20年後、静臨。
キャラ崩壊も甚だしいので、許せない方はバックプリーズ








「…………臨也、…」
そっと耳元で囁いた声に反応は返って来ない。表情を覗き込むように、そのまま頬っぺたに唇を落とすと、少しむず痒がるように、眉間に皺を寄せた臨也はすぐに表情を穏やかにして、俺の腕の中で胸の背中をぴったり、と寄せたまま猫みたいに身を縮込めて丸くなった。
その拍子に背中のげっそり、と浮き出た背骨を指先でなぞりながら、窪みに一つ、また一つ、と唇を落としていく。ちゅ、ちゅ、と甘ったるい音が響き渡ると、なんだか顔がにやけてしまった。何故ならこいつが起きてたらこうは行かないものだから。起きてたら速攻、まず一発殴られて、何やってんの、もしくは馬鹿じゃないの、と罵られるだろう。それから、離れてよ、と可愛くないことを言われて、(まあ、可愛くないことを言ってるこいつも可愛いんだけ)この細い身体は俺の腕からするり、とそれはもう、猫そっくりにすり抜けて行ってしまうのだ。そう思うと、気絶するまでこの不健康にも程がある身体を甘ったるく蕩けさせて抱いて抱いて、抱きまくった事は間違っていなかったと思える。主に俺限定だし、臨也の身体の負担を考えると控えなければとは、脳裏を一瞬だけ過ぎるのだが、それもあっさり、ベッドの中のこいつを見ると綺麗さっぱり吹き飛ばされてしまう。臨也が悪いとは言わない。ていうか俺が100パー悪い事は目に見えてるし、俺だって自分で分かってる。でも、どうしても証明したいと思ってしまうんだ。
臨也の存在が此処にあるって事を俺は証明したい。俺が手前の隣に居るって事を証明してえんだよ。お前はいつも、綺麗に笑って、辛いことなんて何もありませんって面しやがる。俺が言えと言っても弱音なんて一つ吐きはしないし、俺に傍に居ろとも、必要だとも。一言も、言わねえだろ?好きだなんて言葉別に言わなくたっていい。てめえが言いたくねえなら、俺はそんな言葉いらない。でもな、何もねえのは俺が居ねえのと同じだと思わねえか?だったら、俺が出来ることなんて一つしかねえじゃねえか。手前の身体に俺が居ることを刻み付けて、俺の身体にも手前が居ることを刻み付ける。強く抱くのは、手前の痛みを知りたいから。手前がいてえ分、俺の背中に爪あとを残せばいい。俺の腕に、歯形を残せばいい。そしたら、俺は生きてることを実感できる。手前にまだ必要とされてると思える。こんなの、歪んでるよな。んなの分かってんだよ。俺だって。でもな、臨也。お前を手に入れる為なら、俺だって手段選んでらんねえんだ。そろそろ、歳も歳だろ?結婚も考えなくちゃなんねえしな。ごめんな。死ぬほど。死ぬほど、お前が好きなんだ。
臨也、臨也。臨也。ごめんな。
口付けに乗せるように言葉を囁いて、細い身体をそっと抱きすくめる。滑らせた掌が、さらさらと、汗が乾いた肌をなぞり、骨ばった手の甲に重なった。馴染む体温をもっと感じたくて、覆うように、指先を絡めて握り締める。すると、握り返されるように指先が動き、俺の指先を包み込み、束の間に少しだけ、笑みが零れた。
そのまま、枕に頭を預け、目の前に襟足と肩口に唇を落とす。そして訪れ始めた睡魔に、静かに目を閉じると、おやすみ、臨也と耳元で呟いた。手放す意識。俺を包む温もりの中。俺はまた手前の夢を見る。十年も前、昔の俺と手前に戻ったみてえに、ナイフを振り翳す臨也。俺は笑って手前を殴り飛ばして、そして言うんだ。憎悪にも似た愛の言葉を。

「…俺を好きになれないなら、俺のことを殺したいくらい憎めばいい。そしたら、ずっと一緒だろ?」






戯れる指先










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