に何かが現れる。
これは、鳳凰という、神の姿ではないのか。
「な、なんだこの化物は!」
せんぞうと呼ばれる鳳凰を目にした追手は力を緩めた。その隙に翔子さんは追手の腕からすり抜け、こちらへ向かって跳んだ。
「化け物じゃないやい!せんぞう!あの人殺さない程度に!ほのおのうず!」
鳥特有の甲高い声を上げ鳳凰が口を開くと、炎をはいた。
「ヒイッ!」
羽根を羽ばたかせ風を起こし追手はあっという間に炎の柱に飲み込まれた。
炎が消え、追手は黒こげになって気を失っていた。
「お前やりすぎだよ…」
「クルル」
「いやこれレアとかそういうレベルじゃないって…」
「…」
せんぞーと呼ばれる鳳凰をボールにしまい、この人どうします?と首をかしげる。
学園の位置を知ったのだから、ただで返すわけにはいか
「留さん!?帰ってきてたの!?」
「留三郎!今のは炎のは柱は一体なんだ!」
あぁ、みつかってしまった…