※特殊設定。気持ち悪い静雄が嫌いな方はバック!寧ろ臨也も気持ち悪い。




シズちゃんは、気持ち悪い。例えば、馬鹿みたいな力を持ってして人間をぶっ飛ばしたりとか。例えば、あんな強面な顔して甘い物が好きだったりとか。例えば、毎朝牛乳をがぶ飲みして、今以上に強くなりたいと思ってたりとか。数え切れないほど、シズちゃんの気持ち悪い面を見てきた。だけど、其れは生理的に受け付けないとか、そういうものでは無く、ただ単に俺がシズちゃんを嫌いだから、という理由それだけだ。現に、好きと嫌いが混在する俺にとって、それらはもう気にならなくなっている。これが愛と言うものだと気付くのに、相当時間は掛かったが。今現在の話をするならば、そのシズちゃんの気持ち悪い奇行は最早愛しいものとして俺の脳は認識していた。
けれど、やっぱり、これは無い。さすがに、これはないよ。シズちゃん。だってさ、これって、気持ち悪すぎるもの。

古ぼけたアパート。何とか荘と書かれた文字はすでに読めないほど劣化し、埃っぽい匂いが鼻に付いたが大分前にそれも慣れてしまっていた。かつり、かつり、階段を上がって3つ目の部屋が通い慣れてしまった彼の部屋。今日は何をしようか、とか何を食べようか、とか。そんな事を妄想しながら、灰色のドアをノックすると、当たり前のようにシズちゃんの声がした。会えるの楽しみにしてた、なんて悟られないように、ポケットに突っ込んだ掌をぐ、っと握り締めて、目の前のドアを見つめる。早く早く。心の中でそう呟きながら、ガチャリ、と開くドアに俺は目を輝かせた。
だけど、次からが問題である。俺ではなく、シズちゃんに。決して俺が過ちなんて犯した訳ではない。むしろ、此処までパーフェクトに過ごしてきた。女の子なら泣いて喜ぶほどに。シズちゃんと家デートの約束を取り付けて、忙しい仕事を切り上げてシズちゃんの夕食を作ってあげようと考えて。まだ早いからついでに買い物も一緒に行こう、だとか。あわよくば、朝まで持ち込んで、明日までシズちゃんと甘い甘いひと時を過ごそう、などと幾つ物シュミレーションを経てきたくらいなのだ。けれど、その妄想ですら、目の前のシズちゃんによって儚くもあっと言う間に散っていく事となった。あー今日は其れの日か。心の中で呟いた声は俺の気持ちと一緒に粉々になったのは言うまでも無いだろう。よお、と笑顔を振りまいたシズちゃん。輝くほどの笑顔の所為か、それとも別の理由かは分からないが、一瞬襲った眩暈に俺が目を細めると、彼はぐい、と俺の腕を引いた。ああ、嬉しい。嬉しいよ、シズちゃん。君に抱き締められるのはすごく嬉しい事だ。けどね、けど、一つ問題があるんだ。君は気付いてるか分からないけど、君の服装は大いに問題があるんだよ?
真っ白なシャツに少しだけ透けた肌色。タイトな黒いスカートと、そのスカートからすらり、と伸びた足には網目の大きいタイツが脛毛を収め切れないでいる。シズちゃんが、何故こうなったか、なんて事は聞かないで欲しい。寧ろ俺が聞きたいくらいなのだから。何時からか、シズちゃんは急に女装がしたいと言って女物の服を買う様になった。本当に前触れもなく、だ。其れまで女物の服に興味を示してるのも見たことないし、それ以前に、バーテンダーの服以外の服を着てるところを余り見た事が無い。(あっても部屋着くらい)其れにも関わらず、本日の召し物は多分秘書。(波江さんとは大分がたいも容姿も違ってくるが)俺としてはどの服を着てもシズちゃんではある。しかし、さすがに、これはきつい。ゲロを吐きそうだとは言わない。けれど、あまり気持ちのいいものではないのは確かだった。(実を言うとこの服だけではなく、他にも今で言う看護士やセーラー服、メイドだとか、警察官などなど所謂コスプレ物は殆ど所有している)
「なあ、臨也、似合ってるだろ。これ。」
シズちゃんが毎回聞いてくるお決まりの台詞である。本当ならば、似合ってるわけが無いじゃん。そんな格好されるくらいなら死んだ方がマシ。っていうか、死になよ、シズちゃん。その前に君と付き合ったって言う黒歴史を消したいくらい。と長々とこの所為台詞を吐き出してやりたいところだ。だが、しかし。俺はシズちゃんが大嫌いで、大大大大好きである。そんな事を言って別れるなんて事が在ったら、其れこそ俺が死んでしまう。そうなるくらいなら。そう思って考えた結果。俺は、決まってこの台詞を言うようになった。
「似合ってるよ、可愛い。」
普段なら絶対に言わない。というか、まともな女にすら言った事が無い。可愛いなんて言葉、俺以外似つかわしくないから。けれど、そう言わなくてはいけないのは、この愛を守る、為、と言う事にして置こう。其れが幾ら、気持ち悪くてゲロ吐きそうな程目には強烈なもの、であっても。結果として、俺とシズちゃんは幸せに暮らせている。俺のシュミレーション通りに行かなくとも、このパターンはいちゃいちゃ出来るパターンである事には変わりない。現に、俺を抱き締めた彼は甘えるように、耳元に唇を押し付けてきた。ちゅ、ちゅ。可愛らしい音と共に柔らかな其れの感触は俺に至福の時を齎す。更に、俺の髪に触れた指先は慈しむように毛先を絡ませ、甘い雰囲気を増大させていった。こうなれば、全ては俺の手に内にある。当初のやり方とは大分違ってくるが、こんな服を脱がせてしまえばシズちゃんはシズちゃんだ。俺が嫌いで好きでしょうがない、シズちゃん、そのものなのだ。此処は早急に手を打とう。触れる唇を貪るように唇を押し付けて、がたり、がたり、と狭い廊下に置かれたガラクタにぶつかり合って、寝室とリビングが一緒になった部屋に雪崩れ込む。相変わらず汚く何時から掃除してないのか、と思うほど、散らかった部屋に申し訳ない程度に敷かれた布団に、シズちゃんと一緒にダイブした。もふり、と布団に寝転んだと言うよりは、固い床にぶつかった感覚。伝わる鈍い痛みに身体を震わせたが、リアクションしてる間も無く、シズちゃんが俺の服を夢中で取り払っていった。
キター!!心の中で叫ぶ声とガッツポーズ。一緒に歪みそうになる唇を堪えながら、貞淑を装うように、彼の真っ白なシャツを握る。シズちゃんも脱いでよ。そう強請るように、ジーンズの下ですでに僅かに膨れた其れを押し付ければ、最早結末は見えていた。少なくとも、俺の中では。しかし、さすがにバケモノだ。一筋縄では行かない。何時もなら然程渋らずに脱いでくれる其れも、今日はお気に入りだとかで、脱ぎたくないと駄々を捏ねられ。挙句の果てに、同じ物があるから俺にも着ろと、シズちゃんは言った。俺が?そのタイツから脛毛をはみ出させて短いスカート履いて、波江ゴッコをしろ、と?いやいや、まじで、それはほんとにないよ。それだけは勘弁してください。死んでも嫌だ。ていうか、うん、もういいよ。分かった。殺してくれ。本当に。そんなもの俺が着る前に、俺を殺してくれたらいいよ。

そう思った。のもすでに数十秒も前の事。俺の名誉の為に言っておくが、これが俺の本心であった。勘違いしないでほしい。俺には女装趣味なんて微塵もないし、自分の意思でこんな物着たわけじゃない。誰が、鏡の前でスカート履いた自分のM字開脚など見たいと思う?(そういう趣向を持っている人間であれば、別だが)しかし、俺に一つ欠けているのはシズちゃんのお願いを断るという機能である。結局俺は、シズちゃんのお願いを断る事が出来なくて、目の前に差し出された"ソレ"を着た。そんな俺に満面の笑みで可愛い、と言う。とんだ、羞恥プレイだ。本当に、シズちゃんは、気持ち悪い。
だが、それ以上に気持ち悪いのは、俺自身だとたった今知った女装姿の俺でした。






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