話しでは越前リョーガは甥っ子らしい。私からいう従兄弟。その従兄弟は自由奔放で色んなところを歩き渡り、ただいま越前宅に居候らしい。ちなみに親は放任主義らしく何も言わないらしい。…感心ものだ、親も、越前リョーガにも。
あの感動もへったくれもない出会いから2年。私は小学一年生になりリョーガは小学三年生。
リョーガはジュニアではそれなり名を轟かせている。…まあ、私も今年から一年生、リョーガに負けないぐらい名を広めてやる。なんて思ったりしてるが私はまだリョーガには勝てない。幼児というのもあり体のバランスが上手いこと取れずリョーガのボールを取るのも結構精一杯だったりする。同じ年の子と比べたら突飛して上手いかもしれないけどそれじゃ、だめだ。
勝ちたい、
ふつふつと沸き上がる思い。自分でも知らなかった程、私は負けず嫌いだったらしい。
「――俺さぁ、そろそろ出ていこうと思うんだよな」
と、闘争心を沸き上がらせる私にそんな事を吐きやがったリョーガ。私は盛大に顔を歪めた。
『空気読め』
「今の言葉にその返しは明らかに可笑しいぜ」
『………、うう、私お兄ちゃんが居なくなるなんてやだよぉ…!』
「きめぇ!」
『殴んぞ』
あんたが文句言うから私は精一杯の演技をしたと言うのになんだその返しは、そんなに殴られたいのか。腕を振り上げれば必死に謝ってきたのでアッパーで何とか許した。
『で、いきなりどうしたの』
「べっつに、そろそろ潮時かと思ってな」
『……どんな潮時だよ』
居候に潮時とかあるのか。本当に気儘の奴だ。ひょろりとやってきてひょろりと去っていくらしい。本当に――勝手な奴だよ。
『勝手に出ていくなら出ていきなよ、私には関係ない』
「…そっか、」
リョーガが何しようが私の文句をつける義理はない。どこにいこうが、私には関係ない、はずだ。
『ただ、たださ。…私あんたとちゃんと試合したことないじゃん?』
「…ああ、ちび弱ぇから試合に何ねえからなぁ」
誰がちびだ、誰が。仕方ないから今だけ黙認してやる。海へとやっていた目を、リョーガに向ける。海のように綺麗な青色に。
『だからさ。――私との決着、つけに来てよね』
海のように、――海よりも綺麗な青い瞳は大きく開かれた。しかしそれも一瞬で、優しさ帯びた瞳を細めふっと口元を緩めた。
「ああ、決着、つけに。―――…会いにくるぜ、」
わしゃり、頭に乗る温かな手に目を閉じた。
『……誰もそんな事頼んでないんだけど』
「はいはい、」
綺麗でした
(それから数日後、リョーガは消えた)
――――――
決着つけにこい、つまり帰ってこい。という意味。うちの子素直じゃないんで←
リョーガは大体察しています。