20年後、静臨。
キャラ崩壊も甚だしいので、許せない方はバックプリーズ








沸き立つ湯気が身体に纏わり付く。二人では明らかに狭いバスタブに溜まった白濁のお湯に足を通すと思わず、あー、と声が漏れた。しかも濁点付きだ。我ながら、歳を取ったと感じたが、その声に、すでに湯船の中に納まっていた臨也が、くすくす、と笑う。シズちゃんも立派なおっさんになったね、なんて言われると思わず手が出そうになった。
が、何とか堪え、っせえ、と返して、全身を湯船に沈めた。二人分の身体で、僅かに漏れるお湯が、真っ白い床と同化して、流れていく。其れを眺めながら、臨也の身体を引き寄せて、足の間に納めた。濡れた襟足を撫でると、擽ったそうに細い肩が竦められる。その仕草に、腰を抱き寄せて、剥き出しの肩と頬っぺたにキスを落とすと、もう、と呆れたような声が浴室に響いた。それでも満更でも無さそうな仕草に、愛しさが込み上げる。もう40過ぎとは思えない。こいつ見てると。本気でそう思うのだから、俺の頭も相当イカレてるんだろう、とぼんやりと思いながら、バスタブの淵に腕を預けた。それと一緒に、臨也の軽い身体も俺の胸へと預けられる。見える旋毛に、ちゅ、と唇を落とし、外のどしゃぶり、と同じように滑らかな白い肌に口付けの雨を降らせた。
ふふ、と漏れる声がたまらなく可愛くて、愛しくて、愛らしいくて、ぺた、と水に濡れて重みを増した毛先が胸どころか、俺の心までもを擽っていくのが分かった。表現出来ないこの気持ちが、愛ってもんなんだと、こいつと過ごす中で学んだ。20年前の俺に教えてやりてえくらいだ。この両手でも足りないくらい溢れ出す愛を。お前は20年後、こいつを愛して愛されて、幸せに暮らしてるんだってことを教えてやりてえよ。まあ、99パーセント自慢も含めて、だけどな。
「なあ、臨也?」
問い掛けるように、首筋に吸い付く。そのまま、何が、と振り返った唇を奪って、優しく、包むように頬を撫でた。その拍子に首筋を流れた水の玉が滑るように、鎖骨の窪みに溜まる。それからゆっくりと胸に流れ落ち、溜まった白濁のお湯と一体になっていった。追いかけるように、お湯に手を沈めて、水分を取り込んでよぼよぼにふやけた掌を握る。指先を弄ぶように絡めて、持ち上げた其れで柔らかな唇に触れた。
なあ、臨也。手前がどう思ってるか知らねえけどな。たまに真剣に思うんだよ。じじいになっても、こうして居られたらいいとか、思っちまうんだ。本当によぼよびになって、手前の顔なんか見るも見残に老けて、足腰も立たなくなって、セックスなんか出来なくなって、ボケて、介護が必要になって。手前なんか誰にも相手にされなくなっても、こうしていられたらいいって思うんだ。こうして、掌を合わせて体温を分け合って、どっちの心音か分かんねえくらい、触れ合って、いつか一緒にあの世に逝けたらいいなってな。あと30年か、それとも40年か。俺たちの生きていく時間はそんな曖昧なものでしかないけど。手前が許す限り、俺が隣に居てやる。だから、俺を、独りにしてくれるなよ。
なあ、臨也。






掌と心臓










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