「後藤、明日ひま?」
「まぁ、用事はないけど。」
「んじゃあちょっとデート行こうぜデート。10時迎えよろしく」






約束をしたのは昨日の練習終了後。ひき止めてきたのは達海だった。
デートという単語に一瞬ドキッとしてしまう自分が少し情けない。40歳直前にもなって。
誘った本人には今日のプランがあるのか、ないのか。未だに発表しない行き先。痺れを切らし、隣に座る達海に疑問を投げ掛けた。


「どこへ行きたいんだ?」
「んー……後藤が決めていいよ」


あんまりではないか。
人に運転させておいて。あまつさえ、自分から出掛けようと誘っておいて。
ため息混じりに息を吐いて、ただハンドルを握る。気紛れに信号機で右折。今度は左折。左折、右折、右折……。
本当に目的地は無いのだろう。達海は黙って、流れる景色を窓越しに眺めているだけだった。


「ここでいいか?」


フツーの定食屋。特別洒落た店という訳ではないが味は保証できる。これがもし、女性相手ならもう少し気を利かせねばならないだろう。しかし相手は達海だ。達海自身、雰囲気より味を選ぶだろうし。こういった店の方が好むだろう。






「で、今日はなんだったんだ?」


食事の後は、スポーツ用品店を少し覗いて、只今帰りの車の中。用事もなしにフラフラとした1日であったというのが素直な感想である。これでは全く味気の無い。
そうは思っても、特別行きたいところなどパッと閃くことなどなく、あっという間にクラブハウスに到着だ。


「てかさー、後藤?」
「なんだ?」
「デートって言ったじゃん」
「ああ、まあ…。一応そのつもりだったけど」
「もう帰すの?」


シートベルトを外す気はないらしい。座席に頭部をくっつけたままだ。

「なー…」
「はいはい」


察するに達海は一緒にいたかっただけらしい。

目的地決定。
俺の家。


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