今日は凄い憂鬱だ。もう梅雨が明け、夏だというのに朝から雨がザアザアと音をたてものすごい勢いで降り続いている。
こんなに雨が降られちゃ、テニスだって出来ないし、授業をサボる為に屋上にだっていけない。
仕方がないから、今日は真面目に授業に出る。本来ならこれが普通なんだけど。
大好きなあの人のことを考えていても、雨のせいで憂鬱すぎて、全ての授業が終わったのがとても長く感じた。
帰りの挨拶を済ませ、足早に学校を出る。
今日は部活がないから、あの人にも会えなかったな…なんて考えながら歩いていたとき。
「越前ーっ!」
バシャバシャと水しぶきをたてながらあの人が駆け寄ってきた。
「越前、傘入れてくれない?」
「別にいいっスけど…不二先輩、ソレ。」
と、俺は不二先輩が手に持っている傘を指さす。
「傘、持ってるじゃん。」
「ふふ、そうだね。」
「いや、そうだねじゃなくて…」
「持ってないってことにしておいてよ。」
「意味わかんないっス。」
「まあ、いいから。ね?」
「…はあ。本当、不二先輩って何考えてるんだかわかんないよね。」
「よく言われる。」
そう言って笑う不二先輩。本当に不思議な人だ。
「あ、でもボクはいつも越前のことを考えてるよ?」
「……あっそ。」
「照れてる越前も可愛いよ。」
「…別に。」
「強がんなくても…んっ……」
少し強引だけど、不二先輩の腕を引いてキスをした。
「仕返し。形勢逆転。」
「………っ!今の、誰かに見られてたら…!」
「大丈夫。ちゃんと傘で隠したから。」
顔を真っ赤にしながら必死に訴える不二先輩。
こんな不二先輩が見れるなら、土砂降りの雨の日も悪くないかな。
-end-