「マックスの馬鹿!」
「なんだよ!半端のくせにっ!」
「もう知らないからね!マックスなんか大っ嫌いだ!!」
「…僕だって、僕だって半田のことなんか知らないんだから!!」
昼休みの教室で、俺とマックスはみんなの視線なんか気にせずに堂々と口喧嘩をしていた。
きっかけは、本当にくだらなくてどうでもいいようなことで。
マックスと喧嘩をすることは珍しくはなかったけど、ここまで大喧嘩になるのは初めてだった。
いつもは俺が謝ることが多い。でも今回は絶対謝らない。絶対に。
俺たちが喧嘩をしたのは、瞬く間に部員みんなに知られたみたいだ。そりゃそうだ、あんなに堂々と大喧嘩していたんだもの。
染岡とか少林は、「どうせすぐに仲直りするさ」なんて言ってるけど、今回は謝る気がないからどうなるかなんて誰もわからない。
それから、一週間が過ぎた。いつもなら、もう仲直りしている期間だ。あまりにも長い喧嘩に、染岡も少林も、ほとんどの部員が驚いてるようだ。
「なあ、マッ………」
つい、いつもの癖で、マックスに話かけようとしてしまった。寸前で遮ったから、嫌な空気になる。
俺がもう少し素直になれたらな、なんて思うけど、今回ばかりはそうはいかない。たまにはマックスも謝るべきだ、うん。 と自分に言い聞かせてみる。
今となっては、もっと早く謝るんだったな、と後悔していたり。
それから、一週間、また一週間とどんどん過ぎて、気づけば喧嘩をしてから一ヶ月半も立っていた。
下校中にもうこんな雰囲気は、さすがに部活にも響くし、そろそろ謝ろうかなんて思ったとき。クラスメイトの女子の会話が耳に入ってきた。
「松野くん、転校しちゃうんだってね…」
え…?
「それも、今日出発なんでしょ?」
今日?
なんだよ、なんなんだよ。
今日?転校?わけがわからない。
俺は、自分でも知らないうちに走り出していた。もちろん、マックスの家に。
マックスに謝らなきゃ、このままお別れなんて、あまりにも酷すぎる。
マックスの家に着いたとき、マックスは車に乗って出発しようとしていたところだった。
「マックス!!」
マックスはビクッとして振り向く。全力で走ってきて、肩で息をしている俺を見て、ビックリしているみたいだ。
「半田…?何でここに?」
「ごめん、俺が悪かった…!」
頭を下げる俺にますますマックスはビックリする。
「俺が悪かったから!だから仲直りしてほしい。マックスと喧嘩したままお別れだなんて…俺…」
「僕も…ごめん。半田とはやっぱり、仲良くしてたい。」
「マックス……」
「でも、なんで今日のことわかったの?」
「帰り道、クラスの女子が話してるのが聞こえて…それで気づいたら走ってて…」
そういうと、マックスは爆笑し始める。
「な、なんで笑うのさぁ!!」
「いや、ごめんごめん!なんか、半田らしいなって。」
でも、とマックスは続けてこう言った。
「すごい嬉しいよ、真一っ!」
本当は離れたくない。ずっとマックスと一緒にいたい。たくさん喧嘩して、たくさん笑って、まだまだやりたいことがありすぎて…
気がついたらその思いは涙となって俺の頬をつたっていた。
「マックス………」
「真一、泣かないで。僕だって泣きたいんだよ。ずっと真一と一緒にいたい…。」
「うん、うん…っ」
「離れても僕たちは、ずっと変わらないから。」
「空介…」
「好きだよ、真一。また会うときまで、元気でね。」
「俺もだよ、空介。」
マックスは、俺にお揃いの猫のキーホルダーを渡して、車に乗り行ってしまった。
あれから1年。
今もそのキーホルダーは大切に携帯についている。
だってこれは、俺達の絆の証だから。
-end-