※エロです。




「ねえ、シズちゃん、今日はこれやりたい」
だから縛って、と臨也が静雄に徐に放った物は、「とある奴隷妻と午後」と書かれた官能小説と白いロープ。それから、ボールギャグとローション、ディルド?とか言うグロい形をした玩具だった。静雄がいつも思うのは、こんなもの何処で買ってくるのか。それだけだ。静雄はパソコンなんて物生まれてこの方触った事もないし、これから触る気もない。例え触れたとしても十分も経たずにぶっ壊してしまうのが目に見えているからだ。コレが今言う、ネット社会なのか、と静雄は半ば関心しながら、用意された品々を一目した。目の前に並んでいるだけで、何に使う物なのか大体想像できるし、臨也に使うとなれば、静雄も男だ、この通り興奮もする。しかし、、同時に零れる溜息は、「またかよ」と少しだけ呆れも入っていた。臨也がこういった行為やプレイを望むのは、コレが初めてではない。勿論、一度や二度ではないし、回数を具体的に口にしろと言われても静雄自体、把握出来ない程度には、臨也は可笑しな事を口にした。其れが普通のプレイと言うものなら良い。拘束するだけ、とか、玩具を使うだけ、とか。その程度ならば、静雄だって許容範囲だ。喜んでやってやろう、位には言えるのだが、臨也の要望は一味違う。彼はとことんマゾヒストの血が流れているようで、乱暴にされると興奮する、と公言していた。という事は、自ずと静雄がやることは決まってくる。拘束した次には、ボールギャグを噛ませ、寄越されたローションとディルドを使って失神するくらいに、臨也を責めて立てる。その間静雄は勿論挿入なんて出来ないし、例え、臨也がイったとしても次の指令が、静雄を待っていた。今日はそんな事情を詳しく、話しよう。
はぁ、と唇から溜息が漏らした静雄が、「またかよ、」と零ぼすと、臨也は、いいじゃん、と言って笑った。そうして、一枚、また一枚とまるで曲芸のように放り投げられていくシャツやパンツがばさり、と静雄の顔に掛かり、視界の遮られた目の前には暗闇が広がる。唇から零れる言葉は、うぜぇ、とただ一言だけ。呆れてそれ以上何も言えないといった方が正しいのだが。訂正する体力すら奪われるほど、開けた視界の先に居た臨也はすでに臨戦態勢であった。握った薄手のシャツを床に叩き付け、眉間に寄せた皺を悟られまい、と静雄は目の前のテーブルに置かれた煙草に手を伸ばす。しかし、それもすぐに遮られると、臨也は行儀悪くテーブルに腰掛けて、まるでストリップのように、静雄の前に裸体を晒した。
目の前に広がる痴態に静雄はすぐに目を逸らしたが、それもすぐに、臨也の両手によって元に戻される。湿った掌が覆われた頬をぐい、と力尽くに引き寄せられ、閉じた目蓋に落とされた口付けが静雄の好奇心を煽ったが、最後。閉じた目蓋を持ち上げてしまえば、静雄は魔法に掛けられたように、臨也の身体を食い入るように見つめた。白く浮き上がった鎖骨や、あばら骨の浮き出た腹回り。細い腰は今にもポキリ、と折れてしまいそうで、触れるのにも戸惑ってしまうが、結局誘惑に負けてしまった静雄の指先がするり、と晒された腰をなぞる。途端にひくり、と痙攣するように震えた細い身体は静雄の掌と馴染むと、臨也は馴れた仕草で唇を歪ませて、静雄を促すように、床に散らばった其れに視線を送った。ねえ、と静雄の耳に吹き込まれる声は何よりもいやらしく妖艶である。したがって、静雄が言葉を脳で理解する前に、燃え上がるように纏った熱が頬を紅く染めさせると、臨也は「可愛い、シズちゃん」と心底嬉しそうに笑って、床に転がった真っ白で太いロープを拾い上げた。状況から察すると、静雄が縛られる側のように見える。しかし、臨也の望んでいる物は全くの真逆であり、静雄にも縛られる趣味はなかった。だからこそ、ロープの使い道はたった一つしか残されていない。元より、選択肢があるのなら、静雄はさっさとこの異様とも言える空間から立ち去っているのだが。それも最早叶いそうにない。静雄は臨也の望み通りに、真っ白な裸体を縛り上げ、彼の望むようにその快楽に貪欲な身体を責め立てるだけだ。

はふはふ、と辛うじて呼吸をする唇から零れる唾液を指先で拭い、見下ろした臨也に静雄は微笑みを零すとしなやかな黒髪を指先で梳く。そうして、無造作に開いてあるえげつない小説の一部を再現するように床に着いた骨ばった膝小僧を蹴り飛ばして、這い蹲った彼の身体を静雄は片手一本で押さえつけた。ぐ、と唇から漏れる苦痛を帯びた声は演技ではない。しかし、この行為でさえ臨也本人が望んだ事であり、微塵も抵抗しない事は彼にとって当然である。その上、早く続きをなどと求めてくる始末に全く、と呆れる事さえ、静雄には億劫になっていた。早く終わって普通に、ごく一般的なセックスをしたい。静雄の望みはそれだけだ。その為にも臨也の望む、続き、とやらを静雄は続けるしかない。
「……こうされるのが、好きなんだろ?」
目で追いかけた文面。口に出すも何処かで聞き覚えのある台詞は、纏った雰囲気を一瞬にして払拭させるほど、滑稽なものである。それでも、臨也の上がりに上がったテンションには至って影響はないようで、力強い掌によって床に押し付けられているにも関わらず、吐息は熱いまま次から次へと吐き出され、静雄を煽る位の威力は維持していた。込み上げる欲求と苛立ちを抑え込むように、歯を食い縛る静雄を他所に、臨也は床に頬擦りをしたまま、尻を高く上げる。そして目配せするように、散らばった小道具の中からチューブ型のローションを静雄に促し、次の行為をするように催促した。抵抗する余地のない静雄は小さな其れを手に取り、優しく絞り出すように、チューブを押し出していく。その度に、ぷちぷち、と小さく泡立つように零れ落ちていく透明なローションが腕を流れ落ち、臨也の白い尻をゆっくりと濡らしていった。
ぐちゅり。静雄が指先を動かすだけでまとわりつく其れが淫靡な音が響く。その度に、ひくり、と身体を揺らした臨也は、早く早く、と強請るように腰を揺らし、唇に嵌めこまれたボールギャグを舌先で濡らした。そんなあられもない臨也の姿に静雄の興奮は高みを極めていく。膨れ上がったソレは今にもはち切れんばかりにボトムを押し上げ、限界も間近である事は誰の目にも一目で分かった。
「……いざやぁ……」
もうやめたい、と言いたい。しかし、臨也が其れを聞き入れるわけも無いのは静雄が一番理解していて、吐き出した溜息と一緒に気合を入れるように奥歯を噛み締めて、左手に塗れたローションを塗り込むように尻肉を揉みしだいた。酷く柔らかな其れは掌に余る程の弾力をしている。静雄は口内に溢れる唾液を咽喉に飲み下して、二つの肉たぶを両手で包むと、くぱり、と外側に押し広げるように、臨也の秘部を惜しげもなく外気に晒した。ひくり、ひくり。集まった皺がてらてら、と光り、ゆっくり、と収縮する。皺に一本を指で撫でるだけ。それだけで、もっと欲しいと、飲み込もうとするその場所は臨也と違って従順で、静雄は誘われるままに、つぷり、と指先を捻じ込んだ。第一間接から、第二間接。次第に、ねっとり、と絡みついてくる熱い肉壁を指先で広げて、赤い粘膜を擦り上げる。すると、零れる臨也の奇声にも似た喘ぎ声と鼻息がより一層、酷くなり部屋中を覆い尽くした。だが、静雄が、うるせえ、と呟く声すら、臨也には聞こえない。ただ、必死に、ゆらゆら、と、腰を揺らして、自分の高みを目指していくだけ。 全く自己中心的にも程がある。今始まった事ではないのだが、静雄は呆れ半分、柔らかく濡れそぼった臨也のナカを責め立て、早く終われ、と床にごろり、と転がったディルドを足で引き寄せた。
本当に悪趣味なヤツだ。俺の方がでけえ、つーの。静雄は心中、引き寄せた其れを手に取り、つくづくそう思う。銀色に輝くフォルムに、太くもないカリ首。そう長いわけでもなく、誰のがモデルかも分からない其れの何が良いのか。そもそも突っ込む側である静雄には理解出来ないのだが。しかし、臨也がコレがいいと言うのならと、とりあえず、受け入れる準備の整った臨也のその場所に、ぐいぐい、とソレを押し当てた。そして、一息置く事も無く、ぐ、と、擦り付けると飲み込もうとするソコを目掛けて、ディルドを突き刺してやる。その拍子にひ、と臨也の唇から零れるボールギャグ越しに息が、部屋へと拡散した。
「ンン、ぅ…ッんぐ、う、…は、ふ…ッ」
すぐに飲み込まれた其れの抜き差しを何度か繰り返し、広げられた足の間にぶら下がり勃起した臨也のペニスを静雄の掌が襲う。ぐりぐり、と剥けた先端に先走りを塗りたくるように掌を擦りつけ、ディルドとの動きに合わせて射精を促すように責め立てれば、ぐちゅりと、溢れ出た先走りが徐々に白濁に変わり、静雄の手を濡らした。そろそろか、と静雄は擦り付けた掌の速度を速め、抜き差しを繰り返す其れを奥に留め回転させる。自分のモノではない、ソレの感覚は静雄にとって酷く鈍い物だが、臨也の反応は良好。良い場所に当たっている事は明らかで、静雄は狙ったその場所を何度もぐりぐり、と抉った。臨也の唇から流れ落ちる唾液が床をびっしょり、と濡らし、跳ねるように、身体がうねる。その瞬間、静雄の手に放たれた臨也の精液が、とろり、と指先に絡んだ。上下する、臨也の肩が終わりを告げる。ああ、やっと、臨也のナカに挿入れる、と静雄はディルドと結合するその部分を恍惚と眺めながら思い、熱い息を吐き出して精液の垂れる掌をべろり、と舐めた。咥内に広がる苦味を堪能しつつ、早急に臨也の唇を塞ぐボールギャグ取り外して投げ捨てる。その途端、溢れ出た唾液と吐息を再び臨也の口の中に押し戻すよう、口付けを交わして、未だに尻穴に埋め込まれたディルドに手を掛けた。僅かに触れるだけで、ぐちゅり、と音を漏らすソレをゆっくり、ゆっくり、と引き抜いていく。その度に、ぬぽり、と捲くり上がる皺の集まりは早く、静雄のモノが欲しいと言っているようにも思えた。
だが、しかし。臨也は甘くない。この程度で終わるほど、臨也の趣味は簡単な物ではないのだ。静雄も其れをすぐにディルドに掛けた手に走る僅かな痛みで、理解する事になる。冷たい眼差しが、静雄に降り注がれ淡々とした声で、「何勝手な事してんの、シズちゃん」と告げられれば、静雄の背中は凍り付いた。目の前に突きつけられた小説は静雄の手に握り締められた物とは別のもの。
「美人助教授の秘蜜」
内容は読んで居ない。しかし臨也の考えている事は手に取るように分かった。そして、悲しい性だが、どうせまた静雄は逆らう事は出来ないのだろう。だって、まだ夜は長い。臨也が助教授になりきる位の時間は莫大に、二人には残されている。






ごきげんよう、腹上死










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