静雄お誕生日おめでとう文章!乙女さんな臨也さんです。




俺だって、祝ってあげたい、と思う。おめでとうって、笑って、君が欲しがってたプレゼントなんかあげて、この人に喜んで欲しいのに、俺は少しも素直になれなくて。こんなにそばに居るのに、声すら聞かせて貰えない。喧嘩してたっていつも謝ってくれるのは君で、泣きそうになった俺を慰めてくれるのも、お腹減ったって言えば文句言いながら美味しいご飯作ってくれるのも、寒いって言ったら抱き締めてくれるのも、寂しいときにキスしてくれるのも、小さな約束で俺を喜ばせてくれるのも、全部、全部、君なのに、俺は、この距離で、おめでとうを言ってあげることも出来ない。そんな、俺を、君はまた、馬鹿だな、って笑って許してくれる?こんな馬鹿の、そばに、まだ居てくれる?まだ、好き、だって、言ってくれる?

30センチほど離れた背中は、まだ少しだけ怒りに震えているような気がするのは俺の見間違いだろうか。なんて考えながら、そっと溜息を漏らす。きっかけは些細な事だ。シズちゃんが牛乳買ってきてってお願いしたのに忘れてきて、今日の俺の予定が狂ってしまったことから始まる。シズちゃんの好きな牛乳プリンいっぱい作って喜ばせてあげようって、そう思っただけなのに。おっきな喧嘩に発展。部屋の中はぐちゃぐちゃで、シズちゃんも俺も傷だらけの血まみれである。唯一無事な物といえば、今現在俺とシズちゃんが座ってるソファくらいで。もう何もかも終わってた。俺が練りに練った計画も、シズちゃんのための牛乳プリンも、冷蔵庫に冷やしておいたケーキも、料理も。全部全部、終わってた。
なんだろ。やっぱ俺が普通の事をシズちゃんにしてあげようとしたから行けないのかな。祝ってあげたいと、喜んで欲しいとか、そんな風に思ったから。俺達は上手くいかないのかな。考えれば考えるほど、俺の責任に思えてきて、涙さえ出てきそうになって、ずず、っと鼻水を吸い上げる。そうして、仕事から帰ってきて着替える事無かったシズちゃんの服に付いたナイフで裂いた跡をぼんやり、眺めて、指先を伸ばそうとしては引っ込める作業を数分間繰り返していた。触りたい、触りたい、触りたい。触りたい。シズちゃん。いつもみたいにワリィ、って俺に言って、抱き締めて欲しい。それなのに、未だにその背中は俺に表情一つ見せる事無く、ソファの片隅に佇んでいた。
無言の凶器が刻一刻と俺をズタズタにする。もしかしたら、今此処で別れるとか言われたらどうしようとか、てめえの顔なんて見たくねえって言われたらどうしようとか。死ねと言われるより、殺すと言われるより、正直俺にはキツイ。死ねと言われたら殺してとお願い出来るし、殺すとうん、と頷く事だって俺には出来るけれど。別れろとか、俺には多分頷く事も出来ないし、別れたくないとお願いする事も縋りつく事も出来ない。俺には、その場合の選択肢なんて存在しないから。それこそ、もう死ぬしかないのかもね、などと、どこか他人事のように思った。そうなったら、どう死のう。やっぱ、こっから飛び降りとか?それともナイフで頚動脈いっちゃうとかの方がいいかな。出来れば痛いのはやだ。そしたら、一発でいけるほうがいいな。四木さんから拳銃でも買っておくべきだったな。これから現金持って買いに行ってしまおうか。シズちゃんはきっと俺を許してくれないだろうし。そうだ、そうしてしまおう。
飛躍し過ぎとか言われるかも知れない。けれど、俺にとってはシズちゃんはそういう人なのだ。俺は彼しか愛せないし、彼にしか愛されたくない。本当は、ずっとシズちゃんが好きだったし、シズちゃんが好きと言ってくれるずっと前から俺は彼しか見てなかった。そのシズちゃんに愛想尽かされたら生きる価値なんて、俺の人生には存在しない。心中っていう手もあるけど、誕生日に殺すとかかわいそう過ぎるし、第一無理だし。俺はやっぱり、独りぼっちでいる運命なんだよねえ。しょうがない。そう、しょうがないんだ。其処まで思って、ふ、と途切れた意識が引き戻されるように、声がする。付けっぱなしだった、テレビから流れる面白みも無いバラエティ番組の笑い声かと思ったが、そうではなくて、シズちゃんの背中が揺れた。
「……、わりい、俺が悪かった、」
顔が見えない。けれど、シズちゃんはぶっきら棒にそう言って、俺ではなくて、テレビの方に頭を下げる。その動きに何だか、面白いのか、嬉しいのか、笑いたいのか、泣きたいのか、良く分かんなくなって、ぐちゃぐちゃになって、結局泣くと言う行為に行き着いた。というかほぼ、無意識。俺の意思とは関係なく、ぼろぼろ、溢れてくる涙と、不細工極まりない嗚咽が唇から溢れ出す。堪えようと我慢してみても、俺の努力は少しも報われてはくれなくて。こんな顔見られて堪るか、とシズちゃんの背中に、ぼすん、顔を埋めた。温かくて、いい匂い。シズちゃんの匂い。やばい、ほんと。なんなの、俺何も出来てないじゃん。ごめんなさいも、おめでとうも、何にも出来てない。馬鹿なの?俺馬鹿なの?シズちゃんより、馬鹿なの?そう思うと悔しくて、嬉しくて、溢れ出す涙が、シズちゃんのシャツに染み込んで冷たくなっていくのをシズちゃんはそっと受け止めてくれた。ぐりぐり、と顔を押し付けても、やめろなんて言わないし。大丈夫か、って掛けられた声に、苦し紛れに五月蝿いって吐いても怒らないし。(寧ろ声色は笑ってる)ほんと、君って、何処までも人間が出来てるよね。ムカツク。俺の手で死んでくんないかな。まじな話ね。でも、そんな君が、俺はほんとにほんとに、本当に大好きだ。だから、今日は素直に、ごめんなさいをしてみよう。そして、おめでとうって言って、用意してた、ぐちゃぐちゃのケーキを食べて、生まれてきてくれてありがとう、と言って。明日になったら、君が食べきれないほどの牛乳プリンを作って。台無しになった今日の埋め合わせをしてみよう。君はどんな顔するか分からないけれど、君が少しでも幸せになればいい、と心の底で祈ってあげるよ。俺は優しいから。だから、少しでも多く俺の傍に居てよ。君が許してくれる限り、俺は君の隣に居てあげるから、君も。同じだけ、俺に愛を注いでよ。
なんて思ってしまう俺も大概調子がいいヤツである。

HAPPY BIRTHDAY!!シズちゃん!!






世界中が君の抱擁で溢れ出す









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