先輩が部活に顔を出さなくなってから、早一ヶ月。
いろいろあって、俺は天馬や神童たちの言う"俺たちのサッカー"を取り戻すための『革命』を起こすことになった。
でも、これで革命が成功したとしても、嬉しいわけがないじゃないか。
だって、足りないから。先輩が…南沢先輩が足りないから成功したって、俺のなかの景色は変わらない。
『倉間っ!』
「………うわっ」
びっくりした…急にボールが…
『大丈夫か?』
「あ、ああ…」
そうか、今は練習中か。
『集中できてないみたいだが…何かあったのか?』
「いや、何もない…悪い神童、少し休んでくる。」
練習から抜け、外に出る。外の空気は専用コートとあまり変わらない気がした。
ボーッと時がすぎるのを待っていた、そんなとき。見たことのある紫色の髪の毛を発見した。
「南沢先輩っ!」
思わず、駆け出していた。
「ん?ああ、倉間か。」
「やっぱり、先輩だった。」
「なんだよ。で?お前、練習は?」
「あ、その…」
い、言えねえ…先輩のこと考えてたせいで練習に集中できなくなったなんて…言えるわけがない……
「何?お前、俺のこと考えてて練習に集中できなくなったから神童に追い出された、とか?」
「うっ!?」
「図星かよ。」
なんなんだよ……なんでいつもそうやって、俺の考えてること、俺が言いたいことを…
「ずるいっすよ…」
「ずるい?」
そう、先輩はずるい。先輩は俺のことなんかお見通しで、だけど俺は先輩のこと何もわかんなくて。
「責任、とってくださいよ…」
「意味わかんねーんだけど、ちゃんと主語つけろ………!」
自分でも驚くほどに、体が勝手に動いた。
「倉間…お前………」
「……好きなんですよ、俺。先輩のことが好きなんです…!なのにっ」
なのに先輩は、いなくなろうとしている。そしたら、俺のこの気持ちはどうなる?
「先輩…責任とってくれますよね?」
-end-