続きますんな戦争してない静臨です。拍手ログ第一段。




付き合いは長い。関係はフラットで、相談される事も度々あった。恋愛から、仕事まで、とにかく何でもだ。同じような相談を何度も聞いた気がするが、その辺は覚えていないので割愛させてもらおうと思う。年月で言えば、7年くらいか。その辺もどうでもいい。何年だってよかった。めんどくさいので四捨五入して10年って事にしとこう。そこで、四捨五入して10年というキリのいい数字になったところで俺たちの関係を整理してみようと思った。出会ったのは高校生の時。別に馬が合いそうだとか思った訳ではなかったが、クラスが同じで前と後ろの席だった。折原と平和島。名簿順で並んだときは凄く離れていて、興味すらなかったが、初めてした席替えでたまたま一緒になった。それから消しゴムを貸してくれとシズちゃんに言われたのが最初だったような気もする。丁重にお断りさせてもらったのに、シズちゃんは舌打ちして俺の消しゴムを勝手に使ったんだっけ。しかも新品だった消しゴムの角をわざわざ折って返却してきた。だから俺はシズちゃんがあまり好きではなかった。出来れば、前後の席も嫌だったし、忘れ物するとすぐ俺に頼ってくるし。宿題見せろなんてざらじゃなかった。でも、何故か、居心地は悪くなったんだな。これが。席替えをしても、これぞ腐れ縁って言われてるみたいに俺たちは毎回前後の席になった。大体、俺の後ろがシズちゃんで。あ、でも二、三回俺が後ろになった事を思い出した。
シズちゃんの項って妙に綺麗でさ。ってそんな事はどうでもいいんだ。話が逸れた。これは俺の所為じゃなくてシズちゃんの所為って事で本題に戻ろう。それからと言うもの、気付けば、俺たちは一緒に昼食を取ったり、移動教室を一緒に向かったり。友達っぽいことをしていて。シズちゃんは横暴で言葉も悪いし、俺のことすぐ叩くし。でも離れられないというか。不思議と離れる気にはなれなかった。たまに見せる優しさとか、些細な事がなんだか擽ったくて、今となれば俺の高校生活はあっという間に過ぎ去ったように思える。高校生活が嫌だったかと言われれば答えはノーだし、思い出とか楽しいと思ったことも然程無かったけど、シズちゃんと一緒に居る時間は何故か一番落ち着く時間で、俺にとってはかけがえの無い時間、だったのかな。多分。それからいろいろ在った。そう言いたいところだが、特に何も無い。卒業して、俺は頭がよくて優秀なおかげで新宿の大手企業に勤めることが決定した。シズちゃんは知らないけど池袋に勤めるとか言ってたっけ。同じ都内だけど、卒業したらシズちゃんとは会わなくなるのかなって、少なくとも俺は思ってた。だが、何故か、俺たちは結構頻繁に会っている。
現に今も。俺の隣にはシズちゃんが居た。べろり、と片手に握ったアイスクリームに舌を這わせながら、向かってやや斜め右下から煙草を吹かせるシズちゃんを盗み見る。もう24だ。あれからずっと一緒に居る俺たちは奇妙と言う言葉で表す他、何でもなかったが、少しだけ変わったことがあった。見た目もそうだけど。外見とかそう問題ではなくて内面。俺はシズちゃんが好きだとつい先日気付いた。実に滑稽だ。笑ってくれても構わない。俺だって、シズちゃんのことが好きなんて、地球滅亡しても有り得ないと思っていたし、親友とか友達とかそんな関係であるかも到底疑問でもあるし。だが、気付いてしまったのだ。高校の時、彼に馳せていた、感じたことの無い安心感だとか、そんな擽ったくて気持ちの悪い感情の正体に。そして、気付いてしまえば早いものだった。まるで坂を転げ落ちるボールだよ。暇さえあれば彼のことを目で追って、その仕草や表情をこの目に焼き付けようとしている。醜いものだ、ほんと恋心なんてもの。
金色に染めている髪の毛先は少しだけ傷んでいるとか、目の色は普段は真っ黒だが、光りの当たり具合によっては茶色に見えたりするとか。唇は少し薄い方だとか、耳たぶは綺麗だとか、首筋には綺麗に血管が浮いているだとか、指は長くて爪は意外にもちゃんと切り揃えてあるとか。まだまだある。発見したことが数え切れないくらい。こうもなればストーカーのようだと自分自身ながら思ったりする。何度も言うが、気持ち悪いにも程があるとは分かっているのだが無意識なので止める事は出来なかった。まあ、害はないので許して欲しい。シズちゃんも俺の気持ちには気付いてる訳もないし。俺はこのまま、何食わぬ顔して彼の隣に居ようと図々しい事を思っていた。まあ、つらい事は無いことは無いけどね。今まで何一つ気にする事無く聞いてた相談事が一々引っ掛かってしまうようになったのは頂けない。出会った時から恋愛ベタ(全てにおいてベタだけど)なシズちゃんは何か事あるごとに俺にどうしたらいいのか、と聞いてくる。
セックスの相談事が無かっただけマシかも知れないが、それでも数をこなす内に辛くなってくのが分かった。俺も人の子、人間の子なんだなって思い知らされているようだと思った。それでも親友?友達?はっきりはしないが相談を受ける側としての距離感は好きだ。だから投げ出す事なんて出来ない。やっぱ恋ってさ、俺が思ってるより遥かに醜いよ。だって俺は親友面して、今も君の隣にいる。
あー、でも違うな。恋してるシズちゃんは可愛い。醜くない。て事は、俺が醜いってだけか。うん、多分俺が歪んでるだけなんだ。まあ、そんなのずっとずっと前から知ってたけど、これが俺の長所だと思えば何も怖いものなんて無い。開き直る事なんて、驚くほど簡単だ。ごめんね、シズちゃん。もう7年もこんな俺が君の傍に居る。馬鹿で単細胞で、力だけはあるくせに、たまに優しくて、俺に100円のアイスクリームを買ってくれるそんな愛しい君の隣に。そして今もこれからも、いつか君が俺の正体に気付く日がくるまで。君の隣に俺はいるから。どうかその時まで、俺をよろしくね。






スプーン一杯の恋









「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -