まずい。血を流しすぎた。さっきかすったクナイに何が塗りこまれていたのだろう。今は腕。だんだん脚も上げるのがツラくなってきやがった。
出発前にやっぱり伊作が持ってけといった解毒剤を受け取るべきであった。おとりになるなら、なおさらのことだった。



学園まであとどれぐらいだろうか。
あいつらは全員帰れただろうか。

俺は、生きて、帰れるだろうか。


今回の任務に行かされた城に、まさか、あそこまで強いやつがいただなんて…。

クソッ、やっと六年になったのに。やっとここまできたのに。


俺はこんなところで死ぬのだろうか。






木に背を預けると、ふと気配を感じた。追っ手だろうか。やはり俺はここで殺されるのだろうか。

…?…追っ手にしては、あまりにも気配を丸出し過ぎる気がする。学園の誰かが探しに来たのだろうか。いや、それはない。俺は来た道から大きく外れている。ここが誰かに気づかれるわけはない。誰だ。やはり敵だろうか。


「とめさーん!あんまり早く行かないでよー!」
「!」

草むらの向こうから聞こえてきたのは、間延びした女の声だった。追っ手ではない、のだろうか。

動く草を掻き分けて出てきたのは、薄い紫色の、…………猫?と





「うお!?ええ!!!血まみれ!?!?!?ちょ、お兄さん大丈夫ですか!?!?!?」






やたらうるさい女だった。
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