20年後、静臨。
キャラ崩壊も甚だしいので、許せない方はバックプリーズ








こんなはずじゃなかった。最初は、こんなはずじゃなかったんだ。ただ、傍で君を見ていられるだけで幸せだったんだよ。少しちょっかいなんか出したりして、喧嘩して、殺しあって、そして、出来れば君の手で死ねたらいいなって、君の手で殺されたらいいな、ってそう思ってたのに。何でこうなったんだろう。未だに信じられないし。訳わからない。何で君は俺が良かったの?何で、俺の傍に居るの?馬鹿なの?俺なんかの傍に居て、頭大丈夫なの?ねえ、シズちゃん。君馬鹿だったの?ねえ、ってば。
湧き上がる疑問と共に、もう何年も見続けてきた横顔を指先でなぞる。顔に掛かる金色の髪を撫で付けるように梳き、露になった穏やかな表情を眺めた。なんだよ、かっこいいな。くそ。ここ数年で、更にかっこよくなった気がする事に悔しさを覚えながら、ごろり、と隣に横になる。頬杖を突いて、少しだけ皺の増えた目尻を撫でながら、滑るように頬っぺたに触れると、眉間に皺が寄った。無意識に零れる口元の笑みを隠すように、唇を噛み締める。こうしてると思うことは何時も同じ。歳を重ねて来ても、いつも、いつも同じだった。この表情は本当に、俺が見ているべきものなのか。本当に俺の隣にあるべきなのか。君はもっと相応しい相手の隣に居るべきなのではないか。そう思ってしまう。けれど、もはや自分では、判断も出来ない域だ。それくらい、出会ったときから、君がどろどろに好きで、今更別れろと言われたら、俺にはもう行き場なんて無いんだけど。でも君の為なら、俺は別れさえ怖くないと思うことにするよ。俺は愛をそういう形でしか、君に表せないから。昔は人間に愛を叫べたのに、今はどうしても、君一人に伝えることすら、臆病になってる。きっとあの時、君に抱き締められたとき、すでに、俺は殺されてしまったのかも知れない。それならそれで、俺はすごく幸せだけれど。でも、やっぱり、シズちゃん。聞いてよ。眠ってる間だけでいいから。
唇から零れ落ちる二文字、をそっと耳元で囁く。頬っぺたに唇を付けて、滑るように、シズちゃんの唇に唇を重ねた。ちゅ、と触れ合うとすぐに離れて、付いた唾液をごしごしと服の裾で拭う。すると、不快そうに顔が歪んで、閉ざされた目蓋が、持ち上がった。視点の合わない先を覗き込む。髪色に似た瞳に俺が映ると、意思を持った瞳孔が俺を映して、どきり、とした。シズちゃんの目を見てると、全部見透かされたような気になる。俺の思い過ごしだとは思うけど、変なとこ勘がいいからな、シズちゃんって。まさに動物。馬鹿だし。誤魔化すように、おはよう、と口に出して、目を逸らす。数秒、置いて、はよ、って帰ってきて、深くにもかわいいと思ってしまった事は絶対に、絶対に口に出さないでおこう。歳をとったシズちゃんは調子に乗りやすいとここ数年の所業で学んだ。平和島静雄には何も言うべきではない。ベッドから降りて、昼ごはん出来てるよ、と振り返る事無く告げる。その瞬間、手首を掴まれて、引き寄せられるとぎゅ、と抱き締められた。見上げた先に何の前触れもなく、唇にちゅ、と口付けられて、甘ったるい雰囲気が流れる。こっちが恥ずかしくなるくらい。なんだこれ。冗談じゃない。爆発する。絶対にこれは爆発する。俺が!
「ちょ、何、シズ、ちゃん。やめてよ。離して。ご飯だって言ってんじゃん」
気持ち悪いよ。と心にも無いこと言って、内心俺が一番傷付く。けど、これは代償だ。君に好きだと言えない、君に、世界中で一番好きだと、君が居るから、俺は無敵で素敵に居られるんだと、言えない俺が払うべき代償なんだと、分かってる。それなのに、君がこんな風に温かく、全部全部、抱きすくめてしまうから。こんな風に、俺にキスして、好きだと言って、寂しかったか、と問うて、あんまりにも優しく笑うから。自分を許してしまいたくなるんだ。許されないとは分かってるけど。
「さ、みしいとか、なんなの?寝ぼけたこと言う前に目覚ましなよ、」
「ってえ!」
べち、と額を引っ叩いて、身体を離すと逃げるように昼食代わりに作ったのだがシズちゃんにとっては遅めの朝食の前に一人で座る。未だ、いてえ、と不貞腐れたように、額を押さえるシズちゃんはほんとかわいいなと思う。どうしようもないくらい。だから、本当は言葉の通りどうしようもないくらい甘やかしてしまいたいのだけど。俺にはそれすらも出来ない。でも、少しなら、ほら。シズちゃん。君に少しだけでも俺の愛は伝わってる?早く、と呼び寄せ、シズちゃん用の水色の箸を手渡す。そうすると、シズちゃんはころっと表情を変えて、満面の笑みでテーブルに着いた。窓の向こうから差し込む光りがシズちゃんの金色の髪を照らして、更に輝きを増す。そして、目を細めながら、うまそうだ、って笑ってくれるんだ。その姿は息を飲むくらい、俺の眼には神様みたいに映ってしまうのだから、しょうもない、よね。
ねえ、シズちゃん。もしこれが、本当に現実だとして、本当に、君が俺をずっと好きで居てくれてるんだとして、愛されるべき君を、皆から奪ったことを許されるのだとしたら、いつか。伝えるよ。今まで、君が言ってくれた以上に。君に大好きだって、愛してるって叫ぶから。何時かその時まで、君が俺の隣に居ますように。






まだ届かないけれど、










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