怖くない、と言ったら嘘になるけれど。 (リョ不二)
らしくない、と言われればらしくない。
でも、悩むくらい好きなんだからしょうがない。
だってそうでしょ?
「不二先輩。」
俺と不二先輩はやっと想いが通じて付き合うことになった。
「どうしたの、越前。」
でも、全然理解できない。彼が今何を考えていて、どれだけ俺が好きなのか。
「……なんでもない。」
不二先輩は優しいし、面倒見もいい方だし、女子からの人気もある。
だから、ただの気まぐれかもしれない。
そう思うと不安で押し潰されそうになる。
「それ、絶対なんでもなくないよね。」
「なんでもないって言ってるじゃん」
「越前、嘘はよくないよ。」
「…っ!うるさいな!!」
不二先輩に掴みかかる勢いで口を口で塞ぐ。いきなりの出来事に不二先輩の頭はついていけていない見たいで、顔にはいつもの余裕がなくなっていた。
不二先輩が苦しそうにしてたから長いキスをやめた。そして俺を罪悪感が襲う。
「ごめ……ん。」
「………………。」
俺達の間に、重い沈黙ができる。やっぱり俺って、恋愛下手なのかもしれない。どうせ続かない。すぐ終わって、未練がましく彼のことを想うくらいなら、今別れを切り出した方がいいのかもしれない。
「不二先輩…もういいです。」
「いいって、何が?」
「俺と不二先輩の、この関係っス。」
そう、終わらるんだ。今ここで。
「どうして、どうして終わりにしなきゃいけないのさ。」
「え?」
「越前はボクのこと、嫌いになったのかい?」
「そんなわけ…そんなわけないじゃん!でもっ…でも、アンタが何も言ってくれないから。だから俺…、柄にもなくすげー悩んだんスよ…。」
心に留めておいた言葉が溢れ出る。
その言葉を聞いた瞬間、不二先輩はハッとした顔になった。
「ごめん……」
「俺、そこまで要領良くないんで、言われなきゃわかんないっス。」
「ごめん、越前。ボクがたくさん君を悩ませたんだね……」
悲しそうな、切なそうな顔で不二先輩はそう言った。
「大丈夫、ボクはちゃんと越前の…ううん。リョーマのこと好きだよ。」
「そう…スか。ちょっと安心した……。」
不安は少しだけ安心に変わり、生まれた安心から愛おしいと想う気持ちが強くなった。
「不二先輩。」
そっと触れるだけのキスをする。
「好きっス。今も、これからも。」
待っている未来が怖くない、と言ったら嘘になるけれど。不二先輩となら大丈夫、そう思う。
-end-