20年後、静臨。
キャラ崩壊も甚だしいので、許せない方はバックプリーズ








カーテンの隙間から漏れる光りと、ごり、と俺の頭に当たる固い何かが不愉快で、眉間に皺を寄せると、そっと目蓋を持ち上げた。誰かさんの所為で泣き過ぎた所為かあまり持ち上がらない其処を指先で擦り、霞んだ目の前をぼんやり、と眺める。その先に在るのは時刻を忙しなく知らせるデジタル時計とクリーム色のカーテン。
それから俺よりも一回り大きい掌が冷たくなって俺の掌を拘束していた。腕枕で血の巡りが宜しくない指先は少しだけ色を変えていて、慌てて頭を起し、温もりを分けるように掌を握り締める。このまま起きてしまおうかとも思ったが、どうにも身体を離す気にはなれなくてそのまま、痛む身体に鞭を打ってもぞもぞ、と身体の向きを変えた。目の前に現われた俺の目蓋を腫らした張本人の顔を見つめ、静かに、顔に掛かった髪を指先で撫ぜる。すー、すー、と漏れる寝息と、半開きになった唇が何とも可愛らしくて、思わず笑みを零しながら、露になって冷えた肩口までブランケットを引き寄せた。
その拍子に、ん、と息を零す唇を塞いでしまいたくなるくらい、腹が立つ良く出来た顔で、衝動のまま、ちゅ、と唇を重ねる。シズちゃんのくせにほんっとにムカつくなあ。シズちゃんのばか。ばーかばーか。心の中で吐き出す悪態とは裏腹に、柔らかな唇にする口付けは愛撫のようで、顔に熱が上がり始めるが、止まらない。
止められない。
それはそれは甘ったるく落ちる口付けは俺の意思ではないように、シズちゃんの唇に吸い寄せられては再び離れて、もう一度触れた。ちゅ、ちゅ、と擽ったい程の音が耳元を撫ぜ、髪を撫でる指先が絡むように、シズちゃんの金色の頭を抱き寄せる。息苦しいのか、く、と噤まれた唇を一舐めして、何度も湿った唇を覆うように塞ぐ。これ以上やったら起きるかな。でもな、シズちゃん有り得ないくらい起きない時は起きないからな。まるで肝試しでもするかのように、シズちゃんの起きるギリギリのラインを模索しながら、閉ざされた下唇と上唇の間で舌先を彷徨わせた。ていうか俺何してんだっけ。一人で。馬鹿じゃん。シズちゃんより、俺のが馬鹿じゃん。最早、冷静とは言えない頭の中で俺はぼんやり、そんな事を思いながら、ぷは、と止めていた息を吐き出して、唇を離す。そもそも、寝てるシズちゃんにキス自慢してもしょうがないし。ていうか起きててもしょうがないし。俺のテクニックとか、シズちゃんにとって、皆無だし。
一人、パンク寸前になりかけた頭と会話するように、言い訳を捲くし立てる。口には出してないから多分セーフだ。多分。いや、アウトか?いいや、そんなのどっちでもいい。シズちゃんは寝てるし。バレなきゃいいんだ。うんうん、と一人で頷きながら、自己解決を済ませ、もふり、と枕に預けた頭の位置を直して、再びシズちゃんの顔を眺める。離した唇がつやつやと唾液に塗れて光ってるのが目の前に晒されて、ぼ、っと火が付くように顔が熱くなった。俺の涎だし俺がやったんだけどさ、やっぱりなんか恥ずかしい。
そう思って咄嗟に、服の裾で覆われた手の甲でシズちゃんの唇を強めに擦る。この位じゃ起きやしないだろ、とそういう安心感の元で、やっていたのだが、んん、と不機嫌そうに顰められた眉間に、はっとして、そおっと音が立つ筈も無い手の甲をゆっくり、と離した。離した途端、穏やかに戻る表情に呆れる。ほんと図太い神経してるよね。普通起きるだろ。ていうか、殺されてても可笑しくないね。昔の俺なら絶対ナイフで刺すくらいはしてたと思うよ?
いや、今はそんな事死んでもできないししないけどさ。そもそも、俺が好きとか言う割にはキスしても起きないし。俺なら絶対起きるね。シズちゃんにこんなことされたら。まあ、その前にシズちゃんにこんなことされたら俺の首が在らぬ方向に向いてしまったり、唇がとれてしまったりとか、そういった考えの方が大きいけど。どっちにしろ恥ずかしさとか嬉しさで爆発して死ぬなら、どっちでもいいか。うん、いいよ。もう幸せだし。などと考えながら、寝てるシズちゃんの髪をさらさら、と撫でる。何で俺が好きなの?シズちゃん。自然と湧き上がった言葉にシズちゃんから言葉が帰ってくる事は無い。けど、朝を迎える度いつも思う事には変わりなかった。俺は捻くれてるし、素直じゃないし、好きって言ってあげられないし。シズちゃんならきっとさ、俺より可愛くて美人で、料理が上手くて、家庭的で、シズちゃんに好きってあげられるような人が出来るはずなのに。
まあ、全部、全部、阻止してる俺なんだけどね。俺がシズちゃんの人生の妨げになってる事くらい知ってる。でも、止めて上げられないのは、きっと俺のエゴなんだろうなあ、と思う。だって、俺こんなにシズちゃんが好きだもん。きっと、ずっと、ずっと、ずーっと、好きだ。君の事。
化け物で、力の加減なんか全然なって無いし、口は悪いし、煙草は吸うし、猫とか拾ってくるし、甘いものが好きで、野菜とか残すし、酔っ払ったときなんか手が付けられないくらいべろんべろんになるし、トイレの中で漫画読むし、メールの返信は遅いし、仕事してたのに、俺に会いたくなったって帰ってくるし、俺に好きだって言うし、愛してる、って、言うし…馬鹿だし、アホだし、巨根だし、性欲は底なしだし、馬鹿だし…馬鹿だし、…馬鹿だし……。ああ、もう!悪いとこなんてほんとは全然一個もないんだけどさ!!だからそんな、シズちゃんが、俺は泣きたくて、死にたくなって、一生を傍から離れてあげれないくらい、好きで、好きで、たまらないんだよ!!君の所為だから、全部シズちゃんが悪いんだからね!離れて欲しかったら、俺に嫌われるように、精々頑張ればいいよ。
まあ、絶対に、100年経っても、200年経っても、1億年経っても、何年経ったって、絶対に君を今よりも好きになる事はあっても嫌いになる事はないから、覚悟して。俺はしつこいよ?シズちゃんが思ってる以上に、ね。だから、今日も、君の人生の妨げになる事にしようかな。ね、シズちゃん。
くすり、と浮かべた笑みのまま、ブランケットの下に隠した温めた指先を持ち上げて、綺麗に通った鼻筋を撫でる。そのまま、軽く、むぎゅ、と鼻を摘んで。好きだよ、シズちゃん。大好きだよ。と、君が起きる前に言葉を奏でた唇で、シズちゃんの呼吸を奪った。
平和島静雄が起きるまで、22.9秒。






いつか、きっと、(僕達は死んでしまうけど)それでも、また(生まれ変わっても君の隣に居れたらいいな)









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