「……臨也、」
吐息混じりに、耳元で囁かれた言葉が、俺の身体を震わせた。そのまま耳裏から、血管の浮いた首筋を通り、やたらと、突き出た鎖骨に舌と唇が這う。ちゅ、ちゅ、と生々しい音が耳に届いて、顔が熱くなる一方、その様子を俺はどこか冷静に目で追いながら、ただただ唖然としていた。不毛とか無意味とか。こういう事を言うのだと思う。何も産まない。何も産まれない。俺達の恋はそういうものだ。もし、もしもの話だ。俺が彼の為に何かを産める身体だったとして。そうだとしても、彼を繋ぎ止めておける自信など俺には毛頭無い。何故なら俺は女では無いし、立派な(シズちゃんには負けるが)ちんこまで付いた男でしかないのだから。切断しても、もしもの話が現実になることは絶対にないのだ。そもそも、根本的な疑問がある。何故シズちゃんは俺を抱くのだろう。シズちゃんの好みを全て把握してる俺ですら、理解に苦しむ。だって、シズちゃんは普通に女の子が好きだ。童貞だけど、年上のお姉さん系が好きで。プレイなボーイが読む雑誌だって買ったりするし、漫画雑誌についてくるグラビア写真を見たりもする。胸はでかい方が好きだし、人並みに触りたいとか言ってのける、健全な男子であるのに。それにも関わらず、何故俺?何故、俺のぺったんこなまな板おっぱいを揉みしだくのか、俺は未だに分からないまま、現在。この平和島静雄の身体の下に組み敷かれていた。
見上げたシズちゃんは、まさに戦い真っ只中ですって切羽詰った顔しながら、俺の名前を呼んで、俺のまな板に顔を埋める。濃い群青のシャツの下で勃ち上がった乳首に唇が触れ、布越しに温い咥内に招き入れられると、くちゅり、と唾液が染み込んでひくり、と身体が飛び上がった。布越しでもじんわり、と伝わるシズちゃんの体温と、唾液の温度がぞくり、と全身に走る。直接触れて欲しいような、触れて欲しくないような。すでに、熱に犯され始めパンクしそうな脳内で答えを出す前に、シズちゃんの白くて骨ばった指先が俺のシャツを捲り上げた。肌を撫でる冷たい空気に、息を飲む。が、その間も無く、俺より少し高いくらいの体温が俺の胸を包み込んだ。掌全体で膨らむことのない胸を、大きく揉みしだかれ、痛いとさえ感じる其れに、眉を寄せる。力が入ってるというわけでは無いが、女の胸とは訳が違うのだ。あんな脂肪の塊が俺の胸に入ってるわけでもなければ、シリコンを入れてる訳でもない。ぺったんこそのものの胸を揉んで何が楽しいのか全く持って分からないが、止めろと言って止めるほど、シズちゃんの頭が出来た物だとは思えなかったし、思ってもない。寧ろこんな奇行に走っておいて、頭がまともです、なんて言われても説得力に欠けるだろ。
だから、言葉なんて出てこなかったのだと思う。悲しいかな、ただ見てることしか出来ない、俺はきっとシズちゃんより能無しだ。一生懸命、俺の胸を揉みながら、先端で尖った乳首を男らしい指先が引っ掻く。男で乳首が感じる奴なんて数える程度しか居ないかも知れないが、俺はその稀な体質を持った人間なんだと最近知った。というか、目の前のこの男に、シズちゃんに、開発されたと言った方がいい。毎日毎日、乳首を弄られてみろ。嫌でも感じてしまうのが人間ってもんだ。ほんと余計なところが精巧に出来てるもんだよ、なんて僅かに自嘲しながら、ほんの少し胸に走った痛みに奥歯を噛み、指先の行方を目で追う。何時もならば有り余った力で乱暴にされたりするのだが、今日のシズちゃんは幾らか機嫌が良いみたいだ。すでに尖って真っ赤に膨らんだ乳首を優しく摘まれ、くにくに、と先端を弄ばれる。乳穴を擦るみたいに抉られ、寒気がするような甘ったるい声が唇から漏れそうになって、唇を噛んだ。ぎり、と皮膚が軋む音がしたが気にしない。声なんて聞かれるくらいなら死んだ方がマシだった。
そう思ったが、彼にはそんな理屈など通用しないことを俺は忘れていた。シズちゃんは俺を見下すように片手をベッドに付き、乳首を弄っていた指先を衝動のままに俺の唇に突っ込む。何も無かったように俺の唇を割り、歯を撫でたかと思うと意図も簡単に咥内に侵入した。力任せ、本当にそんな言葉が君にはぴったりだよ。嫌味も交えてそう言ってやりたかったが、今では其れもままならなかった。それどころか、飲み込めなかった唾液が俺の口元をべとべとに濡らして、不快極まりない。その上、咥内の粘膜を擦る様にシズちゃんの指先が動き回り、逃げようとする身体をしっかりとホールドされた。腰を掴まれ、首筋から胸に、ねっとり、と舌が這い回る。その感覚に上げそうになった声も、ぐちゅぐちゅ、と唇を出入りする指先から滴る唾液の音で消え去った。助かった。この方が好都合だと思った、のも束の間。
くちゅり、と指先が唇から唾液の糸を引いて離れていく。てらてら、と光る其れを惜しげもなく目の前に晒されるとどう反応していいか分からないが、シズちゃんはすごく満足そうな顔をしていた。こういうところに可愛げがあって困る。普段他人には見せない分余計に。そう思いながら、浅く呼吸をし、起き上がろうと肘を突くと、耳元にシズちゃんの唇が触れた。くちくち、と耳の中に舌を挿入され、窪みを舐められると犯されてる気分になる。消耗した理性には辛いところだが、俺はそこら辺の単細胞とは訳が違うわけで。流されるわけには行かない、とシズちゃんの胸を押し返すと逆に、ベッドに縫い付けられてしまった。
「……まだ終わってねえだろ、臨也君よお、」
シズちゃんの唇が静かに持ち上がったが、余裕の無い切羽詰った掠れた声にぞくり、と快感が走る。せっかく、終わる機会だったが、こうなってしまえば、もう手遅れ。前言撤回。俺もその辺の単細胞と同じみたいだ。哀れみにも似た感情に、少しだけ笑みを零し、シズちゃん、と形の良い特徴的な耳元で囁く。腕を血管の浮いた首に巻きつけ、引き寄せると、そのまま唇を重ねた。くぐもった声が、二人きりの部屋に響き、吐息が漏れる度に首筋が粟立つ。もっとして欲しくて、もっとしたくて、舌を擦り付けてぬるぬる、と咥内を舐めると、シズちゃんの歯がこりこり、と俺の舌を噛んだ。
ひくり、と浮き上がる身体に思わず舌を引っ込めて、唇を離す。かち合った瞳が細められ、何故だか、顔が熱くなった。シズちゃんってあんな顔出来るんだ。ぼんやり、とそんな事を思いながら少しだけ荒れたシズちゃんの唇が、静かに頬や額に当たるのを感じ、一枚だけ肩に羽織ったシャツを脱がせる。現れたしっとり湿った肌に唇を落としながら、ベルトを取り外し、熱くなった下着の上から、シズちゃんのペニスに触れた。僅かにパンツが色を変えて、濡れてる。其れだけで背中にぞくぞく、と痺れが走り、俺は何とも言えない高揚感に満たされた。シズちゃん、かわいいね。思ったままにその言葉を口にし、ぐりぐり、と掌を押し付けて、先程俺が胸にされたように全体を揉みしだく。その度に、熱い息が耳元に当たり、俺の理性も皮一枚と言ったところなると、シズちゃんは俺の身体を抱き締めた。何事かと思ったが、すぐに火照った腰を掴まれ、下着とパンツを取り払われる。まさに、一糸纏わぬとはこのことだ。
恥ずかしいとか、今更そういう問題ではないのだが、一応抵抗はしておきたかった。それにも関わらず、一言、言葉を口にする前に、シズちゃんが掴んだ腰を持ち上げて俺のペニスを口に含む。じゅるじゅる、と先端に吸い付かれると、じわり、と先走りが溢れ出し、シズちゃんの咽喉元に流れていくのが分かり、俺は必死に腰を動かした。ごくり、と上下する咽喉。それを見るたびに磨り減っていく理性を止めることは出来ない。シズちゃん、うわ言のように何度も囁き、金色に輝く髪を緩く握り締めると、彼は俺と視線を合わせ僅かに笑った。その瞬間、尻肉を揉みしだかれ、探るように掻き分けられると隠された蕾に指が触れる。ちょん、ちょん、とソコの収縮を楽しむような指先の動きがじれったいが、口に出すことなどできるわけも無い。だが、言わなければシズちゃんの戯れも終わることが無いのは経験済みだった。


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