「ただいまー。」
「おう、遅かったじゃねぇか。」
「ちょっとコンビニ寄ってた。」
「そっか。まあいいんだけど。」
これが俺の"いつも"だった。 傑が帰ってくるのが待ち遠しかった。 ただこれだけの会話だけど、俺達は心が通じ合ってるから深い言葉なんていらない。そのときはまだ、そう思っていたんだ。
「なあ、傑。」
「んー」
「俺のこと好きか?」
「なんだよいきなり。気持ち悪いな。」
「うわ、ひっでーな。」
「好きじゃなかったら一緒にいないさ。」
「始めから素直にそう言えっつーの。」
そんな会話をして、お互いの気持ちを確かめ合う。これも俺達の"いつも"だった。
あれから二年。俺の"いつも"は無くなった。部屋に入っても傑はいない。言葉を投げかけても、あの優しい声は聞こえない。
「なあ、傑?」
答えが返ってくるわけがない。
「聞こえてんのかよ。」
ドアが開いて、傑が帰ってくるわけでもない。
「今でもお前のこと好きだよ…」
そんなことを言っても、俺の、俺達の"いつも"は返ってこない。
「ただいまって……好きだよって言えよ、馬鹿。」
誰に言ってるわけでもない。 ただ、俺しかいない、広い部屋の白い天井を見上げながら呟いた。
今ではこれが、俺の"いつも"。
-end-