性癖と足コキ。




俺の指先から奏でられるカタカタ、と永遠と鳴り響くタイプ音と、パソコンの稼動音。その隙間を縫うように僅かに熱を孕んだ吐息が耳を撫でれば、思わず溜息が漏れた。気にするな、と言われるなと言われると余計に気になってしまうのが人間と言うものだ。しかも足だけ貸してくれなんて、気ちがいにも程があるだろう?俺の足が何に使われているかなんて、君たちに、想像が付く?いや、付くわけが無い。絶対に付かないね。だって、今正に足を使われている俺ですら、未だに理解してない。俺の彼氏でもある、彼にこんな趣味があるだなんて。知りたくも無かったけれど。知ってしまった物は、俺にはどうする事も出来なかった。
脱力したままの俺の足を掴んだ彼、平和島静雄は、テーブルを挟んだ向こう側で、少しだけ眉間に皺を寄せて、熱い息を吐き出す。此処から見ている姿、というか光景は正に摩訶不思議だ。苦しんでいるようにも見えるし、熱に浮かされているようにも見える。実際のところ、行われている行為によって、彼は快感を得ているだけなのだが、その方法が、一番問題があるのだ。別にシズちゃんのこういう姿を見るのは初めてじゃない。付き合っている以上セックスはするし、性生活の方も仕事の関係で頻繁に、とは行かないが週に、一、二度は出来ている。体力的な問題で挿入まで行かないときもあるけど、そんな時はこの俺がフェラしてあげたりもする。だから、シズちゃんが不満に思ってるとかそんな事一切考えた事無かったけど、これは、きっと、俺とのセックスに不満を持っている、と言う証拠では無いかと思った。それはちょっとショックだ。俺は満足してる。ていうか、シズちゃん一切そういうの見せなかったし、気付かなかった俺が鈍感と言われているようで、何か、悔しいような、情けないような、複雑な感情が込み上げてきて、思わずカタカタ、と動かした指先を止めた。タイプを待つ縦線の点滅から、パソコン越しの彼に視線を移し、掛けていた眼鏡を指先でそっと外す。此処からではシズちゃんの顔しか見えないが、ねえ、と話しかけると、眉間に皺の寄った不機嫌そうな顔が息を荒げて、なんだよ、とぼやいた。
「……何やってんの?」
聞かなくても、分かるが、一応、聞いてみた。すぐに、お前の足でオナニーしてんだよ、とぶっきら棒に返って来た答えに脱力する事になったが。それでも、確認の為に聞かずには居られなかった。強く掴まれた足首から伝わるシズちゃんの掌の湿り具合や、パンツ越しのシズちゃん自身の熱。それはいつもセックスの時に感じている感覚とまるっきり一緒なのに、この行為自体は異色過ぎて、中々理解が追いつかない。俺の優秀な脳を持ってしてもこうなのだから、常人には到底理解出来ない域なんだろうな、なんて、どこか他人事のように思って、再び込み上げる溜息を我慢する事無く吐き出した。そんなに溜まってるなら、足なんか使うより、フェラでもセックスでもしてあげるのに。シズちゃんは話をしている最中も激しく擦り上げる行為を辞める事無く、俺の足裏に股間を押し付ける。更に、硬く熱を持った感覚が強くなって、何か俺もゾクゾクしてしまった時には、俺たち終わってるな(主にシズちゃんが)と本気で思った。

それまで、力を込めることの無かった足裏に僅かに力を込める。シズちゃんのソレを足の指先で器用に擦り上げながら、表情を見遣れば、僅かに歪んだ顔が此方を睨んで来た。何その顔。全然怖くないんだけど。寧ろ可愛らしいくらいのその表情に、内心きゅん、としながら、広いデスクに頬杖を付いてシズちゃんを見下ろす。そうして、足首を掴む掌の力に逆らうように、足裏をシズちゃん自身に押し付けて、強く踏んでやった。
「っ、ぁッ、いざや、いてえ…っ」
「は?絶対嘘、気持ちいいの間違いでしょ?」
びくり、と震える肩、足先から伝わる強烈な熱。更に浮き上がった腰が痛みではなく快楽を優先している事を知らしめていてシズちゃんの言葉は全くと言って良いほど説得力が無い。まあ、この腰つきが自覚から生まれている物だとは到底思えないので、無自覚だとは思うが。それにしても、今日のシズちゃんは俺の目には酷く愛らしく映っていた。煽られる興奮が徐々に高まっていくのを感じる。止まらない。もっと、可愛くなって欲しいかも、なんて心の中で思ってしまって。足裏を押し付けたシズちゃん自身を指先で擽るように擦り、親指と人差し指の間で挟み込んだ。形に添ってゆっくり、と上下させる足を掴む掌の力が強くなる。痛いから離して、とデスク越しに命令するような口調で言うとすぐに、足首は離された。やばい、すごい気持ちいい。もっと、蔑んでやりたい。出来ることなら罵ってやりたい、などと考えながら、高揚する気持ちに熱で浮かされたように身体が熱くなって、乾き始めた唇を舌で舐めずった。
「シズちゃん、ソレ脱ぎなよ。パンツ濡れちゃうでしょ?イッたら俺が洗濯しないといけないんだから」
早く脱いで、とぐりぐり、と足の腹でシズちゃん自身を踏み付けながら、ね?と首を傾げると、シズちゃんは少しだけ潤んだ瞳で俺を見つめて、うん、と頷いた。ああ、可愛い。可愛すぎて、どうにかしてやりたい。そんな気持ちが早って、ゆっくり、と自分のボトムを脱ぐ彼を手招いて俺の前に跪かせる。命令した訳ではないけれど、威圧的な言い方だと言うのは自覚があったが、シズちゃんは何故か何処までも従順で、頷いては俺の前に、剥き出しのちんこを晒して、踏んでくれ、とばかりに腰を寄越した。すでに濡れた先端から零れる透明な粘液をゆっくり、と足先で拭い、親指をそっと押し当てる。それからゆっくり、と全体を撫でるようにゆるゆる、と足全体を上下にさせた。椅子の背凭れに背を預け、汗で湿ったシズちゃんの前髪を指先で弄る。臨也、と吐息と一緒に零れる声に、何?と首を傾げれば、彼は俺の太腿に擦り寄るように頬を寄せ、縋り付いて、セックスがしたい、と懇願した。思わず可愛い、と漏れる声がシズちゃんに届いたかは知らない。ただ、必死になって俺の足に縋りつく彼の姿は優越感を最高潮へと導いて、俺の中の何かをぷつり、と焼き切ったのだけは分かった。
「…いいよ、セックスしよ。でもその代わりさ、」
すりすり、と擦り付いた頬が、俺の言葉を境に僅かに上がる。その顔に、にこり、と笑い掛けて、真っ白な肌に指を滑らせて撫でれば、シズちゃんは嬉しそうに目尻を下げた。あー、その顔好き。可愛い。けれど、君はもっといい顔出来るんだよね。例えば、こんな顔とか、と撫でた頬から、きらきらと光る金色に指先を絡ませて、力いっぱい後ろに引いてやった。君はバケモノだから痛くはないはず。けれど、反射的に歪んだ顔は、何とも性的に見えて、ぞくぞく、と背中が痺れる。同時に、強く踏みつけたシズちゃんのちんこから溢れ出した白濁に、くすり、と唇を歪ませると、その足を離して彼の顔に押し付けた。
「俺の言う事、全部聞いて。そしたら、セックスもしてあげるし、俺のこと好きにしていいよ。」
じゃあまず初めに、君が汚したこの足、舐めてみようか?ねえ、シズちゃん。まるで子供に問い掛けるように頭を撫でて、首を傾げる。何時もならキレても可笑しくないような仕打ちに、シズちゃんは何も言わずに頷いて、俺の足を犬みたいに舐めて、再び自分のちんこを勃起させていた。君にこんな趣味が在ったとは思わなかったよ。けれど、君の性癖より、更に驚いた事が一つだけある。それは、俺自身がこんな趣味を持っていたって言う事だけれど。それも今となってはどうでも良くなって、俺は必死になって精液で汚れた足に舌を這わせるシズちゃんの表情を、恍惚と眺めていた。






唾とミルク










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