彼女はシンジ君の好きな人だ


そして彼女の一番の友達は僕を好きだと言う




だけど
でも
なんで



どうして今僕たちは、唇を重ねているのだろう








「ねぇ、カヲルくん。お願いがあるんだけど…」

「なんだい?」

「今日の放課後校舎裏の花壇の前に来てくれないかな?」

「いいけど、今ここでできない話?」

「それもあるし、話があるのはあたしの友達なんだ」

「…分かった。今日の放課後だね」

「…うん。よろしく」

その時の君の顔は何故だか無理やり笑おうとしているようで、苦しそうにみえたんだ

どうしてそんな顔をするんだい?
ねぇ、名前


要件が済んだ君は教室から出て行ってしまった

「カヲルくん、名前と何話してたの?」
「ん?放課後校舎裏に来てほしいって」
「え?!それって告白じゃ…」
「いや…名前じゃなくて話があるのは名前の友達だってさ」
「そっかぁ………」



僕だってそこまで鈍くない
放課後一体どんな話をされるのか大体想像がつく
過去にこういうことは何度かあった

ただ好きでもない人と付き合う気はないし、そういうことにはあまり興味がなかったこともありやんわりと断っていた





渡り廊下の横を通り、職員室を周り校舎裏に行く
少しずつ花壇が見えてくる
園芸委員が丹精を込めて育てた綺麗な花たちがみえてその美しさが余計にこの憂鬱な時間を酷くめんどくさく感じさせる

「カヲルくん」


いつも名前の横から聞こえる声が今は目の前から聞こえる
そして横に名前はいない



あのね、あたし…前からカヲルくんのことが好きで

あぁ、やっぱりその話か

それで…もしよければ付き合って欲しいんだけど…

この子…こんな顔だっけ?てかなんて名前だっけ…


「あの…カヲルくん?」
「あぁ、ごめんよ。ビックリして…」
「突然だもんね、ごめんね?その…返事を聞かせて欲しいんだけど…」
「…その…悪いんだけど…」








部活動をしている生徒以外は下校し、静まり返った下駄箱に向かうと名前が靴を履き替えていた

その飄々とした名前の姿を見て言いようのない胸の奥のどろどろした感情が溢れ出した

気付いた時には名前の元へ駆け寄って、思わず腕を掴んでいた


「ひゃっ!?か、カヲルくん?!びっくりした」
「さっき校舎裏行ってきたよ」
「………そう」
「なんて返事したか聞かないのかい?」
「え……なんて返事したの?」

「OKしたよ」
「そっ、、か。あの子ずっとカヲルくんと付き合いたいって言ってて、相談のっててさ。うまくいって良かった!」
「……本当にそう思っているのかい?」
「それ、どういう意味?」
「名前、今自分がどんな顔してるか分かってる?僕には無理矢理笑ってるように見えるよ」
「っ!?」
「嬉しいならもっと喜ぶものでしょ。なんでそんな辛そうなんだい?」
「それは………」

「ねぇ、名前」
まだ掴んでいた腕を引き寄せ更に距離を縮める
「嘘だよ」


「嘘?」
「さっきのは嘘だよ。本当は断ったんだ。僕があの子と付き合うって言ったら、名前がどんな反応するか見たかったんだ」
「なんでそんなこと、」
「なんで?僕は名前が好きだからだよ」
「え………カヲルくん、冗談はやめて」
「冗談なんかじゃない。本当さ」
「そんな…困るよ…」
名前は俯いて僕から視線を避ける
目が潤んで頬を少し染めて。そんな名前の顔は初めて見る
困らせていると分かっているけど、不謹慎ながらとても可愛いと思った

「名前…」
「ぇ…っ?!!や、やだ!」
気付いた時には名前にキスしていた。自分でも何故そうしたか分からない
僕の胸を押し真っ赤な顔で拒む名前

「やだ?僕のこと嫌いかい?」
「嫌いじゃ…ないけ、ど」
「じゃあ好き?」
「何言って…」
「答えてよ。じゃないともう一回するよ」
「ふざけないで!あたしをからかって楽しい?!」
「からかってないしふざけてもいないよ。自分でも分からなかったけど、気付いたんだ。名前が好きなんだ。って。名前こそはぐらかしてないでちゃんと答えを教えてよ」
「っ…こんなのずるい…ぅっ…」
「泣かないで。ごめんよ」

名前の涙をすくい髪に指を通す
どうやらこの気持ちは後戻りできないみたいごめんよ名前







好き、です






先に禁断の果実を齧ったのはどっち






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