おねがい (円鶴)





今日は七夕。だからお願い事をする。ただそれだけ。
短冊にお願い事を書いて、笹に結び付ける。

今まで七夕なんて気にしてなかったけど、まさかサッカー部でやることになるなんて、誰が思っただろうか。

こんなことを言い出したのは、円堂監督だ。
たまにはこういうのもいいだろう!って。
円堂監督らしいって言えば、円堂監督らしいんだけど。


「おっ!天馬は『もっとサッカーがうまくなりますように』か。だったらこれからもたくさん特訓だな!コレは―…」


円堂監督は次々と部員のお願い事を読み上げていく。いまだに結び付けられていないのは、俺の短冊くらいだろう。


「もうこれでいいや。」


そういって短冊を結び付けようとしたとき、円堂監督がこっちに来た。


「速水はなんて書いたんだ?」

「あ、ああ!監督、やめて下さい!」

「いいじゃないか、別に減るもんじゃないんだし。な?」

「減る、減らないの問題じゃなくて…」

「なになに?…『ネガティブな性格が直りますように』……。」

俺の短冊を読んだ円堂監督は、俺の短冊を破ってしまった。


「え?…な、なにするんですか…」

「なあ、速水。俺は、お前はいまのままでいいと思う。」

「はい?」

「ネガティブだから駄目、ポジティブだから良い、とか、そんなの関係ないだろ?」

「で、でも…」

「人間、自分の嫌いな部分は必ずある。だけど、それもひっくるめて自分だろ?だから、無理して変わろうとしなくていいと思うんだ。有りのままでいい。速水は速水らしくいればそれでいい。そうだろ?」

「監督……」


円堂監督は笑ってそう言ってくれた。
なんでだかよくわかんないけど、円堂監督が言うと、有りのままでいいんだって思うんだ。
俺は俺だ。俺なんだ。

円堂監督の言葉には不思議な力がある。
円堂監督の笑顔は、太陽みたいでいつも眩しい。



だからかな。



「ホラ、速水。もう一回書いとけよ?」

「…………わかりました。」



『円堂監督と楽しいサッカーができますように。』




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