― おい!そんなんじゃダメだって!俺ら2人で完璧になるんだろ?―
なんだか、懐かしい声がする。
アツヤ…アツヤ、今どこにいるの?
『アツ…ヤ…』
目を開けると、そこはいつもの部屋だった。
エイリア学園、DEとの戦いを終え、
本当の自分を見つけ出してからの僕は
良くある夢を見るようになった。
真っ暗な中、懐かしい声がする夢。
僕の大好きな弟の、アツヤの声がするんだ。
『また…夢か。』
今までの僕はただ【完璧】ということにこだわっていた。アツヤに身を委ね、自分を失っていた僕を覚醒させてくれたのは、雷門のみんなだ。僕にとっては、本当の自分を取り戻せて嬉しかった。でも、まだアツヤを探している僕がいる。いつまでもアツヤに頼ってられないことはわかっている。それでも、アツヤがいないと思うと寂しくて仕方がないんだ。
『外の空気でも吸ってこようかな。』
気分を変えたくて、外にでる。
北海道は相変わらずの寒さだ。
『そういえば、アツヤとよく雪だるま作ったなあ。』
あのときの僕達は、こんな運命が待っているなんて知らなかった。毎日笑って、喧嘩しての繰り返しだった。
『雪合戦もしたっけ。』
家の中にも外の景色ひとつひとつにも、アツヤとの想い出が詰まっている。
『忘れるなんて…できないよ。』
―兄貴、何泣きそうになってんだよ。
『!? アツヤっ?』
―まったく。いつまでたっても兄貴はダメだなあ。
『アツヤ…。あははっ、そうかもしれないね。』
―俺さ、兄貴にどうしても言いたいこと、言わなきゃならないことがあるんだよ。
『僕に、言わなきゃならないこと?』
―あぁ。…兄貴。
―兄貴は一人なんかじゃない。雷門の仲間がいる。白恋の仲間がいる。俺だって、父さんも母さんも、兄貴の心の中にずっといる。だから、兄貴は一人じゃない。
『アツヤ…』
"一人じゃない。"
『ありがとう、アツヤ。』
―兄貴。俺は兄貴の為になにもしてやれなかったけど、兄貴はいつだって俺を想ってくれた。
『そんなことないよ…アツヤは、僕を強くしてくれた。アツヤがたくさん想い出をくれた…!』
―俺、兄貴の弟で嬉しかった、楽しかったよ。
『嫌だ…嫌だ!もういいよアツヤ!だから…だからっ』
―大丈夫。兄貴はもう、俺がいなくても歩いていける。兄貴の仲間が支えてくれるから。
『もう少しだけ…頼む…から』
―兄貴は本当にダメだな…でも、安心したよ。いい仲間に囲まれてる兄貴を、俺は見守るから。
『……いや……』
―兄貴。ありがとう。
『アツ…ヤ……ありがとうアツヤ…』
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『ホラ、吹雪くん!はやく起きないと練習はじまっちゃうよ!?』
目を開けると、そこはいつもの部屋だった。
アツヤと話したあの時間も夢だったのかな。
ありがとう、アツヤ。
僕を見守っててね。
離れ離れになっても、僕らはずっとひとつだから。
-end-