「月、綺麗だな」


ボクは彼の言葉に顔を上げた。タッツミーの顔を覗く。
うん?と首を傾げるタッツミーになんでもないと返してまた、コンビニまでの道を静かに歩いた。
一瞬だけ緊張した。でもそれはボクの勘違いだったようだ。


「文学的でもなさそうだしね」
「はぁ?それは俺のことですかー?吉田くん」


眉を寄せたタッツミーが距離をつめた。手を伸ばせば簡単に届く彼の指を視線で追ってから、次に、空を見上げた。


「月が綺麗だね、タッツミー」
「死んでもいいよくらい言えねーのか、吉田くん?」


これは驚いた。
にひっ、と勝ち誇ったように笑う彼。


「アイラブユー、タッツミー」


ストレートにそう言うしか出来なかった。


狡いよね





0324


夏目漱石は「月が綺麗ですね」と訳し、二葉亭四迷は「(あなたのために)死んでもいい」と訳したそうですね。どちらも裏付けがないらしいですが。

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