「アイスクリーム?」
「うーん、ジェラートって言うんだけど」


恋人宅で夕食を終えた後、ソファーで寛いでいた自分の元に運ばれてきたのはデザートだった。今はスイーツと言うのか?ジーノに言わせればドルチェらしい。同じ甘いものを示す言葉も少し前の世代と違って多種多様になってしまった。そんなとき、自分が年をとったことを再確認されたようで少しだけへこむ。


「作ってみたんだ」
「えっ?それはすごいな」
「冷して固めてフードプロセッサー使えば簡単なんだ」


ジーノはさらりと答えると、ガラスの器に盛られたジェラートに人差し指を突っ込み、少量掬った。


「冷たくないのか?」
「冷たいよ?だから、はい」


自分の口元に運ばれたソレと相手の顔を交互に見る。明らかに楽しんでいる瞳。しかしその奥に秘めた熱を感じ、体中が熱くなる。バレる前に口を開いた。


「……いただくよ」
「どうぞ?」


ジーノの手首を掴み、男のくせに綺麗だと思わせる指ごと、ジェラートを戴く。舌の上で、ジェラートは溶けてなくなるが、ジーノの指はなくなるはずはない。冷たかった指は口内の熱で温かくなっていくのがわかる。



「噛んでくれても良かったのに」

指が口から離れた後、ジーノは肩を竦めた。馬鹿言うなよ。そう言って苦笑いで答えたけれど、どうも相手は満足しなかった。むしろ、答えを間違えてしまったらしい。今までのジェラートのような甘い雰囲気から一転してジーノは鋭い視線を投げて寄越した。


「ジーノ、……お前の綺麗な手が好きだ。傷つけることなんてできないよ。噛んで、内出血なんてさせられないだろ」
「内出血、って。キミは面白いことを言うね!それにしても好きなのは手だけかい?」


ねぇ、どうなの?と少しだけ機嫌の直ったジーノが顔を近づけてくる。こういった、愛情を形で欲しがる10歳以上も年下の恋人を可愛いと思う。若さか、性格か。ジーノの場合は明らかに後者の方が強い、か。


「わかってるくせに」
「聞きたいんだ。キミから」
「好きだよ、ジーノのぜんぶ」


整った顔が柔らかく崩れる。
雰囲気さえも一瞬に変えてしまった。俺の言葉で、と思うとそれだけで嬉しい。


「ありがとう。さあ、溶ける前に続きを召し上がれ」


破顔したジーノから、差し出されたジェラートとスプーンを受け取った。



しあわせで
溶けてしまった

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