・被験者Bの場合








“本日の最高気温は37度、真夏日と言えるでしょう。熱中症には十分お気をつけください。続いてーー…”


何ですか37度って
体温とほぼ一緒じゃん!!そんな中出歩いてたら熱中症になって当たり前でしょ!!!
「はぁ〜……」
とはいえ暑すぎるからって学校を休むわけにもいかない。仕方なく家を出る


「ぅあ〜…あっちぃ……」
やばい。すでに耐えられん
バス停がいつもよりはるか遠くに見える
暑いのも寒いのも苦手だけど、暑い方が体調を壊しやすい


なんとかバス停にたどり着き、立ったままバスが来るのを待つ
少し早く着き過ぎた。まだあと5分もある
家から音楽を聴いているが、もはや耳に入ってこない
暑い。ひたすら暑い

携帯をいじりながら気を紛らわそうと画面に視線を移した時、
突然身体に変な寒気が走り嫌な汗が出てきた
えっ?!何これ…気持ちわる…
とりあえず慌てて持っているお茶を飲むがおさまらず、むしろどんどん悪化していく
吐くわけではないが、吐きそうな感じ
頭の奥がズキズキと痛む
これはまさか熱中症ってやつ?
わかんない。どうすればいいんだろ

「っ…………」
とうとうバス停の時刻表の前にうずくまる
運が良いのか悪いのか誰も居ない為助けも呼べない
どうしたら………







「大丈夫かい?」

「……え…」
後ろから誰かが肩にそっと触れる

「…う…大丈夫…じゃないです」
「とりあえず横になった方が良いね」
「っ?!!」
突然身体が浮いた
抱きかかえられたんだろう。でも抵抗する余裕もない

バス停横のベンチに寝かされる
苦しくて、気持ち悪くて、頭が痛くて、目を閉じる
「少し待ってて」
たぶん声からして男性が走っていく足音がわずかに聞こえた

「はぁ…ふぅ………」



すぐ近くから足音が戻ってくる

「はぁっ、………さぁ、…これをゆっくり飲んで」

閉じていた目を薄っすら開けると、口の横にペットボトルが向けられている
透けるような赫い瞳に見つめられ、言われるままゆっくり少しずつ飲んでいく
喉を冷たい液体が通っていくのを感じる

「落ち着いて、ゆっくり呼吸して。」
「ふっ…はあっ、…すーっ……」
「そう、その調子だよ」
心地良い声色が頭上から降ってくる
それとともに少しひんやりとした手がおでこに乗せられる

優しく、私の側に寄り添ってくれているおかげで少しずつ気持ち悪さと痛みが引いていく


「はぁ……はっ、………」
「まだ横になっていた方が良い。大丈夫。僕もいるよ」

見知らぬ人が横にいるのに凄く安心する
不思議なくらい身を委ねるのに抵抗がない




たぶん20分ほど経っただろうか。ようやく身体が楽になってきたので上体をゆっくり起こす

「もう大丈夫かい?」
「…はい。あの…すみませんでした…」
「謝る必要はないよ。誰だって体調を崩す時もあるよ」
「でも…見ず知らずの人にここまでしていただいて…本当にすみません」
「謝罪より礼の方が嬉しいな」
「え…あ、有難うございます」
「クス…どういたしまして。それじゃ、僕はそろそろ行くよ」
すっと彼が立ち上がる
「あのっ!何かお礼をっ!!」
「礼なんて良いよ…君は君のすべきことをすればいい」
「…?どういう事…?」
「ふふ…僕達はまた会えるさ。だからお礼はその時待ってるよ。」
「あ、えっと…本当に有難うございましたっ!!!」

彼の背中が見えなくなるまで見つめていた



同じ時間のバスで見覚えのあるアッシュグレーの髪を見かけることになるのはまた先の話……






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