「神童、お前変わったよな。」
「そうか?」
「ああ。……よく笑うようになった。」
「……かもな。」
なんだ、自覚はあるんじゃないか。
「でも、霧野も変わったんじゃないか?」
なんて言い出すから、思いっきり目を見開いてしまった。
まったく、コイツは何を考えているんだか。
「俺が変わった?どういう風に?」
「なんというか…前よりサッカーに向き合ってるって感じ?」
「サッカーに…向き合う、か。」
やっぱり神童は何もわかってない。
俺は確かに変わったよ。自分でもわかってる。だけどそれは、悪い意味で変わったんだ。
俺の心は、サビついた、嫉妬の塊になってしまったんだ。
もう純粋に神童を見ることなんかできないくらいに。
アイツさえいなければ。
「キャプテーン!霧野センパーイ!」
「おお、天馬。1年も今終わったのか?」
「ハイ!早く部活やりたくて、走ってきました!」
「相変わらずお前は……。」
お前が入部してから、神童が変わった。
幼なじみの俺が取り戻すことのできなかった神童の笑顔を、お前は簡単に取り戻した。
どうして、俺じゃない?
どうして、俺は何もできなかった?
やれるだけのことはやった。ただ、神童が俺に振り向かなかっただけだ。
じゃあ、なんで。なんでよりによって。
「霧野、俺は円堂監督に用事があるから、天馬と先に部室に行ってくれないか?」
「え?…あ、ああ……。」
このタイミングで二人きりになるなんて、最悪だ。
神童を一番近くで見てきた。神童といつも支え合ってきた。
俺はいつも神童の隣にいた。
はずだった。
でも今は、俺じゃない。俺じゃなくて、お前なんだ。
「松風、俺はお前が大嫌いだよ。」
-end-
蘭丸をヤンデレっぽくしたかっただけ←